29 Dec 2016



おしまいのページ

 文藝春秋の雑誌「オール讀物」の巻末、「おしまいのページで」の小さなカットを、一年担当させていただきます。先日、第一回の一月号が届きました。これは気に入っている四角いぐい吞みを描いたもの。この調子で手持ちの器を題材に、あと11枚描くつもりです。

 器を描くと気持ちが落ち着く。Instagram でフォローし合っているスコットランドの絵本作家、Alice Melvin さんが、だいぶ前だけれどこんなことを書いていた。

 
     <私のモットー>

     日々のスケッチブックに何を描いていいかわからなくなったら、
     ティーポットを描きなさい。または鳥でもいい。
     または小鳥が描かれたティーポットならなおいいでしょう。


 そしてその通り、小鳥の絵付けがされたブルー&ホワイトのティーポットを、色画用紙に色鉛筆で描いて切り張りしたスケッチブックが post されているのです。こんな投稿に接すると元気が出る。Instagram を始めてよかったなーと思います。 

 ※私のインスタグラムのページにスマートフォンから飛ぶには、こちらをタップしてください。登録していなくても見られますヨ。





パウル・クレー

 タブレットの調子がイマイチでショップに持っていったら、機種交換を勧められた。二年ちょっと使っていた前の機種からデータを移動してもらい、さてすぐ前みたいに使えるかと言えばそうではなかった。アプリを再びダウンロードしたり、PCのアドレスを使えるようにしたり、そういうことは自分でやらなくちゃならない。ややこしい。

 年々メモリーが目減りしている自分を痛感するねと、すぐ下の妹と話す。

 それに比べて、壁紙を替える、というカスタマイズは愉しい作業。今回はクレーの水彩画にしました。一発で決まった。本当はもっとグリーンぽくて澄んだ絵です。すごく気に入っています。
 



ダイアナ・クラール

 は、エルビス・コステロの奥さん。このアルバムを作るにあたって、コステロは協力をまったく惜しまなかっただろう。私世代にはたまらない選曲の、とても素敵なカバーアルバムです。

 古い車の古いカーステレオの、壊れたMDプレーヤーがなぜだか息を吹き返し、4年前にセットしてあったMDが突然鳴り出したのはついこの間のことでした。すっかり忘れていたけれど、この人のパリのライブが録音されていた。最後の、これはボーナストラックかな、スタジオ録音による 'Just the Way You are' 、ビリー・ジョエルの「素顔のままで」が、なにしろよい曲であること。このことに、これまたなぜだか急に気付いた。

 そしてこのアルバム、'Wallflower' はその延長線上に灯った12本のキャンドル。ママス&パパスの「夢のカリフォルニア」、イーグルスの「デスペラード」、カーペンターズの「スーパースター」、ギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」、そしてタイトル曲のウォールフラワーは、ボブ・ディランの曲。ウルウルしそうな懐かしの名曲はまだ続く。

 歌にダイアナのハートがこもっていて、ぜんぶダイアナの曲になっている。ここのところ、毎日こればかり聴いています。大みそかもお正月も、たぶんしばらくはこればかりと思う。私の台所は。




11 Dec 2016




詩について

 時が止まった。タブレットで観る You Tube の小さな画面越しでさえ、そう感じた。

「ごめんなさい。お詫びします。とても緊張しているんです。」

 紳士淑女で満席の会場に、あのパティ・スミスが弱々しくそう言うと、つまずいた2番の最初の部分に戻って歌いなおした。言葉というものがこの世界の一部であることを感じる瞬間。言葉が消えた世界を、まるで疑似体験するようだった。

 ディランは世界のどこかでこの様子を観ていただろうか。もしそうなら、少し心配しながらも、感謝とともに「それでいいんだよ、パティ」と思ったのではないか。

 こじつけだと言われても気にしない。たるんだ綱か割れたガラスを渡るように危うい、この世界と人間のことを詠ったこの「はげしい雨が降る」に、これほどふさわしいパフォーマンスはない。朝から何べんも聴いていて、そう思う。

 長い曲の終盤に向かうにつれ、パティは力を取り戻し、息を吹き返し、勇敢に歌い切った。涙があふれた。客席の紳士淑女の中にも、私と同じ気持ちの人がいるのがわかった。ディランやパティ・スミスと同じ時代を生きていることに感謝する。



 
   私が見るものと 私が言うこととの間に
   私が言うことと 私が黙っていることとの間に
   私が黙っていることと 私が夢みることとの間に
   私が夢みることと 私が忘れることとの間に
   詩は、ある


 これは、ディランじゃなくて、1990年にノーベル文学賞を受賞した、オクタビオ・パスというメキシコの詩人の言葉。ずっと前に新聞で読んでメモしてあった言葉。

9 Dec 2016




クリスマスの支度

 月が替わって、もう今日は9日。ハッキリ言って、早すぎです。まだ家の中は、11月を引きずっていて、段ボール箱こそ減ったものの、個展でお求め頂いたプリントたちが額装を待っていますし、12月のレッスンの材料も「早く仕分けしてよ~」。小さな庭では、伸びきった芝が「早く刈ってよ~」。」いずれも無言の訴え。

 よし、なら、と、昨夜寝る前にするべきことのリストを日記に書き出してみたら、その多さに益々途方に暮れて、最後に「さて、今日は寝て、明日だ。」で締めくくる自分て、なんて軟弱なのでしょう。

 なので、クリスマスの飾りもまだほとんどなにもしていない。11月のレッスンで、このバンティングを作っておいてよかった! これさえあれば、気分はとりあえずフェスティバル&カーニバルですから。

 メンバーから、飾りつけの写真をメールで続々頂いております。みなさん素敵に飾られている。うれしいです♪

 ↓は、先月の沼津クラスと東京クラスの様子です。

 



 そして12月のレッスンももうじきです。

 今月はほんとは、「アートジャーナル」と称した小さなスケッチブックの表紙をコラージュで作る、というのをやるつもりでしたが、その土台にするスケッチブックをロンドンの画材店から取り寄せるのに、思ったより時間がかかってしまいました。それで間に合うか心配だったので、別の企画に。

 満を持して(?)、とうとう切手の小箱をつくることにしたのです。というのも、実にタイミングよく、素敵な外国の切手が沢山手に入ったから。手のひらに載る小箱ですが、きっとずっと大切にしたくなる、素敵なものに仕上がると思う。ご参加の皆さま、お愉しみに!(先ほど、Lesson のページに、持ち物などを更新しましたのでご覧ください。)

 そして今月やるはずだった、アートジャーナルは来年1月に行います。そちらの素材も、乞うご期待です。東京クラスはグループ展の準備もありますが、欲張りに両方頑張ってまいりましょう。(スケッチブックの数が限られていますので、お申し込みがまだの方はぜひお早めに!)

