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13 Aug 2026

 



真夏のクリスマス

 先日イギリスからサプライズな小包みが届きました。友人のBさんからです。つい先日、オンラインの会話の中で話題になった本を、どんと4冊も送ってくれました。 

 すでにシリーズの1冊は今年のはじめに頂戴していたのですが、その表紙が何とも素敵でそんな話をしたところ、「じゃあ送るわ!」と。まさかこんなに速攻でとは思っていなかった。マジック! まさに「盆とクリスマスと正月」気分! ありがとう、Bさん!

 ヴァージニア・ウルフのことは、この間もここに書きました。この素晴らしく美しい表紙のペーパーバック・エディションは、Penguin Random House 社から 'Vintage Classics'  として出版されているもの。Aino-Maija Metsola というフィンランドのアーティストの手によるこの抽象に、すっかり魅了されています。




 この5冊のうち、4冊は翻訳を持っています。原語でスラスラ読みたいところですが、自分の拙い英語力では「無理、無理~」のムリさん。翻訳本と照らし合わせながら、せめてウルフの選んだ言葉の質を、ポツリポツリとかみしめて行きたいなと思います。




 こちらは以前、やはりイギリスの友人Hさんが贈ってくださった少し大判のペーパーバック。ウルフの日記です。これもチョイスされた日記に少し違いがあるものの、みすず書房の翻訳を古本で持っている。同じように愉しんでいます。

 ペーパーバックは日本の文庫本のようなもの。干し藁のような匂いが好き。「え、紙袋じゃないの?」。中学生の頃、この単語の意味をビートルズのヒットソング 'Paperback Writer' で知ったのも、懐かしい思い出です。

26 Mar 2025



これで安心

 眠れなくて困るということは、滅多にない。たとえ就寝前にコーヒーを飲んでも、コトン。瞬く間に眠りに落ちる自信があった。余程の心配事がない限り、ここまでそんな具合に生きてきました。

 ところが先日、夜中の2時半ごろ目が覚めて、そこからまったく眠れなくなってしまった。同年代の友人たちも口をそろえて言うのは、最近夜中に必ず一度目が覚めてしまう、という傾向。でもすぐに二度寝が出来るのよね、と。自分もそうであったのに。

 30分ほど本を読んでみる。睡魔は戻らなかった。翌日は予定が一杯で、車の運転もしなくちゃならないから「寝なくちゃ、寝なくちゃ」。焦れば焦るほど眠れない。昼間遭遇した、小石川植物園の樹齢300年の巨木、大クスノキのパワーにヤラレた・・・のかもしれない。

 かすかに残っていたパチョリというエッセンシャルオイルの小瓶を枕の上で振って振って、微かな香りを吸い込んでやっと眠れました。やはり効くのだと確信する。

 パチョリはインド原産のシソ科ハーブです。他の精油とはかなり違う、土臭い重たい香りで、初めての人は最初抵抗があるかもしれない。でも慣れるとなんとも不思議な魅力で、この香りさえクンクンすれば気持ちが平静になり、少しずつ重力に素直になって、気付けば夢の世界なのです。少なくとも私は。

 精油は濃厚なものなので、誰にでもおすすめはできません。体調にもよるし、妊婦にはとくに注意が必要ですね。原液よりは、薄めてスプレーボトルに入れるべし、とずっと思いながら、ここ最近は必要無かったので後回しになっていたけれど、今回のことがきっかけで、やはり調達してみました。

 Covent Garden の NEAL'S YARD は、30年前、ロンドン時代の懐かしいお店。そこの基礎化粧品なら安心だろうと、一揃い求めて使っていました。エッセンシャルオイルも、入浴剤の代わりにしたり、ポプリに使ったり。空気の乾いたイギリスでは匂いに敏感で、どの家にお邪魔してもいい香りがしたのを憶えている。

 ネットショップでバチョリの精油を取り寄せている間に、薬局で無水エタノールと精製水を準備した。スプレーボトルも用意。作り方を検索し、分量を量って、あっという間にルームスプレーができました。買い置いてあったラヴェンダーでもひと瓶作った。

