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4 Oct 2024

 



2025 FLOWER CALENDAR

 今年もこの季節になりました。16日から始まる東京のグループ展に、何とか間に合いそうです!よかった。

 今年のテーマは「花」一本に絞りました。とりとめなくスケッチしてきたものを、12か月に配分する、その作業に苦心しつつも愉しくて、また来年も花にしよう!と気だけは早い自分です。

 以前、友人と3人で好きな花について話したとき、ふたりは迷わず大輪の花を挙げていた。私はと言えば守護花にヘザー(エリカ)を選ぶくらいですから、小さな花ばかり。今回もそんなチョイスになりました。

 唯一大輪的カラーリリー(8月)も開花前を描いたもので、楚々として凛として美しかった。8月は暑さに参る季節なので、この花に任せることに。

 精細なプリントに定評のある印刷会社にお願いしました。この花もきれいに色が出るといいな。庭で咲いている、カタバミ科カタバミ属の 'Oxalis Triangularis' です。日本では「紫の舞」と呼ばれる花。とても丈夫で、暑さにも寒さにも負けません。紫の三角の葉が個性的な南米産。ブローチみたいに、小さな庭のアクセントになってくれる。おそらく来年も残暑厳しい、9月を担当してもらいます。




 来週印刷が仕上がってきたら、あらためて写真を撮ってみます。グループ展の準備にパンパンの毎日ですが、到着がとても愉しみ。

 ご予約について、shopページを更新しました。どうぞよろしくお願いします。(グループ展でも、もちろん販売します♪)

7 May 2019



庭師の暦

 私はこの絵が好きです。完璧な出来ではないのですが。そして、自画自賛は褒められませんが。英国航空のファーストクラス機内誌に描いたものです。

 いつもお世話になっている、自由学園明日館。その向かって左手奥に、JMショップがあります。店内の一角に、ギャラリースペースがある。そこで小さな展覧会をさせて頂きます。

 期間は5月21日から6月2日まで。10:30から16:30、月曜日がお休み。

 Country Living で長く描かせてもらった、ガーデニングに関するイラストレーションから選んだ12種類のプリント画、そしていつの個展でも評判のいい、このBritish Airways の絵。それに最近描いている、古い西洋の手紙を使った花の小品、それから私のセレクトしたイギリスのブロカントやハバダッシェリー(小間物)も並べます。ギフト展、と言っていい企画。ぜひ観にいらしてください。

 在廊日は今のところ、初日の21日終日、それに、29日、30日は水彩レッスンがありますから、そのあと、13:30から16:30、在廊するつもりです。会場でお目にかかれますよう!



 昨日は、来年の企画も決まりました。2020年4月に、銀座ACギャラリーで個展をします。新しい作品を発表したい。気持ちも新たに、白い紙に向かいます。


3 Dec 2018




Viv さんのベレーと小さな絵

 思いがけないプレゼント。今一緒に新しいプロジェクトをプランしている、イギリス人の友人、Becky さんから頂きました。私が Viv Hen'steeth さんのファンであることを知っていた・・・にしても、サプライズ作戦は大成功! その日はうれしくてうれしくて、家の中でもずっと被っていました。自分で言うのもナンですけど、似合うんです。

 Viv さんを知ったのは、同じくイギリスの友人 Helen さんから。いつだったか彼女が気になっている女性アーティストの名をいくつか、メモに書いて教えてくれた。「Hen'steeth?」。不思議な名前だと思い尋ねると、英語の独特の言い回しだという。「めったにないもの、まるで『雌鶏の歯』みたいにね」と教わった。もちろん、雄鶏にだって歯はない。

 そのうちインスタグラムを始めた。Viv さんのアカウントを発見してフォローしたところ、びっくりするようなコメントが返って来た。私が雑誌 'Country Living' に描いたイラストレーションを、今も大事に取ってあるというのです。ここで出会えたことに、とても感激しているとも。

 11年もの長きにわたり、毎月イラストレーションを掲載してもらった Country Living は人気雑誌で、発行部数もかなりあり、イギリスはもとより世界に多くの読者がいる。同じ言葉を、有難いことに他にも何人かから聞いている。私の小さな絵に心を寄せてくれた人との出会い。どんなに有難くうれしいことか。よい仕事に恵まれたことにただ感謝です。