 ここでお知らせですが、毎年作ってきたカレンダー、今年はそんなわけでどうしても時間が取れそうになく、泣く泣くお休みいたします。愉しみにしていてくださった皆さま、ゴメンナサイ。

 やることリストはいっぱいでも、心の余裕は持っていたい。クリスマスの飾りも、少しずつ少しずつ。冬休みの子供たちを招く日までには、ささやかでも気持ちよく仕上げたいなと夢見ているところです。

1 Dec 2016



Galerie 412

 いつにもまして、夢のような6日間でした。初日には11月の雪! 思えば準備段階から、急用に次ぐ急用でスケジュールが定まらなかった。にもかかわらず、奇跡のようにつじつまが合い、何かに守られているかのように無事に会期を終えられたこと。ただただ感謝です。

 新作は少なく、今までやってきた仕事から、気に入っているもの、特に文芸誌の挿絵を沢山ご覧いただけたのはよかったと思う。

 白と黒の絵は一見地味で、ましてや挿し絵は小さな絵ですから、今までじっくりご覧いただく機会があまりなかった。目立たずに小説を支えるという存在の仕方が好ましく思え、実はひそかに力を注いでいた仕事です。

 「墨の濃淡に色が見える」と言っていただくのがうれしかった。意識してそうしているわけではないけれど、そのものらしさを表そうとするとき、自然と頭に色が浮かんでいるのでしょうね。
 



 毎日多くの方においでいただき、かつて篠田桃紅さんも囲んだ白いテーブルの上での水彩デモンストレーションも、大好評でした。(インスタグラムに動画をUPしています。)

 そしてその同じテーブルで、最終日のクロージングタイム。お客さまも皆帰られた後、去年と同じように、ギャラリーの千鶴香さんがすっとワインの用意をしてくださる。搬入から手伝ってくれた anzu さんと3人でカンパーイ。(カワダは帰り、最寄り駅から運転のため、泣く泣く葡萄ジュースで。)このために用意してくださったのでしょう。ギャラリー仕様?の世にも美しいチーズも絶品。

 「余韻を愉しみたいじゃない?」と千鶴香さん。

 時間が来たら、次の週の人が傍で待っている中、大慌てで搬出するのでは、その「余韻」は味わえない。

 「オーナーの村越さんとね、もしそうしなくちゃいけないなら、私たちがギャラリーをする必要はないわね、って話すの」

 前回もそうでしたが、会期中、こうして様々な話をしながら、いろんなことを学ぶのです。そういえば村越さんと、私がかつて装画を担当した本の主役、彫刻家のワグナー・ナンドールとの縁にも、驚かされた。

 Galerie 412 に、私はある種のスピリットを感じている。そのおかげで居心地がよく、いつまでもいつまでも、ここでゆっくり絵を見ていていいんだという気持ちにさせてもらえる。それ以上のギャラリーって、あるでしょうか。ご来廊の皆さまも、そう感じませんでしたか? 




 お時間を作ってご覧いただき、ありがとうございました。

 そして自分、おつかれさま~!


23 Nov 2016



個展

 いよいよ明日から、始まります。表参道ヒルズ同潤館にある、Galerie 412 にて開催です。

 今回は今までのイラストレーションの仕事から、小説の挿絵とイギリスでの雑誌の仕事を中心に、ご覧いただきます。

 ↑は、庄野潤三先生の連載に描かせていただいた、モノクロームの挿絵。最近好んで使う黒のフレームに、アイスクリームのような3色のマットを使った。新しい見せ方というか、絵がより生きるようにと考えたものです。




 同じ頃、やはり毎月描いていた、英・Country Living の挿絵もご覧いただきます。

 「連載」というのは、自分を鍛えるありがたい仕事です。とにもかくにも毎月締め切りまでに仕上げなくてはいけない。やってるときは夢中だからその価値の半分くらいしか気づかないけれど、終えて長い年月経って、幸運だったなと思います。



 これは単発の依頼。British Airways の機内誌に描いた水彩です。原画を展示するといつも人気なので、昨年思い切ってプリントの額装画に仕立てました。軽やかな水彩に、この黒といぶし金の重さのある特注の額が、妙にしっくりくる。不思議です。

 前に和田誠さんが、「イラスト」とは絶対言いたくないと仰っていたのを読んだ。手を挙げて、「センセイ、私もです!」と言いたくなった。和田さんは、「イラスト」って「パンスト」みたいでイヤだというようなことも仰っていた。「センセイ、私もです!」です。

 私の小さなイラストレーション、どうかご都合が合いましたら、ぜひ見に来てください。デモンストレーションは、2日目の25日から行います。


   会場: Galerie 412

        渋谷区神宮前 4-12-10
        表参道ヒルズ同潤館 302 
                    TEL/FAX: 03-5410-0388

   会期: 2016年11月24日(木)― 29日(火)

   時間: 13:00 - 19:00 (最終日は 17:00 まで)

   河田在廊日: 24日、25日、26日、27日、29日


 しかし、ほんとに雪が降るのでしょうか?
 