 ラヴェンダーはスタジオに。エアフレッシュナーとして仕事の気分転換に使おう。パチョリは寝室に。枕にシュッシュとする。重厚な香りがマイルドになって、丁度いい。

 NEAL'S YARD には、程よく調合された就寝用のアロマスプレーもあり愛用しています。寝る前読書の時間が、まるで夜のハーブガーデンにいるよう。平和な香りに包まれ、一日を穏やかに終えることが出来る。'Goodnight Pillow Mist' という小瓶です。

14 Oct 2021

 


わたしの一日

 英国のロックバンド、The Who の名曲に '5:15' というのがあるけれど、これはまさにその時間の写真です。同じ薄暗さでも、夕方とは違う朝の雰囲気が伝わるでしょうか。

 ロンドン暮しのはじめ、1年間下宿させてもらった親しい友人の家では、玄関にキャンドルを灯すのが習慣だった。玄関を入ると廊下があってその壁際に、当時はアイアンのキャンドルスティックが取り付けてあった。地震国の出からすると、アンビリーバボーな景色です。

 夕食のテーブルにも、四季を通じてキャンドルが灯った。夏は庭で夕食をした。庭の木にキャンドルが提げられた。すべての家がそうするわけではない。友人はキャンドルの温かな灯を好んでいたのだ。

 すっかりその魅力を刷り込まれたので、私も向こうで一人暮らしを始めてから、キャンドルを切らすことはなかった。しかし帰国後はそうはゆかない。ちょっと寂しい思いがした。

 だから何年か前に、ニトリでこのLEDキャンドルを見つけた時は、うれしかったな。本当は細いテイパータイプが欲しいけれど、贅沢は言えませんよね。先日の地震も怖かったし。これは単三電池で使えるので、充電式の電池で、毎晩、毎朝、灯しています。もちろん本物とは違うけれど、better than nothing。ないよりはマシです。

 


 さて、朝起きて偽キャンドルを灯したら、台所で水出しの緑茶を温めて2杯飲む。そしてごく簡単な朝ごはんを食べます。

 しっかり作ってみたり、作らなかったり、お茶漬けだったり、パンだったり、おにぎりだったり、ある期間続けると飽きて別なパターンに変わってゆくのですが、とにかくとりあえず、なるべく早くお腹に何か入れることにしている。それが身体にいいとどこかで読んだので。

ふたつの薬缶にお湯を沸かし、一日分のコーヒーとルイボスティーを淹れます。コーヒーは豆乳カフェオレ。牛乳は飲まない。パンはスーパーで必ず手に入るパスコのマフィンかクロワッサンでいいんだけど、ジャムは冷凍のラズベリーで作った自家製に限る。パンに付けるのに、ラズベリージャムほどおいしいジャムは他にないと思う。

 年齢を重ねると、自分が好きなこと、必要なことが、よりはっきりしてくる。四の五の言って迷ってる時間も余裕もない。もう、これとこれとあれとあれがあれば私は幸せ、という気持ちになってくる。(その、あれとかこれが、結構欲深いという事情は置いといて。)

 とはいえ、断捨離とは無縁で、仕事部屋の棚はご覧の通り。細かいコレクションでいっぱい。この小さきものたち全部が、私を元気にしてくれるから、とても整理などできません。




 この部屋で、今日も愉快なオンラインレッスンを行なうことが出来ました。あっ、必要!と思うと、参考資料を出したり、オブジェをご覧に入れたりできるんで、愉しくてたまらない。これでPCの画面越しに、「はい!」と素材を渡せたら最高なんだけど。冗談を言ってみんなで笑う。

 さっき生徒さんのおひとりがLINEで、今日のキーワードをフィードバックしてくれた。


    今日はムード、リズム、説明しすぎない、
    古いものは完璧でないのが面白い、パンクな作風、
    がノートに書かれました。

    さらに「ムードが無形の記憶」だなんて、なんて詩的!


