11 Dec 2021
10 Nov 2021
7 Nov 2021
2 Nov 2021
19 Oct 2021
たとえば、歩きながら地面に美しい落ち葉を見つける。ま、いっか・・・と通り過ぎた後、いや、やはり家に持ち帰ろう、押し葉にしようと戻っても、さて絶対に見つからない。
出合った時が吉日で吉時間。時間は止まらないし、戻らない。ビートルズは 'Life is very short' と歌ったが、私は 'You only live once'「人生は一度」という方が好き。坂東玉三郎さんは「生まれ変わったら?」の質問に「生まれ変わりたくない」ときっぱり答えた。そのくらいの心意気で、柿を見上げたい。そんな秋です。
14 Oct 2021
9 Oct 2021
Aさんにお話しながら、自分も学ぶ。私は下描きが苦手で、ほぼすべての絵は書道のように一発描きで描いてきました。しかし下描きをすることで、もう少し複雑なことが可能になる。生徒さんたちがするのを見て初心に返り、ヨシ、私もやってみようと思ったのです。
とにかく、面白くなければ、絵なんか描く意味がない。新しい発見に満ちた冒険でなければ、絵を描くことはただの退屈な作業です。一瞬一瞬を愉しみ、一瞬一瞬あたらしくなる自分がいなければ。
たとえば、幼いこどもはそれを難なく行ないます。私には甥と姪が合計3人ずついますが、どの子も小さな頃はとっても創造的。ここに遊びに来ては「絵の具する」と非常にしつこくせがむ(そのうち何か訊いても「べつに」とか言うくせに)。彼らは色鉛筆では満足できない。絵の具は、粘土細工と同じような「体感」の大きな画材だと思います。
まだ幼い頃、人はお金を稼がなければ生きてゆけないのだと周囲から知らされる以前の子ども時代に、自分はどんなことを考えていただろう。何を愉しんでいただろう。それを思い出すことにはとても価値がある。そんな内容の一文に出くわして驚いた。そんな時代が、確かに誰にとってもあったのだ。
24 Sept 2021
17 Sept 2021
3 Sept 2021
やさしい猫
スリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが名古屋出入国在留管理局で亡くなった。一連の痛ましくショッキングな報道に接するにつけ、遡って昨年春から一年間、読売新聞に中島京子さんが連載された『やさしい猫』が、いかに重要な小説であるかに、一層深く重く感じ入る。
「今度の小説は難民をテーマに・・・」と伺ったのは、一昨年の秋だったと思う。難民と聞いた時、シリアなど中東の人々、または国を追われたロヒンギャの人たちについて書かれるのかなと、とっさに思った。しかし待ちに待った連載が始まると、それは日本国内に、私たちの隣人として暮らす難民のことだった。
京子さんのことだから、以前からずっと構想を暖めておられたと思うし、執筆に際しては労を惜しまない丁寧な取材をし、膨大な資料の山と静かに格闘されたことと思う。
しかしながらこの小説に、社会問題に立ち向かう堅苦しさはまったくない。タイトルからしてまさに「やさしい」し。
誰もが日々の生活のなかで、目を凝らしその気にさえなれば見えるもの。視界の隅からぐぐっとその景色をセンターに持って来ると、その重いテーマが、私たち一人一人の個人的な問題であることに気付かされる。私たち一人一人が、他者をどのように見ているのか、感じているのか。
今開催中のパラリンピック。TVをじっと観る時間はなかなか無い。でも、たとえ断片的ではあっても、自分の小ささを思い知らされる驚きと感動の連続。画面の向こうで繰り広げられているのは確かに競争なのだけれど、メダルの色や順位に関係なく、お互いを讃え合っている選手たち。オリンピック、とくに若い選手が活躍したスケートボードにも、同じことを感じた。国の威信をかけて、はもはや昔。オリンピック開催には複雑な思いだったが、以前より「個人」が際立つ世界が目の前に繰り広げられて、大いに学ぶ機会になっている。
コロナに収束はあっても終息はないと、どこかで読んだ。その収束さえ、どこにいつあるのか、誰にもわからない。気候変動が加速しているのは言わずもがな。人の知恵で、そのスピードを抑え込まないと。自分に出来ることは何か。アフガニスタン。なぜいつまでも、人が人を殺さなくてはならないのか。
私たち一人一人が、他者をどのように見ているのか、感じているのか。日常生活を送りながら、誰もが仕事や子育てや介護で慌ただしい毎日を送りながら、出来ることって何だろう。
京子さんの小説は、いつだって弱い者の味方。だから私は、京子さんの描く物語が大好きなんだ。その自然な眼差しで、難民が抱える重い問題を身辺の問題に引き寄せて、私たちが自然に心を開けるように、この小説は存在する。
ぜひ今、手にとって読んで欲しい一冊です。
『やさしい猫』中島京子 著 / 中央公論新社
16 Aug 2021
6 Aug 2021
2 Aug 2021
19 Jul 2021