15 Nov 2016



11月のレッスン

 Hiro's Art Class では毎年この時期、クリスマスや新年に向けての作品作りをします。今年は11月にクリスマスの室内を華やかにするバンティング(三角旗の飾り)をウィリアム・モリスの壁紙で、12月には、'Art Journal' 用スケッチブックの表紙をコラージュで作りたいと思っています。どちらも自分が使いたい、作りたい、という発想から。

 よく、以前にやったレッスンをもう一度やってくださいとリクエストを頂き、たいへんありがたく思います。ところが我儘な性分で、今までやったことのない何かを私は作ってみたい。そのほうが、自分の気持ちが乗って、より愉しいレッスンを準備できますから。もし似たものを作るのであっても、前とは別のもの、バージョンアップした、もっと今の自分が欲しているものを・・・などと、尊大にもこの講師は思っているらしいのです。

 幸いプライベートの小さなレッスンですから、そのへん、すごく臨機応変です。今回も、こちらの事情でサンプルづくりがすっかり遅れてしまいました。しかも作ってみると、思いのほか時間がかかることを知り、時間内に水彩のレッスンまでは難しいことが昨日になってわかった。となったら少しでも荷物が軽いほうがいいですよね。急いでみんなに再BCC。「水彩はデモンストレーションのみとなりました!」とお伝えしたところ。

 でもペンとインクの書き文字は、行います。文字のバンティングも作りたいから。古い文字やページデザインを集めた、コピーライトフリーの資料をあさり、拡大して資料を作りました。コラージュにしても生きる、味わい深いクラフト紙にプリントしたものをキットに加えます。
 



 クリスマスの小物づくりは、心がウキウキします。昨日のBGMはドビュッシーの「子供の領分」と、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」(マザーグース)。テンション上がりました。ご参加の皆さん、お愉しみに♪


13 Nov 2016



挿し絵と表紙画

 この間出演させてもらった、三島のFMラジオの番組で、パーソナリティーの太田景子さんから、「なぜイラストレーターになったのか」という質問を受けました。

 うんと小さなころから、覚えている限りでは3歳くらいからずっと、紙と鉛筆さえあれば絵を描いていました。どうしたらなれるかなんて全くわからないまま、漠然と「絵を描く人になりたい」と思っていたのは確かです。

 ティーンエイジャーの頃、大橋歩さんの本に出合ったのは大きかった。『トマトジュース』という本。当時すでにイラストレーターとして大活躍の大橋さんによる、自伝のような本でした。ものすごく率直な内容で、それを読んだのが、初めてこの仕事を意識するきっかけになりました。

 大橋さんの真似をして、クレヨンで絵を描いたりしてみたけれど、私にはどうもしっくりこない。透明水彩に出合うまで、油絵、パステル、色鉛筆、リキテックス、カラーインクと、日本画以外はなんでもやってみた。日本画も実は画材までは用意したんだけど、結局手を付けずじまいでした。

 11月24日から、表参道ヒルズ同潤館にある Galerie 412 で開催する個展では、雑誌や書籍での仕事を少しご覧いただきたいと思っています。大作はありません。体格と同じに、小さな絵ばかり。ああ、イラストレーターになってよかったな、と思えた作品を集めるつもりです。

 「イラストレーター」という言葉を何度も使っておきながら、いまさら言うのもナンですが、私はかなり不器用なタイプのイラストレーターでした。依頼主に冒険心があり、かつフトコロが深い場合にのみ、かろうじてうまくいくタイプじゃないかと、けっしてえらそーに言えることじゃないですが、自覚しています。

 この35年くらいの間にいろいろやらせていただきましたが、今回DMに使わせてもらった、庄野潤三先生のお作品への挿絵。このシリーズはこんな私にとって、まるで奇跡のように有難いお仕事でした。まず、毎回お原稿が届くのが愉しみ。ラフの提出も無用。編集者さんからもデザイナーさんからも、好きなようにのびのびと描かせてもらえた。そして先生と奥さまの感想を伺うのは、この上ない幸せでした。

 この葉書きは入稿前に、庄野夫人にご覧いただきました。大変喜んでくださり、温かいお心いっぱいのお返事をお電話とお手紙で頂戴し、また当時の感激がよみがえる思いがしています。

 同じことが、英 COUNTRY LIVING の仕事にも言えます。こちらはかろうじてラフは必要でしたが、原稿を読んだら、やはり描きたいテーマは自分で自由に選べた。11年もの間、飽きずに(飽きられずに?)愉しく続けられたのは、ひとえに編集部とデザイナーたちのおおらかさあってのこと。

 今回の展覧会では、この2つの仕事を中心に、中島京子さんの文芸誌連載挿絵や、英国航空機内誌に描いた作品、『お砂糖とスパイス』からも。それに最近額装に力を入れているプリント画も展示します。去年ご覧にならなかった方にも観てほしいので、昨年の水彩コラージュも再び。

 先日の三島展で大好評だった、「プチ画室」も愉しんで頂けたらうれしいです。

  
   会場: Galerie 412

        渋谷区神宮前 4-12-10
        表参道ヒルズ同潤館 302 
                 TEL/FAX: 03-5410-0388

   会期: 2016年11月24日(木)― 29日(火)

   時間: 13:00 - 19:00 (最終日は 17:00 まで)

   河田在廊日: 24日、25日、26日、27日、29日


 28日以外は出勤する予定でおります。クリスマス前の表参道に、ぜひ足をお運びください。      
                   



祭りのあとに、また祭り

 夢のようでした。賑やかで、愉しい愉しいグループ展が終わり、もう5日が経とうとしています。お時間を作ってご来場くださった皆さまに、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 また Gallery PLAZA のご担当、Mさまには、きめ細かいサポートをしていただきました。あらためて感謝です。

 多くのお客さまにご覧いただき、芳名帳にお名前を残してくださった方が、初日だけでも100名さま以上! メンバーみんなで、びっくり&大喜びでした。

 それぞれの個性が表れたさまざまな作品に、共感の言葉をたくさん頂きました。自分のことを全く知らない誰かが作品を愉しんでくれて、明るい表情で会場を後にする。どのメンバーも、ずっしり手応えを感じたことと思います。

 次回は1年半後を予定しています。せっかく季節のある国に住んでいるのですから、秋と春、交互に巡ってくるように予定を組んでいるんです。

 東京の目白クラスは、来年の3月に銀座ACギャラリーにて開催。皆さんそろそろアイデアを絞りこんでいる頃でしょうか? 