 ノートに走り書きしてくださっているのだ。こうして手ごたえとともに講座が行えた日は一日が充たされた思いがするし、脳も活性化される。ありがたくてありがたくて・・・、ありがたい。




 そしてまた日が暮れて、夜になる。今夜もぐっすり眠って、また明日も5時15分に一日が始まります。

6 Aug 2021

 


続・類は友を呼ぶの法則 その1

 英国の刺繍作家でデザイナー、スタイリストでイベントプロデューサーでもある Caroline Zoob さんのことを知ったのは、今から20年ほど前の雑誌、Country Living の誌面でした。当時私はこの雑誌の仕事を始めて3年目。ロンドンから日本に帰国することになり、アートディレクターのヘレン・ブラツビーが、これから私の絵をどうやって使ってゆこうかと考えあぐねていた頃だと思う。なのでこの号に私の絵は掲載されていない。

 その後、当時はまだFAXだったけれど、やり取りを続け、フェデックスで作品を送ることになり、11年も仕事を続けることができた。ヘレンには今も感謝している。

 とにかくこのCaroline の、明快で澄んだ、どこか音楽的なセンスを感じる作品群には一発で参りました。特に、ミシンのボタンホールステッチでアップリケをするテクニックがスタイリッシュでありながら温かく、完全にノックアウトされた。

 その数年後、長期滞在した際には、彼女のグッズを扱うショップがロンドンのクラッパム・ジャンクション駅付近にあるとどこかで読み(当時はスマホはおろか、PCを持つ人もまだ少ない時代)、当てずっぽうに訪ねてみた。でも内装工事中で、お店はお休み。Carolineデザインの愛らしいマグカップを、内装職人の肩越しにうらめしく眺めたのを覚えている。

 滞在中スコットランドに旅した時に、たまたま入った書店で新刊 'Childhood Treasures' が目に飛び込んだ。迷わず手に入れた。





 そんな風に憧れのデザイナーであったCarolineさんと現実にご縁を得る機会を作ってくれたのは、東京で偶然私の個展を見てくれて以来の親しい友、Helenさんだ。

 帰国後ほどなくして、私が毎年個展を開かせてもらっていた麻布十番のギャラリーは、通りに面したガラス張りの広々とした明るいギャラリー。ここでは本当に多くのよき出会いに恵まれた。

 Helenさんはその日、ギャラリーの前でアメリカ人の友人とタクシーを降りたそうだ。「あら、あなたの好きそうな展覧会をやっているわよ」。友人に促され、ふたりで会場に入った途端、Helenさんはビックリした。母国で見慣れた小さなイラストレーションが、会場いっぱいに飾られていたから。Helenさんは、私のCountry Living での仕事を、切り抜いて取っておくほど気に入ってくれていたそうで、まさか遠い日本で、このイラストレーターの絵を観るなんて、想像もしていなかった。

 眼をまん丸にしたHelenさんと会場で話をし出したら、他にも「えっ!?」な偶然が重なっているのがわかり、けっして大げさでなく、これは何か運命的な出会いかもしれないと、お互い感じざるを得なくなった。

 それからもう十数年は経ちますが、遠く離れても途切れることなく親しい関係が続くのは、寛大で優しく、知識豊かでありながら、日本人以上に慎み深いHelenさんのお人柄に、私が多くを学んでいるからだと思う。それからもうひとつ大事なこと。共通のユーモアのセンス。これって友情に不可欠なエッセンスだと私は常々思うのですが、どう思いますか?

 脱線しました。急いでひとつふたつみっつ、駅を飛ばしますと、Helenさんは、なんとCarolineさんと友人であったのです! Carolineさんに会えるかもしれない!!

 このご縁には、もともとHelenさんの紹介で仲良しになった、日本在住のBeckyさんの助けもとてつもなく大きかった。Helen さん、Becky さん、二人のおかげで、私たちHACの有志で敢行した二年前の英国アートツアー(代理店に頼らず、ベッキーさんとゼロから計画を立てた、滅多にない手作りの旅)の際、なんと、Carolineさんのワークルームで、ワークショップの交換をすると言う、みんなして一生の思い出に残る素晴らしい交流を刻むことが出来たんです。ミラクル!!