 当時のイラストレーションから、特に気に入っているもの、季節感のあるガーデニングに因んだもの12枚を選んで、2019年のカレンダーにしました。A4サイズを3等分した短冊形のシートのみというシンプルなものですが、先日のグループ展でも好評でした。お好みのクリップやプッシュピンで留めて使ってください。

 グループ展のあと、沼津が誇る人気古書店でありセレクトショップでもある 'weekend books' さんに、扱ってもらっています。一部1,080円。





 買いに行けないわ、という方には郵送でも受け付けています。ご希望の方は、河田まで「件名:カレンダー」とし、メールでご連絡ください。メールアドレスは、メニューバーの lesson ページにあるお問い合わせ先と同じです。お待ちしています♪




 そして、ベレーにこんなに素敵な刺繍をされる Viv Hen'steeth さんに、来年もしかしたら会えるかもしれない。実現しますように。Fingers Crossed!


3 May 2018




「きつねうどん」と心の余裕

 連休中の過ごし方。定番は庭仕事です。先日も書いたように、周囲の様子が違うので、どうも落ち着かない。そういう時は、確実に成果のあらわれる手仕事や庭仕事が、精神衛生上とてもよろしい。アレ、今日も何もしないで終わっちゃった、という間に連休も終わっちゃった、とならないために。

 と言うわけで、すでに緑のごみ袋、6つも仕上げました。この超・狭い庭でこの数。どんなに草ボーボーだったことか、想像されると恥ずかしいのですが、黄色やピンクの草の花も可愛いもので、つい先延ばしにしていた・・・というのは言い訳です。

 廊下のような狭いスペース、「蔦の細道」に敷いたレンガも、ホースの水とたわしでゴシゴシ磨いたおかげで、水彩レッスンでよく使う色、バーントシェンナみたいな赤茶色にやっと戻った。温かくなったころから急に勢いを増したアイビーも、余分な枝をカットする。

 蔦の細道(と言っても3mちょっと)の両側には、たった5本ほどの苗から増やした、この緑の葉が繁っているのです。日当たりも水はけもよくない地面には、アイビーくらい頑丈な植物でないとなかなか繁殖しないだろうと植えたものですが、季節を問わず愉しめる。花が全くない時にも、枝を切って挿すと、そこから根っこが伸びて、またどこかに植えたくなります。「我がアイビーよ永遠に」です。

 今年はバラをどうしようか、迷っています。いつだったか、青木和子さんがTVで? 雑誌で? お会いした時? ・・・忘れましたが、バラをやめたと仰っていた。バラのために薬剤を使わなくなって、体調もすっきりしたような気がすると。私も毎年、虫の退治に気が進まなくなっている。

 殺虫剤が一切いらない植物と言うのもある。紫陽花や鉄線、お隣のSさんに頂いてだいぶ増えた紫蘭などは、放っておいても美しい花が咲く。そういう手間のかからない植物、おそらくは日本古来の花々に、少しずつ切り替えてゆけたらと思う。 

 虫と言えば、昨日は椿の剪定をしました。あの「にっくき」チャドクガが卵を産む前に、急いでやった。きらきら光る新芽は美しいが、込み入った枝をチョキチョキ切り、風通しを良くしてあげた。

 チャドクガに掛かる「にっくき」という形容詞を初めて聞いたのは、庄野潤三先生のご長女、夏子さんからのお手紙でした。チャドクガの幼虫が持つ、あの無数の針のスティルス攻撃に遭った悲惨な経験が、私にもある。夏子さんが言葉で彼らに復讐してくれた。スカッとして、いまやチャドクガの「名字」と言ってもいい。

 夏子さんからは、「チャドクガにはキンチョールがいいわよ」ともアドバイス頂きました。剪定後も念のため、定期的に「ハエハエカカカ(チャドクガも)」を吹き付けなくてはいけません。

 庄野先生の物語の中には、夏子さんがたびたび登場され、読者には weekend books の美和子さんのように、夏子さんファンがとても多い。大掃除や木の剪定に、先生と奥さまの暮らす山の上のお家へ夏子さんは行かれる。一仕事終えてお昼時になると、奥さまが夏子さんの好物、きつねうどんを作られる。


    お昼は、妻は長女の好きなさぬきうどんの
    きつねうどんを作って食べさせてやる。
    長女よろこぶ。

           『けい子ちゃんのゆかた』より

 
 このシーンが大好きで、何度も読み返してしまう。読むたび、私もきつねうどんが食べたくなる。で、庄野先生ご一家のひそみに倣い、昨日のお昼、作りましたヨ。きつねうどん!