 おっとその前に、です。自分の個展があります。会場は表参道ヒルズの同潤館にある、Galerie 412。昨年の初夏以来の開催です。

 今回お客さまの質問に答えながら、会場で行った水彩デモンストレーションが好評でした。一発勝負で描くのでかなりスリリングですが、それも含めて愉しみました。INSTAGRAM に動画をUP しています。




 調子に乗って、表参道でもやっちゃおうかな。在廊日は追ってお知らせいたします。ぜひ、観にいらしてください♪


6 Nov 2016



会場便り

 賑やかな搬入から、賑やかな毎日へ。あっという間に3日目が終了しました。多くのお客さまにおいでいただき、感謝感謝の3日間でした。

 丁寧にご覧いただきながら、こんな展覧会は初めて、とか、自分も何かを始めたくなった、などとありがたいご感想をもらえると、こちらも勇気と元気を頂きます。

 今日は都内からのお客さまが、何人も。遠くからありがとうございました。

 よく訊かれるのが、どんな細筆で描いているか。使っている筆をお見せすると、皆さん一様に驚かれる。それほど極細ではないので。なので、水彩のデモンストレーションも好評です。

 今回仕事が忙しくて、残念ながら出品がかなわなかったM子さんが、遊びに来てくれた。HACのことを「単なるお稽古事ではない」と言ってくれたのには、なんだかじんときてしまいました。

 後半もよろしくお願いします。カワダ在廊日は、本日6日と8日の最終日。お待ちしています!

 お車でおいでの方は、市営駐車場か、広小路寄りの「本町パーキングTIMES」にとめてください。1時間までですとチケットが出ますので♪


   会場: Gallery PLAZA (みしまプラザホテル)

   日時: 2016年11月3日(木・祝)― 11月8日(火)
        10:00 ― 18:00 (最終日は17:00まで)




 このコーナーもやってよかった。「ひとり5枚ね!」を合言葉に、みんなで作ったポストカードの集合作品。

3 Nov 2016



沼津クラスグループ展

 今日は午後から三島の Gallery PLAZA にて搬入作業。飾りつけ完了!です。メンバーがテキパキと作業してくださり、きれいに会場が仕上がりました。私だけ、自分のコーナーがちっとも出来上がらず居残りでしたが、それも無事終え、明日の初日を控えてほっとした気持ちです。

 初めての会場。飾りつけに興味をもって覗いてくださるお客さまが何人もいらして、麻布十番で個展を開いていた頃のことを思い出しました。ギャラリー東京映像もまた、通りに面したガラス張りのギャラリーで、たまたま通りかかった方とのありがたいご縁がいくつも生まれました。

 明日、というか、もう今日ですね。3日は歩行者天国だそうで、すごい人出が予想されます。お車でおいでの方は駐車場探しに難儀するかも。どうかお気を付けください。


   会場: Gallery PLAZA (みしまプラザホテル)

   日時: 2016年11月3日(木・祝)― 11月8日(火)
        10:00 ― 18:00 (最終日は17:00まで)


 カワダは7日以外、毎日在廊の予定です。簡単なデモンストレーションなども、お見せしたいと思っているところです。愉しい作品がいっぱいです。メンバーみんなで、お目にかかれますのを愉しみにしております♪


28 Oct 2016



ジョージア・オキーフの言葉

 今日は冷たい雨でしたね。急用が重なり、目の前の山積みの仕事がなかなかできない。焦ってはいけない。頭を整理して、自分自身に戻るための時間を持とう。・・・と思って、これを書きだしました。

 いつだったか、ボブ・ディランがDJをやっている番組を、インターFMでピーター・バラカンさんが毎週紹介していた頃があった。ディランの声で、ディランのセレクトした曲が聴ける、夢のような番組。なんという贅沢。味わい深く、温かく、ユーモラスで元気の出る番組だった。

 地方在住者は radiko の機嫌のいい時(間違って東京の放送局が入る時)しか聴けなかったし、録音して残してあるのは3本だけですが、その中の一つに、花がテーマの週があった。番組の中で、ディランは人の名言をよく引用する。名言好き(私のこと)には、またたまらなかった。

 画家のジョージア・オキーフの言葉が出てきたときは、うれしかったな。それは、こんな言葉です。


         If you take a flower in your hand
         and really look at it,
         it's your world for a moment.


     ひとつの花を手に取ってよおく見れば
     束の間、世界はあなたのものになる。

                  Georgia O'keeffe (1887-1986)


 


 オキーフへの思いを語りだしたら、止まらなくなりそうです。




 たとえば、ウチの台所にはオキーフがいる。画家のレシピブックです。この白いマスタード瓶はロンドンのチャリティショップで見つけたもの。これが画家の家を撮った写真集の台所の棚にあったのはうれしかったし、このレシピブックにも、私の持っているのと同じお皿が出ている。見つけたときは 大興奮でした。サンタフェのギャラリーで買った、大好きなお皿です。ミーハーです。




 オキーフは少し祖母に顔が似ていて、それもファンになった理由のひとつでした。肝心の絵のことは、また少しずつ書いてゆきますね。ロンドンのテイト・モダンで開催されたような展覧会が、日本にいつの日かやってくることを、切に祈っています。



 ところで、お知らせです。長くご覧いただいてきた「河田ヒロウェブサイト」を、このたび一旦閉じることにいたしました。また新たに別のURLでスタートしたいとは思っていますが、それまで、このブログに作品やレッスンのこと、個展やイベントのことなども載せてまいります。11月初めにはアクセス不可となります。手作りで、せっせと更新してきた愛着のあるサイトでした。13年に渡るご愛顧、本当にありがとうございました。



アイデアソース

 この箱は、何年も前に作ったもの。刺繍や編み物の作家で、テキスタイル・デザイナーとしても活躍する、カッフェ・ファセットさんの本からインスピレーションを得たものです。いろんなサイズで作って小物をそっとしたため、個展でご覧いただいたこともあります。

 日本ではケイフ・ファセットと表記されていますが、どちらが正しい音に近いのでしょう。イギリス人の友人に尋ねたところ、2人中2人が「カッフェ」と言っていたので、私はそう呼んでいます。

 このファセットさんの存在を知ったのは、ちょうどイギリスに長期の取材旅行に出掛ける少し前だったと思う。かれこれ30年も前のこと。古本で買ったクラフトの専門雑誌がきっかけでした。墓石の表面に生えた地衣類が描く自然の模様をヒントに、編み物の図案をデザインをしているアーティストが紹介されていて、それがファセットさんだったのです。

 イギリスに行って、日本と違う英国の、どこか黄昏感漂う色彩に夢中になった私は、帰国後に洋書店で見つけた彼の2冊の作品集を恰好の教科書と定め、それからずっと大事にしています。

 ファセットさん自身も、生まれ育ったカリフォルニアとは違う、あの国の色彩の世界のとりこになって移り住んだのだと知れば、勝手に親近感を感じ、一層ファンになったものでした。 
 