つづく



 短く枝を切り戻した株から、この暑さにもめげず、フォックスグローブが短くけなげに咲いています。刻々暑くなってゆく朝の草取りも、この子たちのおかげで心穏やかに。

2 Aug 2021

 



ワクチンを打った日

 「しずてつ」というスーパーが沼津駅前のビルと隣の長泉町にあり、今までも時々行っては美味しいものを物色するのが至上の喜びだった。新店舗が、今までより少し車をとめやすく、また少し行きやすい場所にオープンしたので、足しげく通っています。このスーパーには魚河岸寿司という寿司店が入っている。↑のにぎりなど、ワンコインとは言わないまでも、ほぼその感覚で購入できるので、買ってきては好きなお皿に並べて、目もお腹も大満足。本当は毎日でもいいくらいお寿司が好きです。よって、この地に暮らすことは、大きなメリット。




 このスーパーは野菜が美しく、それも魅力です。そもそもはACギャラリーでの「菜画展」をご覧くださった花森家具のNさんが教えてくれた。画題にしたくなる新鮮な地元の野菜が、目に鮮やかに陳列されている。

 今日はまずこのスーパーに保冷バッグを携えて出掛け、夕飯用にと父のお弁当と自分用キーマカレー&ナンを購入してきた。なぜなら、第一回のワクチンの日だったから。万が一、夕飯どころじゃなくなったら困る。念のため、手のかからない食料を調達しておいたのです。

 打ち終えて、もう何時間も経つけれど、幸い副反応はない。熱も出ない。ありがたい。

 市の運営する巨大なイベントスペースには、整然と導線がめぐらされている。市の職員の方々か、スタッフも親切でキビキビと働いていた。同世代の男女の列は、まるで大規模同窓会。問診のドクターも、プスッと痛みのほとんどない注射を一瞬で打ってくれた看護婦さんも優しかった。待機時間の15分をサクサクと終えて帰宅しました。

 出掛ける前に観たTVでは、ワクチンを打ってももはや決定打の解決にはならないということが米国で分かったとかで、今から打つ身にはちょっとがっかりではあったけれど、やっぱりこれは長丁場になるんだなと気を引き締めて腕を差し出してきた。 

 この間も書いたように、コロナ禍の中にあって、以前よりイギリスの友人たちとの距離が縮まり、オンラインで親しく日常の会話をするようになった。みんなもうとっくにワクチンを終えている。あなたはいつ?と訊かれるたび返事に困った。日本はすごくしっかりした国のイメージがあるけれど・・・と言われると、さらに困った。

 ロックダウンについては、この日本で人々が考えるような生易しいものではなく、その様子に接するたび、ショックを覚えた。

 まだ厳しいロックダウン下だった頃、ある友人からうらやましそうにこう言われた。

 「それでも日本ではスーパーで買い物ができるんでしょう?」
 「食料品、生活必需品はすべてデリバリーなの。もう1年も買い物に出かけていないのよ」

 またある時には

 「もう一年以上美容院に行っていなから、自分でやってるの。かなり上達したわ」

 別の友人は、ご主人がカットしてくれると言っていた。

 友だちは勿論、近所に住む家族や孫とも一切会えない。または玄関前で距離を取って会う。家には入れられない。迎えるには、様々な証明書が必要になる。人のいない早朝や夕方に散歩をして、体力を維持する。息子さんの結婚式は延期、また延期・・・。

 ロックダウン全面解除の少し前、ようやくのこと、友人夫婦は息子さんと花嫁さんの結婚式を催すことが出来た。コッツウォルズ独特の石造りの納屋を改造した素晴らしい会場だったそうで、はちみつ色の夢のような景色を想像せずにはいられず、うっとりする。人数を抑えマスクをして、それでも親類や友人たちを呼ぶことが出来、泊りがけで数日間に及ぶお祝いの儀が愉快に行われたという。その話をZoom meeting で聞きながら、別のイギリスの友人が胸を押さえ、涙ぐんでいた。「よかったわね、ほんとうによかった・・・」言葉を詰まらせた。

 その姿を見て、ハッとした。ロックダウンの厳しさを、会話やニュースから知ったようなつもりになっていたけれど、本当には分かっていなかったんじゃないか。自分の口から出た「よかったわね」に相応の重さはなかったことに気付く。軽かった。自分が恥ずかしくなった。

 TVで最近、ロックダウンと言う言葉が、専門家からチラチラ聞こえてくる。私の住むこの国は、どこに向かっているんだろう。

 オリンピックのTVに映る、この禍を共有する地球の仲間たちの様々な顔、顔、顔を見る。特殊な鍛錬を経て、人知れず耐え忍んで、自分を追い込んで、技術を磨いた超人たちの首にメダルが輝く。一方で、私たちみんなの胸にも金メダルを!と思ったのは、私の手から、小さくて素朴な貝がらのメダルが生まれたから。