 


 食べる事と言えば、大好きなお二人の、新しい料理のご本が出版されています。

 左は『旬の野菜でシンプル・イタリアン』。 今まで忘年会やオープニングのケータリングで何度もお世話になっている、東京小石川にある「シンプル・リトル・クチーナ」オーナーシェフ、佐藤夢之介さんの初めてのご本! 先日の個展でお祝いにと、新刊情報をキャッチされた永田ヒロ子さん、京子さんから頂きました。

 夢之介さんは、お肉や卵を使いません。チーズ以外の乳製品も使いません。「なのに物足りなくない、お肉好きも大満足の美味しいイタリアン」。この帯の言葉の通りです。本の中で夢之介さんが語る、お料理や素材への真摯な言葉も素晴らしい。世に出るべくして出た一冊。ファンとして、本当にうれしく思います。

 右はNHK「あさイチ」にレギュラー出演でもお馴染みの、料理家であり、スタイリストであり、キッチンツールのスペシャリスト、野口英世さんのご本、『フライパンクックブック』です。光栄にも、親友の京子さんと一緒に銀座の個展にいらしてくださった、野口さんご自身から頂戴しました。

 さっそく大好物の焼きそば、「上海風の海鮮焼きそば」から作りました! おーいーしーー! また作りたい。すぐにでも。

 ドイツ製、鉄のフライパン 'turk' を使われてのご本ではありますが、うちの Vita Craft のフライパンでももちろんオッケー。

 野口さんは、TVで拝見するときと、直にお目にかかったときのギャップが何もない。いつも自然体。飾らないお人柄が、よいお仕事を次々生むのだと思います。

 昨秋から、介護と仕事と家事で、脇目もふらず前のめりに突っ走らざるを得なかった私ですが、やっとお料理にも少しずつ心が向かうようになってきた。この素敵なお二人とのご縁に感謝して、久々に新しいお料理にも挑戦したくなってきました。

 

5 Feb 2018




沼津クラス、グループ展のお知らせ

 今日も寒いですねー。この間GUで見つけたフリースの白いロングカーディガンがあって、これを一日中手放せません。鏡を見ると、ミシュラン坊や的な自分。宅急便屋さんにどう思われてもいい。だって寒いんですもの。

 そんな中でも早起き習慣は続行中です。ただ3時はやはり極端でした。4時にしました。一仕事の後、日が昇り、家事をする。今朝はゴミ出しのままそのあたりを一巡り。お稲荷さんに手をあわせてきたら清々しく、延ばし延ばしだった金柑の木の剪定をやっつけました。ヒヨドリやメジロがやってきますが、ヒヨは力があるから実を落とす。隣家に迷惑だったと思います。

 45リットルのごみ袋2つ。他にもやっつけるべき木が二本ありますが、今日のところはこのくらいで(自分を)勘弁してやろう。

 さて今日の本題です。グループ展の話。一年半に一度のペースで、東京、沼津共にお教室の展覧会を開催しています。歳をとってきたのか、一年半が一年くらいの感覚になってきましたが、「半」とすることで季節が変化するのがミソです。

 沼津のグループ展、前回は一昨年の11月、晩秋の頃でした。手紙をテーマに行いました。Gallery PLAZAは旧東海道の三島宿の中心、商店街に面したみしまプラザホテルにあるガラス張りのギャラリーです。信じられないほど多くのお客さまにご覧いただき、連日の大盛況に感謝、感謝でした。