 11月のレッスンではまず、ファセットさんの色彩のセンスや、彼自身のアイデアソース、一体あのカラフルな作品群を、どこからアイデアを得て制作しているのかなど、ファセットさんから私の受けた感動をお話ししました。特にロンドンのV&Aミュージアムの収蔵品からインパイアされた作品が素晴らしい。それに蚤の市の掘り出し物から生まれた作品も。

 自分が、あ、いいな、と思った何もかもから、躊躇せずに影響を受けている。素直な眼差し。子供のような瞳の輝き。

 そしてそんなファセットさんの本こそを、今回私たちはアイデアソースにさせてもらったのでした。ニットを編むように水彩で図案を描いて、それをもとにコラージュ。皆さん、とても愉しんでくださった様子。大いに手ごたえを感じることができました。やってよかった。ファセットさんに感謝です。




 切手の小箱は、私の紙入れ。小さくカットした、小さな絵を描くための水彩紙にちょうどいいサイズなんです。庭に落ちていた雀の卵。それに最近よく描いている、ちっちゃな抽象画とともに。

13 Oct 2016



JHS のワークショップ

 今月と来月は、愉しみな予定がいっぱいです。10月26日の明日館でのワークショップも、おかげさまで満席寸前。もしもまだお迷いの方がいらしたら、ぜひお早めにご連絡ください。

 昨日、今回の企画をしてくださったハーブ研究家の永田ヒロ子さんから、ジャパンハーブソサエティー(JHS)の会報誌が届きました。

ハーブ研究家でもある、永田さんは Hiro's Art Class のメンバーでもあり、グループ展にも毎回作品を出品くださっています。この表紙の作品もそのひとつ。マートルというハーブの葉を使われていて、制作当時にはグリーンの鮮やかな作品でしたが、時を経てキャメル色に変化したマートルの存在感もまた素敵です。ご自身によるスタイリングも大成功ですね。

 ワークショップの詳細は、上のメニューバーから event ページをご覧ください。時間内に完成しお持ち帰りいただきますので、あらかじめこちらで準備抜かりなくしてまいります。初心者の方も安心してご参加いただけます。

 イギリスでのお話なども交えながら、愉しい会にしたいと思っています。お申し込みをお待ちしております♪

12 Oct 2016



10月の輝き

 やっとのこと! お日さまがその黄色いお顔を見せてくれましたね。おまけに涼しい。

 秋の低い光と涼しい空気が、私は大好きです。その光が作る、温度のこもった秋の色彩も。この季節に旅をすることが多かったので、ひんやりした空気を吸い込むと、それがまるでスイッチのように働くのでしょうか。思い出の小箱がするすると蓋を開ける。

 朝、何を着るかを選ぶのも愉しい。私はカーディガンを8枚も持っているから。帽子をかぶって、長靴下とブーツも履ける。赤毛とそばかすのあの子みたいに。

 昼間の時間は短くなってゆくけれど、夜が長くなるのもそう悪くはない。夕飯の片付けを終え、灯りを僅かに減らすとき、灯すよりなぜか心地よい思いがする。

 四季のある国に生まれたこと。また一周したんだなと、ありがたく思う心の余裕を、秋はそっと与えてくれます。 
 



 INSTAGRAM にも書いたのですが、日本では名前のあとに「駆除」なんて言葉が続くほど、悪名高きセイタカアワダチソウ。でもロンドンにいた頃は、花屋で見つけたGolden Rod (黄金の釣り竿)という黄色い花こそが、この花でした。

 昨日の朝も、後継者のいない荒れた畑や空き地に、この花がすごい勢いで咲いています。幾枝か失敬したい気持ちをこらえながら、せめて写真だけでもと思ったら、これが撮れました。

 セイタカアワダチソウの蜜は、あまり美味しくないようです。でもミツバチたちにとっては、冬を越すための大事な収穫。がんばれ、ハッチ! もちろん、マーヤも!

10 Oct 2016



私のビートルズ

 一年に何度か、外気にロンドンやイギリスを思うときがあります。今朝はまさに! 長袖のシャツの襟もとや袖口からひんやりした秋の気配が感じられる。足元にはいつの間にか色とりどりの落ち葉が、モザイクのように散っていました。

 ビートルズがこんなに好きなのに、私はリバプールに行ったことがない。アビーロードも、友人夫婦が来た時に案内したきりで、写真も撮らずじまい。

 でも暮らしていた毎日が、ビートルズのいたロンドンでした。街角を見てはペニー・レーンを思う。書店から本を抱えて出てくる人は、もしかしたらペーパーバック・ライターの卵かもしれない。赤いダブルデッカーバスの2階に上がるとア・デイ・イン・ザ・ライフの一節を思い出すし、高い税金に苦しんだときはタックスマンが口をつく。雨が降ればレイン、晴れればグッド・デイ・サンシャイン。ストロベリー・ヒルという駅の名前にドキドキした。ビートルズの音楽に出合わなかったら、私はイギリスへ行っただろうか。

 先日友人と観た映画は、ビートルズの初期のライブ映像をまとめた作品で、私の世代には懐かしの映画「アメリカン・グラフィティ」に出ていたロン・ハワードが監督。ビートルズへの思いが実にきめ細かく、しかもすっきりと表現されていて、予期した以上にいい映画でした。

 古い映像と音源を今の技術で磨き上げ、貴重なライブを「体験」できるようにしてくれたのには、興奮した。下積みからデビュー、世界中にあらゆる変化をもたらし、人気の怒涛の中にあってもなお優しさと強さを失わなかった彼らの「力」を再確認する。桐島かれんさんが「ウルウルした」とINSTAGRAMに書かれていたけれど、私も同じく熱いものがこみあげました。自分のビートルズへの愛は MAX と思っていたのに、今までよりもっもっと好きになった。

 ビートルズを知って半世紀近くが経つ。こんな贈り物をまだもらえるなんて! ありがとう、ビートルズ♪

P.S. 昨日、10月9日はジョンの76回目の誕生日。Happy Birthday, John !
 