 室内で気分を上げる小さな何かを、小さな脳内でああでもないこうでもないとこしらえながら、心は常に窓の外へ解き放たれていたい。人類の英知を信じて進んで行くしかない。




Dream a Little Dream

 8月のアートクラスのために、サンプルを作った。もう今日から8月。やることが遅いぞ、自分。足りない材料は明日の発注。どうか最初のオンライン受講メンバー、Tさんの日に間に合いますように。

 ・・・と言う風にいつもギリギリにならないと腰が持ち上がらない。今月は特に、迷走しまくった。それでもこうして、自分がどうしても欲しいもの、ご紹介したいもの、「よし!」と思えるものに行き当たったのだから、感謝です。

 いつもHACのための課題を考える時、自分の中でいくつかの基準があります。


 1.素材が人数分集まるか?(これは大事)

 2.自分が飾りたいものか?使いたいものか?一緒にいたくなるものか?(自分がすごくいいと思ったものなら、10人中10人ではなくても、きっと誰かに伝わるという信念のもと)

 3.今までやったことの無い、初めての試みか?

 4.季節感のあるものか?

 5.時間内に説明可能か?

 6.その後の創作に生かせる内容か?

 そして、

 7.ロンドンの LIBERTY の陳列棚にあっても、不自然ではない質を持っているか?

 
 イギリスにいた頃、大好きでよく行ったデパート、LIBERTY。一昨年訪ねた時は、あいにくなのか、たまたまなのか、商品をあまり愉しめなかった。ザンネン。でもあらためて建築の面白さを味わい、板張りのギシギシいう床を踏みしめながら、そこでの記憶を反芻するだけでも幸せだった。

 私のグリーティングカードが売られていたのを教えてくれたのはミリアムだったなぁ、とか。急いで見に行って、うれしさのあまり、何度も何度も棚の前を行ったり来たりしたことなど。イチジクの香りの香水を買ったこと。ペーズリーの柄のスカーフを買ったこと。気に入った洋服にもいくつか出合った。

 その憧れの LIBERTY の売り場に「もしかして、あってもいいかも!」と思える何かを生み出すことが、厳しい条件でありながら、自分的にはすごくわかりやすい基準なのです。アイデアはポンと出て来ることもあれば、今回みたいに右往左往迷走してしまうこともある。

 今日やっとこさ仕上げたのは、貝殻の Ring Dish 。結果的に、先月のボタンの指輪からバトンタッチみたいになりました。これがまたまた気に入っちゃった。明日も忙しい。そろそろ寝なくちゃ、なのにうれしくて、さっきから手にとっては眺めニンマリしているところ。




 みんなにも気に入ってもらえますように!

10 Dec 2020

 



小鳥たちのために

 小鳥を描きたいという生徒さんに言うアドバイスは、小鳥じゃなくて木の葉を描くような気持ちでまずは形を取りましょう。それから、お顔のこと。特に目の描き方。小鳥の目は本当に愛らしいから、ドギツクならないように。あるちょっとしたヒントをお伝えします。足の踏ん張りの描写も、加点の高い技。

 上の絵は、イギリスで幸運なときにだけ見かけるブルー・ティットという小鳥です。ご覧のように、青い帽子を被っている。ものすごくちっちゃい。ひゅっと目の前を横切るとき、流れ星を見たように幸せな気持ちになる。

 でもこの青い帽子をかっちり描くと、坊主頭の一休さんみたいになっちゃう。だからふわふわっと羽毛を感じさせるように、色鉛筆でやさしく描いてみた。羽の部分にも色鉛筆のタッチを加えています。

 一発でこんな風にうまくゆくことはまず無くて、何べんも失敗して、少しずつシンプルにしながら「私のブルーティット」「私の小鳥」が生まれる。シンプルにする過程で、この小鳥に私が抱く思いが、ギュッと濃縮されてゆく。