 今回は明るい春。「ファッション」がテーマです。

 ファッションと言っても、「ハイ・ファッション」ではありません。例えば靴、例えば帽子、例えばボタン、例えばテキスタイルの図案、例えば昔のドレス…という風に、お洋服に関わる何かを作品の主題にしています。

 いつものように、メンバーそれぞれが工夫を凝らしたオリジナル作品。おもちゃ箱をひっくり返したような、愉しさと明るさのあふれる展覧会にしたいと思っています。よかったらぜひ足をお運びください。


 案内状、いつものデザインと一味違う感じに仕上がりました。まずドローイングでチョッキ(ベスト、ウェストコートとも言いますね)を描きました。そこにバッジをいっぱい。みんなの作品の部分です。

 このデザイン、ワードでやっていると言うと、皆さんビックリされます。私のお願いしている印刷会社さんでは、ワード入稿ができるんです。助かる。




 ↑をクリックして、詳細をご覧ください。搬入までほぼひと月。引き続き、早起き&追い込み頑張ります!

 追伸: 東京クラスのグループ展は、本年10月末から11月にかけて。こちらも4月くらいから、ボチボチ準備と行きましょう。


9 May 2017



私のホリデイ

 皆さま、5月の休日はいかがお過ごしだったでしょう。

 黄金週間とは言え、10人いたら3人ぐらいは仕事だったと思うし、私のような者はこの仕事を始めた頃からずっと、世の中の休日とは縁がない。

 とは言えご近所の気配もどこか違うし、なにより毎年好天に恵まれる確率の高い一週間です。朝の目覚めもいいし、一段と長くなってきた日が暮れるのが寂しいし、仕事が手につかず気もそぞろな毎日でした。

 と言うのも昨年、庭仕事の役目が次第に自分に移ってきたのをいいことに、思い切って小さな庭(桐原春子さんの言葉を借りると、猫の額より狭いまさに「猫の鼻」)に、芝生の種を蒔いた。ターフを敷くほど広々とした場所ではないので、種がいいと思った。それがうまく根付いた。庭への思いがぐっと高まっているこの頃なのです。

 寒さに強く、冬も青々の西洋芝。春の始まりとともに多少ハゲていた部分も埋まってきて、ヨシヨシです。自分的にはすごくいい感じ。あくまで自分的にで、世の中的素敵なガーデンとは程遠いのは自覚しています。でもどんなにささやかでも、庭づくりは愉しくてうれしい。

 芝刈りは、リョービのバリカンで30分もかからない。地面だったときに草取りをするよりずっと楽です。頑なな地面派だった家族も、初夏の日差しとグリーンが気に入った様子です。




 ところでこの写真を Instagram にUP するんで、「木漏れ日」の英訳を調べたら、無い、と言うことを知りました。一言で木漏れ日を表現する言葉がないのです。

 こんな風に、あらゆる言語には、他の言語で表現できない言葉と言うのが多数あると言います。一時話題になった「もったいない」もそうですね。そういう言葉ばかりを集めた絵本があるそうだから(これも Instagram で知りました)、こんど読んでみたいです。




 バラは3種類育てています。↑はロサ・ムタビリスという中国の原種。ひと重の簡素な花が、様々な色で目を愉しませてくれる。今年は白い花も咲いています。淡いサーモンピンクは2日目には深紅に変わる。見ていて本当に飽きません。




 数年前に、芝と同じく突然思い立って敷いたレンガも、味が出てきました。特に日が陰った日にはイギリスを思い出します。というか、そのために敷いたのです。小さなテーブルと椅子で夕方お茶をすすります。ターシャ・テューダーさんの影響です。ターシャさんは4時かっきりに庭を眺めながらポーチでお茶を召し上がったそうで、そのとき「ただ生きているだけで幸せ」と思うのだと、TVで仰っていた。なんて素敵な習慣でしょう。ただ生きているだけで幸せ、と思える幸せ・・・。
 




 今ほかに「猫の鼻」に咲いているのは、ワスレナグサとワイルドストロベリー、マリゴールド、テディベアという名のバラ、紫蘭とスズラン、それにまるふく農園さんのレモンローズゼラニウムです。テムズの川岸に打ち上げられたような、傷だらけの古いインク瓶が、どの小花にも似合います。