1 Oct 2016



ナイトメアを超えて

 まだムシムシはするものの、ようやく暑さも一段落。台風のせいで空模様はなかなかカラッとゆきませんが、観るもの、聴くもの、食べるもの、五感を刺激しながらバランスを取ってゆきたい秋ですね。

 11月3日から始まる沼津クラスのグループ展。今回は初めて、お隣の三島市での開催です。案内状が出来上がり、メンバーがすでにあちこちに配布してくださっています。

 三島は街歩きが愉しい街。こじんまりしたエリアに、有名なうなぎの桜家、丸の内 KITTE にも入っている Floyd など、古いお店、新しいお店、それに富士山の雪が長い年月、地下を通って湧き出している泉の公園やせせらぎ、歩いていてちっとも飽きない。私が子どもだった頃よりもずっと、ある意味、古の宿場町の面影がよみがえっているのではないかと思います。源頼朝ゆかりの神社、三島大社が、街を静かに見守っている感じもいい。

 そんな三島のほぼ中心にある、みしまプラザホテル内、Gallery PLAZA が、今回の会場です。会期は11月3日(木・祝)-8日(水)、10:00-18:00(最終日は17:00まで)。追ってこのブログのページや、HPの Exhibition のページに詳細をUPいたしますので、もう少々お待ちください。

 以前お世話になっていた麻布十番のギャラリーのように、通りに面した大きなガラスから中の様子がわかる明るいギャラリーに、多くのお客さまをお迎えできますように。個性豊かな愉しい作品を一杯準備しながら、みんなでせっせと追い込み中です。




 こちらは先週の写真。雨の中、新幹線で東京へ。表参道ヒルズ同潤館 Galerie 412 で、今年も個展をお世話になります。会期は11月24日(木)-29日(火)。今回は庄野潤三先生の連載やご著書に描かせていただいた絵、中島京子さんの「小さいおうち」連載時の挿絵、イギリスでの仕事など、今まで制作してきた装画や挿絵を、新たにプリント作品として額装し、ご覧いただきたいと思っています。ギャラリーのCさんも、「いいわね!」と賛成してくださった。

 目の前の展覧会2つの壁が、やっと少しずつ乗り越えられそうな高さになりつつある。しかしこの間までは連夜の悪夢。この小心者は、大事な仕事がある前に、必ずそんな日が少し続くんです。今回は初めて「ベッドから落ちる」というアクシデントまで! でもその後不思議に、文字通り「落ち」着いたから、一種の厄払い(?)だったのかな。

 ジタバタしながら、でもとにかくよい会が開けますように。ふんばってがんばってまいります。


21 Sept 2016



おまじない

 こちらの芝は貫禄のグリーン。明日館の前庭です。イベントの時以外は立ち入り禁止で、大事に手入れされている。結婚式の記念写真に、申し分のない背景ですね。

 先日の東京クラスの日、近づくMALAKAS(台風16号)のせいで、エアコンONの教室内まで尋常じゃない湿度でしたが、大きな桜の木と歴史に守られたこの建物にいると、何があっても大丈夫という安心感に包まれます。

 この日は私がかつて描いたイラストレーションをサンプルに、小さな雑貨を描く練習。そしてそれをカードや封筒にアレンジする練習をしました。(沼津クラスでは来週29日に同じ課題を行います。)
 



 水彩を言葉だけでお教えするのは、正直不可能と思っています。絵は頭で描くものじゃないですから。でも、皆さんのお机のそばに行って、その方の絵の具、その方のパレットを使って、その方だけのために間近でデモンストレーションをすることで、エッと思うほどの変化が起こることがあります。(そんなときは、心で小さくガッツポーズをしています。)

 絵を描くことの基本は、当たり前ですが、やっぱり「観る」ことなのですね。そして「感じる」こと。絵具の溶き方、筆への含ませ方、筆を運ぶときのリズムとか勢いとか、(小池知事じゃないけど)「スピード感を持って」描くこととか、すぐ近くでご覧いただくと、きっと何かの印象がその方に残って、「その気」がぐっと刺激されると思うのです。

 じゃあ、マンツーマンがいいかというと、そうでもなくて。自慢じゃないですが、東京も沼津もすごくリラックスした、愉快な、ちょっとしたバラエティー番組みたいなクラスで、笑いのつぼみが春のタンポポみたいにそこここで開いてる。肩の力がまず抜ける。これは何より大事なことだと思います。




 どうやったら絵が上手になるかな、よりも、どうやったら私が絵を描くことで得ている素晴らしい経験をお伝えできるかなと、いつも考えています。観ることが発展してゆけば、おのずと手もついてゆきますから。だからまずは、そこに近づくジャンプ台のようなものを、毎回考えて提供してゆきたい。

 次回10月のテーマ=ジャンプ台は、「ファッション」。現在いろいろ考え中。お申し込みがまだの方、沼津クラス(10月20日)には少し余裕がありますので、ご連絡を待っています。

 「好きなように描いて 幸せに死ね」は、晩年に絵をめちゃくちゃ描きまくった、作家のヘンリー・ミラーの言葉で、私にとって肩の力がストンと抜ける長年のおまじない。好きな言葉です。




私の夏の自由研究

 雨ばっかりで、皆さま、体調はいかがですか?

 気分が多少どんよりはするものの、頭痛などは起こらない私でも、この雨のせいで悩まされていることが一つ。今年の夏の自由研究、「芝生を育てる」がまさに水泡に帰すんじゃないか・・・と、気が気ではありません。

 「茶色い地面派」の家族をそれとなく説得し、初めて西洋芝の種を蒔いてみたのです。この貧弱な庭に芝が育つのか、いまいち確信が持てないため、安上がりの種作戦。

 蒔いたのは8月はじめでした。まずは土を掘り返し、ほんとは少なくとも深さ15センチは耕すこととあったんだけど、ズルして10センチくらい。そこに肥料を混ぜ込んで、種をぱらぱらと蒔きました。

 さすがイネ科だけあり、目ざといアリたちにずいぶん横取りもされましたが、3日ほどで可愛い芽が出始めた。うれしかった。お日さまの黄色い光を浴びてすくすくと順調に育つ。いい感じです。何度か上のほうを刈ってみたりもした。そうすると枝葉が出てくるらしいので。ひと月したら液肥がいいと読めば、その通りにして大事に育てていました。この調子この調子と安心していた。

 ところが台風や雨が連続し、まだひ弱な葉っぱたちがところどころぺちゃんとなってしまった。それでも日が差せばいくらか立ち直るんだけど、またまたこれでもかの雨攻撃。しかも強雨で、天気予報の連続傘マークがまったくもう!って感じ。がんばれ、西洋芝!