 実は今日は大変だった。二階の父の使っていた部屋を来週からの大改造に向かって毎日掃除しているのですが、今年の春、雨戸の戸袋に、たぶん雀たちが巣を作っていた。ピーピーと賑やかだったから、そのことは分かっていた。父は何年もの間、2か所の雨戸を締めきりにしていた。今思えば、さあここに巣を作ってくださいと言わんばかりに。隙間から親鳥たちが入って、天敵からも嵐からも完全にシャットアウトされた、恰好の子育て部屋にしていたのだ。

 困った時にスーパーマンのように助けてくださるSさんにお願いして、掃除してもらうことになった。雨戸を一枚外し、戸袋の中をのぞいたSさんの後ろ姿がギョッとしていた。

 結果を言うと、45リットルのごみ袋にほぼ一杯の藁や小枝が、これでもかこれでもかと出てきたのです。奥の方は、土のように固まっていたという。たいへんな作業の末、窓は何年もの時を経て、全開された。夕日が美しかった。

 この戸袋から、何羽のヒナが巣立ったのだろう。来年からはゴメンネだけど、その分私は、せっせと小鳥の絵を描こうと思う。


28 Oct 2020

 



7回目のグループ展

 一昨日、私たちの東京クラスメンバーによるグループ展がスタートしました。15年目に入ったお教室の、7回目となる展覧会。

 余談ですが、この場合、展示会と私は言いません。展示会と言う言葉には、量産するものを販売するというニュアンスを感じますから。私たちのはどんなにささやかであっても、特別なオリジナルの作品をご覧頂く、だんぜん「展覧会」です。

 初日から、多くの方にお越しいただきました。このような時に、ありがたい思いでいっぱいです。久しぶりにお目にかかる方、初めての方、マスク&ディスタンスでも直接お話するのが愉しくて、人の写った写真を撮るのをうっかり。無人の写真ばかりですが、お客さまには、工夫いっぱいの作品を熱心にご覧頂いています。

 作品を単体で撮影した画像を、 hac & hic のページ(メニューバーにリンク)に公開しております。作者の言葉も添えていますから、会場でスマートフォン片手にご覧頂くのもよいかと思います。


ギャラリーに入ってすぐお出迎えは、初参加の安倍さんの水彩画。


こちらも初参加の白鳥さんによる、フードイラストレーション。

 
抽象、具象、インスタレーション、クラフト、写真、なにを作ってもいい。


昨年の英国アートツアーの収穫物も、見ごたえあります。


額装にもそれぞれのこだわりが。グッズの販売も好評です。


 会場、会期などの詳細は、メニューバーから exhibit のページをご覧ください。

 つづく

25 Aug 2020

 



目に見えるものと見えないもの

 年を取ると早起きになるとよく聞いていたけれど、確かにそうで、でも自動的に早起きになるというより私の場合、早起きをしたくてたまらない感じ。

 最近は4時半に目覚ましをセットしている。起きてすぐに東の空を見る。カリッと宵の明星が輝いている。ここ数日はその時間、外気がぐっと温度を下げた。

 お湯を沸かし、簡単な朝ごはんの支度をしながら、30分後にもう一度見ると、もう金星は消えている。太陽が昇ったからだ。小鳥たちも目を覚ます。

 私たちの星は、毎日毎日これを繰り返している。

 朝のまだ暗いうちの景色は、今までしてきた旅の朝と重なって、目覚めたばかりの五感を刺激する。旅に出ると、とくに移動の日は、早起きをしなくてはならない。見知らぬ街の朝ほど、ワクワクする景色はない。その期待と不安の思い出すべてが重なる。

 静かなホテルのフロント、空港までのタクシー、バス乗り場や駅までの道のり、人がまばらで、空間ばかりが目立つターミナル、刻々変わる空の色、その街その街の澄んだ空気の匂い。これから向かう場所への期待よりも、その一刻が尊く思われる。

 この写真は、去年の5月、HACとHICのメンバー有志と出掛けた南イングランド、ライの街の朝。海のある街。カモメの声がBGMの静かな朝でした。

 