 猫の鼻ならぬ、小さくて細い猫のヒゲくらいのキッチンガーデンも、現在進行中。ゴールデンセージ、オレガノ、パセリ、大葉が今のところのメンバー。バジルも植えなくちゃ。↓の赤ちゃん苗は種から育てているコリアンダー。近い将来仲間入りします。




 懸案だった椿の木の剪定も、憎っくきチャドクガが襲来する前にと、がんばりました。葉がみっしり茂った中に鳩が巣を作っていたのに気付いたのは、かなり刈り込んでから。この間、屋根にカラスを見かけた理由はこれだったのかも。せっかく途中まで作った巣を台無しにして悪かったけれど、これで良かったのかもしれないとも思う。彼らが若いカップルで、次の巣をつくる余力が充分あることを祈りながら、私の今年の黄金週間は終わりました。

11 Apr 2017



日々

 大先輩の桐原春子さんが、「なんだかヒロさんのこと、親類みたいに思うの」と、唐突に言って下さったのは、いつだったか。お忙しい中ご都合がつくと、グループ展や個展に足を運んでくださり、また同じ市内に住む長年の大親友の方をご紹介いただいたり、ブログで私の関わるイベントを紹介くださったり、いつも感謝でいっぱいです。

 ファッションモデルみたいに長身で美人でおしゃれな桐原さんから「親類」だなんて、恐縮×100!と思いながらも、姉妹を持つ者独特の似た体質ってあるのかな・・・、なんてちゃっかりこんなところに書いてしまう私は、まったく厚かましい女です。

 その桐原さんから、新刊を頂戴しました。『ハーブ育て&活用法』。初心者でも、お庭が無くても狭くても、ハーブの種類や育て方が丁寧に説明されて、その活用法もわかりやすい。お料理レシピを見ていると、小さな庭に今年はどんなハーブを育てようと、いつも思い付きばかりの私が、アレ、少し計画的。いや違った。単なる食いしん坊です。

 お姉さまの熊井明子さんとの対談も、とても興味深く拝読しました。

 雑誌「ゆうゆう」に連載されていた記事を中心にまとめられたご本とあり、ああ、いいなあと感じます。この5年あまり家族の介助生活をしてきて、その間あった様々な大波小波の度、植物にどれだけ救われたかを思ったからです。

 辛い時でもご飯は一日3回、作って食べます。睡眠をしっかりとって安全運転。規則正しく暮らし、元気に体を動かさないと、こちらも体調を崩してしまう。しなければならない家事や仕事を横糸としたら、縦糸にいつも季節の庭仕事がありました。

 偉そうに言える庭ではまったくもってない、いかにも粗末でちっちゃな地面なのですが、レンガを敷いたり、芝を植えたりの大仕事をしたのは、いつも先の見えない不安と闘っていた時だったように思う。

 不安がふっと薄れ軽くなると、花苗を買いたくなる。植え替えをしたり、ハーブを摘んで料理に使う。そういう小さな喜びが、自分を支えてくれているのだと、今さらのように気付くのです。

 体を低くして地面の仕事をする季節が、またやってきましね。(いや、椿の剪定も待っているのだった。)桐原さんのご本とともに、今年もよい時間を過ごしたい。

 他界した友人の命日を前に、先日ご両親を訪ねた。お母さまがお花好きで、庭に咲いた花を写真に撮り、PCに取り込んで言葉を添え、ワード絵日記のようなハガキを作る。それを不定期で子供たちに送るというのを、ずっと続けていらっしゃる。ホルダーにまとめられた数えきれないその手紙を拝見しながら、こんなお母さんを持って、友人の人生は花丸の幸せだったなと、無念の向こうに明るい野原を見る思いがしました。

 


 これは、そのお母さんが作ったミニチュア椅子。シャンパンの蓋でできています。お祝い事があるたびに増えてゆく椅子。

 絵日記手紙も、シャンパンキャップの椅子も、しばらく間が空いている様子に胸が痛んだけれど、きっと少しずつ少しずつ。笑顔で見送って頂き、悲しい記憶と季節の気配が、新しい春の香りになって刻まれました。