 しかし昨日のような大雨の日には、イモ子ことキアゲハ嬢は、どんなところで雨宿りしているのでしょう。
 

6 Sept 2016



季節のうつろい

 9月に入っても、まだまだ蒸し暑く、ご近所さんと行き会えば、そんな会話をいつまでも飽きずに繰り返しています。それでも季節の時計は、間違うということがない。新生姜の季節です。JAの直販所で一束買ってきて、お昼にお味噌を付けて食べました。辛い。残暑にしおれていた背筋が、シャンとしました。

 根生姜も直販所では安く手に入る。今までは、ある料理家オススメの方法、台所の棚に掛けたカゴに入れて保存していたのですが、カビが生えない代わりにすぐ乾燥してふにゃふにゃになってしまう。もったいなかった。料理家の人ほど、消費のペースが速くないのが理由だと思う。

 インターネットで調べると、瓶やタッパーに水を張って、そこに洗った生姜を入れ冷蔵庫へ。数日おきに水を替えていればひと月も持つのだとか。まだまだ知らない知恵がいっぱいあってうれしい。さっそく試しています。うまく行きますように。




 若い頃に読んだ、画家の有元利夫さんの本のなかの「配達される才能について」というエッセイに、家の中の5か所ほどに必要最低限の絵を描く道具を置いていた、という話があります。それを思い出したのは、台所でも絵が描けるように、上のような絵具箱をテーブルのすみっこにセットした後でした。

 無意識にでも有元さんからの影響を、かれこれ30年くらい引っ張っていた自分が、物持ちのいいおばあさんみたいで可笑しくなります。

 有元さんは、「自分を信じていない」と書かれている。画室に行かない限り、自分は絵を描かない人なんじゃないか、と。それでパンケーキの水彩絵の具と水入れを5セット、家中に置いてあった。

 それを聞いて、友人が反論する。

 「それは一種の不信感かもしれないけれど、もっと大きなところ、レベルの違うところでは信じているのではないか。・・・いつも受け入れ態勢を整えておけば、必ず『天命』は来ると信じているだろう」

 そう詰め寄られた有元さんが、「まあね」と答えるしかなかったとあるのもいい。それを自分の「開き直り」と締めくくっているのも、恐れ多いけれど共感します。

 この『女神たち』と言う本、もう一度読み直そう。
 



 さて、前々回のブログに書いたイモ子のその後です。一昨日、とうとうこのような美しいお姫さまに生まれ変わりました! 朝起きて、すぐに発見しました。羽化後間もなくと思われます。

 目の当たりにすると、こんなにも感激するものなのですね。幼い頃に観た蝉の羽化以来。その「瞬間」に立ち会えなかったのは残念ですが、はらぺこムシャムシャ芋虫だったあのコが、と思うと、魔法を掛けられたような思いと親心みたいなのがないまぜになって、たまりませんでした。

 1時間ほどこうしていたでしょうか。少し目を離した間に、どこかへ飛び立った。その時のロス感と言ったら!

 でも昼過ぎに花の水やりをしていると、ものすごい活発に飛び回るキアゲハが一羽。ああ、挨拶に来てくれたのか、または羽化ポイントからそう離れることなく活動する習性なんでしょうか。とにかくうれしかった。

 インスタグラムにアップしたら、この夏4羽も羽化をさせた方がコメントを寄せてくださった。来年は私もやってみようかな。夏の間は山椒の木に、いつでも幼虫がみつかりますから。パセリの大鉢を準備して・・・。


30 Aug 2016



9月のレッスン

 昨日は朝からクラスの皆さんへのお知らせメール。星野道夫さんがかつて、氷河の先端にある断崖が音を立てて崩れるのを見て、「ああ、また始まったな、と思う」と季節の変化に躍る心をかみしめるように表現されていましたが、ひと月半ぶりの明るいお返事を皆さんからいっぱい頂いて、ちょっとそんな風にさえ感じる幸せな一日でした。

 新学期、9月はこのイラストレーションをサンプルに、制作したいと思っています。シンプルで明るくて、手紙の隅や封筒のポイントなどにも生きる絵だと思う。

 この絵は、日本のステーショナリーメーカー、「イソップ」から出ていたノートの表紙で、自分にとってある意味、記念碑的作品です。やっとのことちょっと突き抜けることが出来た作品、というか。フルタイムのイラストレーターになって、10年近く経っていた頃でした。

 「好きなように描けばいい」。この単純な真実を、イギリスに暮らすことでいろんな角度から教えられた。自分らしさとは何だろうと思った時、この絵にはそれがいくらか出ているんじゃないかと、今思います。

 当時、大好きだった雑誌、Country Living のアートディレクター、ヘレン・ブラツビーが、「こんな事ってめったにないのよ」と言いながらこのスタイルを気に入ってくれて、それでレギュラーの依頼が来るようになった。「そうか、伝わるんだ」と、初めてわかった。

 インスタグラムを始めて、あの当時の自分を思い出すことが多くなりました。イギリスの女性アーティストたち何人もとつながることができたことが、そうさせるのかも。私の挿絵を、今も大事にしてくれているという Viv Hen's Teeth に出会えたのもうれしかった。




 彼女たちに共通する、チャレンジ精神と明るいユーモアのセンス。お互いへの共感と励まし合い。今ここにある目立たない何かから、ここに無い何か、誰も考えたことの無い何かを生み出そうと言う飾らない情熱には、作風のチャーミングさや大胆さに隠れてはいるけれど、昔からのフォークアートが持つ「魂の繊細」のようなものがちらちら覗いて、そこが私にはたまらないのです。

 こんなことを思うのは、最近 Maddy Prior の歌う 'The Lark in the Morning' を繰り返し聴いているせいかもしれない。

 しかしこの You Tube の画像、見ているだけで切なく、曲のよさと相まって、ほとんど半泣きになってしまう私なのでした。

28 Aug 2016



「わからないこと」

 こーゆーものが苦手な方のために、小っちゃくUP。まあまあイケると言う方は、クリックで大きくしてご覧ください。

 鉢植えのイタリアンパセリが、アレレと言う間に芋虫・イモ子に食べつくされてしまった。ご覧の通り無残な姿に。最初は腹が立ったけど、むしゃむしゃ食べてる姿がけなげで可愛かったし、一日で2倍くらいの大きさに成長する新陳代謝のスゴさにもビックリ。そしてある朝発見の、この新たなステージにも感動です。