 夜が明けて、世界が色にあふれるまで、しばらくボーっと窓の外を見ていた。



 太陽の圧倒的光でかき消されている、でもそこに確かに存在する満天の星たち。今日はその星のことを意識して、一日を過ごしてみよう。


17 Aug 2020



残暑お見舞い

 皆さま、いかがお過ごしでしょう。コロナに豪雨、長梅雨に酷暑。心はなるべく平穏にと努めています、とかカッコいいことではゼンゼンなく、出来る日には短い昼寝を。

 「パワーナッピング」と言うそうですね。たとえ5分でも仮眠すると、そのあとの「パフォーマンス」が俄然違ってくるんだとか。確かに、脳内がすっきりします。

 昨日もまた、暑くて辛い一日の始まりと思いきや、幸いにも違った。日曜美術館でオラファー・エリアソンの展覧会の様子を観ることができたから。この展覧会は始まる前からずっと愉しみにしていたのが、コロナで延期になり、再開してもまだ行けないでいる。9月下旬の最終日までに、都内へと出掛けられるだろうか?

 この偉大な芸術家の作品を初めて体験したのは時を17年も遡り、2003年のロンドン、現代美術のミュージアム、テートモダンででした。会場に一歩足を踏み入れた途端、この景色。



 ウェザー・プロジェクトと名付けられた、これは巨大なインスタレーションです。発電所だった建物を美術館にリノベーションしたテートモダンの、信じられないくらいどでかい空間に、これまたどでかい太陽を、オラファー・エリアソンは設えて見せた。今思い出しても、モダンアートから受ける最大級の刺激的体験でした。

 歩道橋の向こうや天井に映る人影で、この空間の巨大さが伝わるでしょうか? あらゆる年代の人間が、思い思いの姿で、この人工の太陽を仰いでいた。

 平和な気持ち、とも違う。畏れのようなもの、とも違う。それまで経験したことの無い、フラットな気持ちにさせられたのを思い出します。アインシュタインは「遠方では時計が遅くなる」ことをつきとめましたが、その実験の粒子の一つに自分がなったような。たとえて言えばそんな感じ。記憶を反芻すると、ある実験者がどこか遠くにいるのをかすかに感じるような、そんな気持ちもよみがえります。

 その後、2005年には東京の原美術館で、「Olafur Eliasson 陰の光」という展覧会を体験。今回の展覧会にも出品されている虹の作品を観ることが出来た。(原美術館が今年の12月で閉館するというニュースは、本当に残念です。)

 日曜美術館では、オラファー・エリアソン自身の言葉を多く聞けたのがうれしかった。

 まず展覧会場の最初に飾られているという、1,5000年から20,000年前の氷河で描いた大きな水彩。氷が溶けるままに時が描いた不定形の抽象画に「規則性のある形をドローイングで加え、より確かな存在感を出すようにしました」。創作の際いつも漠然と思っていることを、私のつたない思考の一万倍馬力で仰ってくれた。

 TV画面を通してだって、この作品を前にしたら、悠久の時を感じないわけに行かない。作家が「光が放たれるような特徴を持たせようとした」この作品は、観客に向けての「ちょっとしたグリーティング(ご挨拶)なんです」という言葉にも、しびれました。

 私たちの東京クラスも、秋のグループ展に向けて、あるささやかなプロジェクトを進めています。このコロナの時代にあって自分たちに何ができるかを考えたとき、自然に浮かんだその企画への心優しい励ましにも思え、頭の中に大きな風力発電の羽根がゆっくりと回り始めた思いがするのです。

つづく 

9 Mar 2020




バーバラさん

 沼津クラスのバーバラさんは、みんなの人気者です。なんと言ってもその笑顔が素晴らしい。沼津の教室がレギュラーになるまでは東京のクラスに、こちらから高速バスで通ってくださっていました。だから東京のレッスンにも仲良しがいて、その笑顔は以前からみんなに評判でした。そういう声が、講師の私の耳に入ってくる。そのたび、本当にそうだなあ。バーバラさんの笑顔は絶品だなあ。いつも思うのでした。

 あ、バーバラさんは日本人です。念のため。この名前は、お孫さんが生まれて、自ら名乗りだされた別名。でも今では立派な「雅号」。

 これは昨年のUKアートツアーに参加下さったときのことを、バーバラさんが一枚の大きなシートに絵と言葉でまとめられた作品の一部です。あっ、ベッキーさんと私がいる! インスタグラムに投稿したら、ベッキーさんも大喜び。それに刺繍作家のキャロライン・ズーブさんも「Love this, Hiro-san!」、この絵の舞台、「Great Dixter House & Garden のみんなも、きっと観たがると思うわ!」とコメントをくださいました。キャロラインさんはこちらのチーフガーデナーの方と懇意なのです。