10 Apr 2017



青木和子さんの新刊

 3月、青木和子さんから新刊『庭の野菜図鑑』を頂戴しました。今度は野菜がテーマと伺っていたので、花より野菜、果物より野菜、の私としては、とても愉しみにしていたご本です。

 以前あの美しい白いアトリエにおじゃました時、たしかこの本の「お姉さん」と言っていい『庭の花図鑑』の制作中でいらして、テーブルの上に大きな植物図鑑が置かれていたのが思い出されます。

 前作同様、繊細な色彩と博物画の香り漂う構図、丁寧に捉えられたディテイルの愛らしさ、上品なユーモア、対象を目にした作家の感動を、画集のように見入ってしまいます。存在自体が「細部」ともいえるスプラウトのページなんか、もう、もう・・・。

 前作に続き、名脇役の昆虫や小鳥たちも登場。特に、去年イモムシ「イモ子」を育てた身として、アゲハの幼虫をパセリの隣に見つけた時は、特別うれしかった。

 「この本の始まりもスケッチでした。絵を描くことはとても大事」

 添えられたお便りの中、青木さんからのありがたい言葉です。

 刺繍をなさる方にはもちろん、そうでない方にも、ぜひ手に取ってご覧いただきたい一冊です。

8 Feb 2017



日々

 お正月からずっと咲き続けてくれた梅の花。そろそろと散りだした。

 もう10年以上前に、ホームセンターで買った盆栽風の一鉢。大きくなって地面に植えていた時期もある。近所の状況が変わり日陰になり、無残にもカイガラムシにやられ、ホラーのような目に遭ったこともありました。

 剪定して大きな鉢に戻したら、今年はよく咲いた。冬の玄関を和ませてくれた。




 こちらはよく歩く道にある、立派な邸宅。裏口の扉に、いつ通っても必ず、季節の花が生けてある。

 塀から庭の様子は伺えない。四季を通して毎日何かの花が咲き、実がついているのでしょう。

 見ず知らずの私みたいな者を、いつも「そっ」と明るい気持ちにさせてくれる。この家の花人を、心から尊敬しています。

21 Sept 2016



私の夏の自由研究

 雨ばっかりで、皆さま、体調はいかがですか?

 気分が多少どんよりはするものの、頭痛などは起こらない私でも、この雨のせいで悩まされていることが一つ。今年の夏の自由研究、「芝生を育てる」がまさに水泡に帰すんじゃないか・・・と、気が気ではありません。

 「茶色い地面派」の家族をそれとなく説得し、初めて西洋芝の種を蒔いてみたのです。この貧弱な庭に芝が育つのか、いまいち確信が持てないため、安上がりの種作戦。

 蒔いたのは8月はじめでした。まずは土を掘り返し、ほんとは少なくとも深さ15センチは耕すこととあったんだけど、ズルして10センチくらい。そこに肥料を混ぜ込んで、種をぱらぱらと蒔きました。

 さすがイネ科だけあり、目ざといアリたちにずいぶん横取りもされましたが、3日ほどで可愛い芽が出始めた。うれしかった。お日さまの黄色い光を浴びてすくすくと順調に育つ。いい感じです。何度か上のほうを刈ってみたりもした。そうすると枝葉が出てくるらしいので。ひと月したら液肥がいいと読めば、その通りにして大事に育てていました。この調子この調子と安心していた。

 ところが台風や雨が連続し、まだひ弱な葉っぱたちがところどころぺちゃんとなってしまった。それでも日が差せばいくらか立ち直るんだけど、またまたこれでもかの雨攻撃。しかも強雨で、天気予報の連続傘マークがまったくもう!って感じ。がんばれ、西洋芝!