 細い細い糸が2本。たったこれだけで、頑丈そうなこの緑のカプセルを支えているということに、まず驚く。どうやってこんなに繊細な糸を繰り出したのか。あの、毎日毎日、ただパセリを食べて大きくなるしか能の無かったイモ子が。

 そしてイモ子時代最後のメッセージ(?)、落し文ならぬ落としフン。正露丸のような黒丸が見えますか? 軒下の植木鉢の西側側面。ヨシ、ここなら、という思いだっただろうか。

 ふにゃふにゃの身体から、このかっちりした蛹へ。そして中では何ごとが? 神秘です。

 わからないことをわからないままにしておくことで、なんだかほっとするときがある。心や身体がふんわり健やかになる。そんな「わからないこと」との出合いを、大事にしたいなと思う。

 (見ればパセリも人が好く、イモ子を恨むでもなしに、すでに新しい芽を出しています。)

 さて、じっくり段取りを経て進化する蝶の一生を、私も少し見習わなくては。若い姪たちのしゃべり言葉、「ムリ」・・・の影響か、はたまた「わからないこと」を大事にし過ぎたか、諦めが早過ぎた。プロバイダーの説明をよく読んで試みたら、ちゃんと Website の更新が出来ました! いつまで続けられるか、それこそわからないけれど、もうちょっと頑張ってみようかな。

 Lesson ページも生き返りましたから、詳細を記す「9月の黒板」、近々更新いたしますね。お騒がせいたしました!

26 Aug 2016



暑い夏と熱いPC

 すでにお気づきの方もお出でかも知れません。実は、2004年からコツコツ更新してきた「河田ヒロ ウェブサイト」が現在開けなくなっています。

 今週初めからプロバイダーのトラブルで閲覧不可となり、何日もかかってトラブルは解消したそうなのですが、こんどは私のPCの能力に限界があり、更新ができず・・・です。

 思い切って新しいPCに替えることになりました。そしてこれを機に、この 'blogger' のブログと、Instagram のみにしてゆこうかと・・・。ページをもっと増やして、旧HP同様、作品の公開やお知らせ、もちろんレッスンの内容や持ち物なども記してゆきたいです。少々お待ちいただけましたら幸せです。

 レッスンのお問い合わせなどに必要なメールアドレスは、ここに直貼りするとスパムが心配なので、以下のようにどこかに表記することにいたします。


 hiro-kawada*po2.across.or.jp 

(* の位置に @ を入れてください。この方法、福永由美子さんのブログで知りました。福永さん、ありがとう。)
 

 あのHPには思い入れがいっぱいありました。鬼の集中力で2日で立ち上げ、デザイン作業も面白くて、多くの方に褒めていただいた。(たとえばシンプルで立ち上がりが早い!とか) 幸せなサイトでした。長年のご愛顧に、心からお礼申し上げます。

 そんなわけで今もまだ、PCカンケイすったもんだ中。今週はメールのお返事も遅れています。何卒お許しください。

 写真は先日訪ねた、三島のセレクトショップ、「イーリ」さんにて。お手製のジンジャーエールで、友人とおもてなし頂いたときのショット。暑い暑い日でした。まるで妖精国の飲み物のようでした。




 こちらは高校の同級生の友人が、ご主人と裾野市で経営しているブルーベリーの菅沼農園。父の誕生祝いの日の昼間、父と小学生の姪ふたりに甥ひとりを乗せて訪ねました。太陽の光をいっぱい浴びて、ぷっくり膨らんだその青い実の美味しかったこと! 

 私のHPではありませんが、20年続けられたこの農園も、今年で一区切り。しばらくお休みなのだそうです。また場所を替えて何年か後に再開とのこと。もっと早くから行くんでした。

 前日の夜に焼いておいたスポンジ台に、新鮮なブルーベリーを載せたバースデーケーキも、8歳から86歳の家族みんなに喜んでもらえた。11人分の食事の用意は今回、超・手抜きでしたが、父も笑顔で佳き一日でした。


23 Aug 2016



笑いと涙の間に

 毎朝BBCのラジオニュースを聴くのが日課ということは、前にも書きました。今日は訃報。ハーモニカ奏者のトゥーツ・シールマンスが94歳で亡くなったという。

 特に熱心なファンという訳ではない私でも、この人のハーモニカの音色は、耳にするたび胸が震える。耳から入った音が最短距離でハートに届き、瞬きの間に深く沁みる。

 映画「真夜中のカーボーイ」のテーマソング。そしてセサミ・ストリートのエンディングに流れるテーマ。この2曲のためだけにだって、長年に渡ってあらゆる音楽に貢献したベルギー出身のジャズミュージシャンの魂に、祈る理由は充分ある。

 ニュースの最後、シールマンスのある言葉が紹介された。


  I feel best in that little space between a smile and a tear.

 笑いと涙の間にあるささやかな空間にいるのが、私にはいちばん調子いいんだ。


 その「ささやかな空間」とは、手のひらに載る小さなハーモニカそのもののことのようにも思え、70年の絶え間ない音楽家の仕事に胸が熱くなった。

 夏は生命の力に引っ張られて、日々が目まぐるしく過ぎてゆく。たまっていた仕事や家事を片付けながら平和を祈り、オリンピックに感動の涙をする。旧友との終の別れ。いつもとは違う台風の進路。遊びに来た成長力120%のチビらにいっぱい笑わせてもらい、若い姪からは弾むパワーをもらう。

 私のハーモニカは小さな机とささやかな画材。秋に向かって、いよいよ制作に集中してゆきたい。

 ウクレレと歌も、友人に「手持ちにある楽器と今の自分の声や能力で、やれるだけやる」という励ましをもらってから、ヘタなりに再開。練習中の一曲はホーギー・カーマイケルの名曲、'Skylark'。詞と、そのことばの音、メロディの絡み具合が、歌ってとても気持ちのいい曲で気に入っています。

 そうだ、笑いと涙の間の細い一筋を縫い上げるひばり・・・を想像しながら、今夜は練習してみましょう。