 しかし昨日のような大雨の日には、イモ子ことキアゲハ嬢は、どんなところで雨宿りしているのでしょう。
 

6 Sept 2016



季節のうつろい

 9月に入っても、まだまだ蒸し暑く、ご近所さんと行き会えば、そんな会話をいつまでも飽きずに繰り返しています。それでも季節の時計は、間違うということがない。新生姜の季節です。JAの直販所で一束買ってきて、お昼にお味噌を付けて食べました。辛い。残暑にしおれていた背筋が、シャンとしました。

 根生姜も直販所では安く手に入る。今までは、ある料理家オススメの方法、台所の棚に掛けたカゴに入れて保存していたのですが、カビが生えない代わりにすぐ乾燥してふにゃふにゃになってしまう。もったいなかった。料理家の人ほど、消費のペースが速くないのが理由だと思う。

 インターネットで調べると、瓶やタッパーに水を張って、そこに洗った生姜を入れ冷蔵庫へ。数日おきに水を替えていればひと月も持つのだとか。まだまだ知らない知恵がいっぱいあってうれしい。さっそく試しています。うまく行きますように。




 若い頃に読んだ、画家の有元利夫さんの本のなかの「配達される才能について」というエッセイに、家の中の5か所ほどに必要最低限の絵を描く道具を置いていた、という話があります。それを思い出したのは、台所でも絵が描けるように、上のような絵具箱をテーブルのすみっこにセットした後でした。

 無意識にでも有元さんからの影響を、かれこれ30年くらい引っ張っていた自分が、物持ちのいいおばあさんみたいで可笑しくなります。

 有元さんは、「自分を信じていない」と書かれている。画室に行かない限り、自分は絵を描かない人なんじゃないか、と。それでパンケーキの水彩絵の具と水入れを5セット、家中に置いてあった。

 それを聞いて、友人が反論する。

 「それは一種の不信感かもしれないけれど、もっと大きなところ、レベルの違うところでは信じているのではないか。・・・いつも受け入れ態勢を整えておけば、必ず『天命』は来ると信じているだろう」

 そう詰め寄られた有元さんが、「まあね」と答えるしかなかったとあるのもいい。それを自分の「開き直り」と締めくくっているのも、恐れ多いけれど共感します。

 この『女神たち』と言う本、もう一度読み直そう。
 



 さて、前々回のブログに書いたイモ子のその後です。一昨日、とうとうこのような美しいお姫さまに生まれ変わりました! 朝起きて、すぐに発見しました。羽化後間もなくと思われます。

 目の当たりにすると、こんなにも感激するものなのですね。幼い頃に観た蝉の羽化以来。その「瞬間」に立ち会えなかったのは残念ですが、はらぺこムシャムシャ芋虫だったあのコが、と思うと、魔法を掛けられたような思いと親心みたいなのがないまぜになって、たまりませんでした。

 1時間ほどこうしていたでしょうか。少し目を離した間に、どこかへ飛び立った。その時のロス感と言ったら!

 でも昼過ぎに花の水やりをしていると、ものすごい活発に飛び回るキアゲハが一羽。ああ、挨拶に来てくれたのか、または羽化ポイントからそう離れることなく活動する習性なんでしょうか。とにかくうれしかった。

 インスタグラムにアップしたら、この夏4羽も羽化をさせた方がコメントを寄せてくださった。来年は私もやってみようかな。夏の間は山椒の木に、いつでも幼虫がみつかりますから。パセリの大鉢を準備して・・・。


28 Aug 2016



「わからないこと」

 こーゆーものが苦手な方のために、小っちゃくUP。まあまあイケると言う方は、クリックで大きくしてご覧ください。

 鉢植えのイタリアンパセリが、アレレと言う間に芋虫・イモ子に食べつくされてしまった。ご覧の通り無残な姿に。最初は腹が立ったけど、むしゃむしゃ食べてる姿がけなげで可愛かったし、一日で2倍くらいの大きさに成長する新陳代謝のスゴさにもビックリ。そしてある朝発見の、この新たなステージにも感動です。

 細い細い糸が2本。たったこれだけで、頑丈そうなこの緑のカプセルを支えているということに、まず驚く。どうやってこんなに繊細な糸を繰り出したのか。あの、毎日毎日、ただパセリを食べて大きくなるしか能の無かったイモ子が。

 そしてイモ子時代最後のメッセージ(?)、落し文ならぬ落としフン。正露丸のような黒丸が見えますか? 軒下の植木鉢の西側側面。ヨシ、ここなら、という思いだっただろうか。

 ふにゃふにゃの身体から、このかっちりした蛹へ。そして中では何ごとが? 神秘です。

 わからないことをわからないままにしておくことで、なんだかほっとするときがある。心や身体がふんわり健やかになる。そんな「わからないこと」との出合いを、大事にしたいなと思う。

 (見ればパセリも人が好く、イモ子を恨むでもなしに、すでに新しい芽を出しています。)

 さて、じっくり段取りを経て進化する蝶の一生を、私も少し見習わなくては。若い姪たちのしゃべり言葉、「ムリ」・・・の影響か、はたまた「わからないこと」を大事にし過ぎたか、諦めが早過ぎた。プロバイダーの説明をよく読んで試みたら、ちゃんと Website の更新が出来ました! いつまで続けられるか、それこそわからないけれど、もうちょっと頑張ってみようかな。

 Lesson ページも生き返りましたから、詳細を記す「9月の黒板」、近々更新いたしますね。お騒がせいたしました!

30 Jul 2016



早起きして庭仕事

 先日の青木和子さんとの対談で、青木さんがお庭のお花を「好きな色ばっかり」と形容されていたのが印象に残っています。形よりなにより、「まずは色」ということなのかと目からウロコでした。確かに色はまず目に飛び込んでくる「個性」ですから、絵を描くときにも最重要課題。にもかかわらず、さて何を植えようかと考えるときに、色から入っていなかった。種類から入っていた。

 ご近所のTさんは、生垣の外側の通り沿いに細い花壇を設けて、いつも道行く人を愉しませてくれている。こぼれ種で自然と生えてくるものもあるそうですが、ひとつの季節が終わるとすぐ別の苗を植えられて、その細い花壇を放っては置かない。日当たりもよく、ディスニー映画の「不思議の国のアリス」に出てくる花たちのように、植物の陽気な囁き声が聞こえてきそうです。

 ベニシア・スタンリー・スミスさんの番組で、親友の方がベニシアさんを評し、ひと言「働き者」と。買い物から帰ってきて、普通ならお茶でも飲んでひと休みするところを、ベニシアさんは手際よくパパッと買い物を定位置に片づけ、すぐに庭に出て「草引き」をする。「働き者です」と。思いがけず親友に褒められ、どうしていいかわからないような不思議な表情に固まってしまったベニシアさんが、また素敵でした。

 初めて庄野潤三先生のご自宅にご招待いただき、伺った日のことは忘れられません。門を入ると幾段かの石の階段があります。そこに明るい鉢植えの花がポンポンポンポン・・・と置かれていて、ご挨拶の前から、「ようこそ!」とほがらかなお声が聞こえてくるようでした。どんな景色かしらと思われる方、2014年に出版された先生の小説選集『親子の時間』(夏葉社)の表紙をご覧ください。和田誠さんの描かれたその絵が、写真以上にその通り!です。

 一方、ご長女の夏子さんのお庭は、私にとって憧れ中の憧れの園。ゆるやかな、芝生ではなく苔の緑(というところがたまりません)のスロープに、自らDIYで造られたというレンガの小路やワイルドなブランコにハンモック、ニワトリ(ソトトリ?)小屋。そしてログキャビンまで! 木々にはムササビも来訪するという、広くておおらかなお庭です。

 また、永田ヒロ子さんがくださるハーブや小花をおしゃれにまとめられたプレゼントには少女の心がトキメキますし、埼玉県毛呂山町で立派なバラ園、「グリーン・ローズガーデン」を公開していらっしゃる斉藤よし江さんのことは、ただただ尊敬。イギリスの友人たちの庭、インスタグラムでフォローしているガーディナーの方たち、そのスピリットからも影響をもらうことができる。
 



  広いお庭、緑の指の持ちあわせがない私でも、小さな地面で土いじりをしていると、呼吸が落ちつき、体調がよくなる実感があります。先輩たちを見習って、まずは早起き。そして毎日小さな手入れをするのを日課にしよう。そういうささやかな習慣こそが、生活全体に好い影響を与えるのだという思いがスナオに湧いてくる、まだいくらか涼しい夏の朝でした。

 event のページに、ワークショップのお知らせをUPしました。よろしければご覧ください。10月に、明日館で↓こんな作品を作ります。お申込みをお待ちしております♪