 さっそく有難い感想をいただけた今回のグループ展、出品作品。新人も古参も、自由でのびのびとした、アイデア一杯の水彩画やコラージュたちを作ってくれました。

 新型コロナの影響を、気にしていない人はいないと思います。私たちも迷いました。でも、いろんな工夫と用心をして、12日(木)から17日(火)まで、時間を少し短縮しますが、予定通り開催することに決めました。

 時間その他、注意事項は exhibition のページをご覧ください。そしてどうぞ、どなたもご無理のありませんよう。

 メンバーを見渡しても、お孫さんのお世話に忙しい方、お仕事のこと、私のように高齢の親を持つ人、そしてやっぱりそれぞれこの件には少なからず不安があります。バーバラさんはそんな仲間に、「皆さん無理せずバーバラにお任せ下さい」と、そのお日さまのようにあたたかな笑顔が浮かぶメールを送ってくれ、毎日でも在廊する勢いで当番を買って出てくれました。なんという仲間。なんというバーバラさん!

 ほかにも頼もしい若手がいてくれたり、ギャラリーに近い方が重責を担って下さったり、長いこと生きて来ても、自分に自慢できることは何一つありませんが、私の生徒さんはすごい。沼津も東京も同じように、個性豊かで率直で、明るくて優しくて、素晴らしい女性の集合。私の誇りです。みんなで支え合い、きっと会期を無事に送りたいと思っています。

 そしてこの困難な時期に、ご覧くださった皆さまの心が、少しでも軽やかになったなら、メンバー皆の何よりの幸せです。

7 May 2019



庭師の暦

 私はこの絵が好きです。完璧な出来ではないのですが。そして、自画自賛は褒められませんが。英国航空のファーストクラス機内誌に描いたものです。

 いつもお世話になっている、自由学園明日館。その向かって左手奥に、JMショップがあります。店内の一角に、ギャラリースペースがある。そこで小さな展覧会をさせて頂きます。

 期間は5月21日から6月2日まで。10:30から16:30、月曜日がお休み。

 Country Living で長く描かせてもらった、ガーデニングに関するイラストレーションから選んだ12種類のプリント画、そしていつの個展でも評判のいい、このBritish Airways の絵。それに最近描いている、古い西洋の手紙を使った花の小品、それから私のセレクトしたイギリスのブロカントやハバダッシェリー(小間物)も並べます。ギフト展、と言っていい企画。ぜひ観にいらしてください。

 在廊日は今のところ、初日の21日終日、それに、29日、30日は水彩レッスンがありますから、そのあと、13:30から16:30、在廊するつもりです。会場でお目にかかれますよう!



 昨日は、来年の企画も決まりました。2020年4月に、銀座ACギャラリーで個展をします。新しい作品を発表したい。気持ちも新たに、白い紙に向かいます。


3 Dec 2018




Viv さんのベレーと小さな絵

 思いがけないプレゼント。今一緒に新しいプロジェクトをプランしている、イギリス人の友人、Becky さんから頂きました。私が Viv Hen'steeth さんのファンであることを知っていた・・・にしても、サプライズ作戦は大成功! その日はうれしくてうれしくて、家の中でもずっと被っていました。自分で言うのもナンですけど、似合うんです。

 Viv さんを知ったのは、同じくイギリスの友人 Helen さんから。いつだったか彼女が気になっている女性アーティストの名をいくつか、メモに書いて教えてくれた。「Hen'steeth?」。不思議な名前だと思い尋ねると、英語の独特の言い回しだという。「めったにないもの、まるで『雌鶏の歯』みたいにね」と教わった。もちろん、雄鶏にだって歯はない。

 そのうちインスタグラムを始めた。Viv さんのアカウントを発見してフォローしたところ、びっくりするようなコメントが返って来た。私が雑誌 'Country Living' に描いたイラストレーションを、今も大事に取ってあるというのです。ここで出会えたことに、とても感激しているとも。

 11年もの長きにわたり、毎月イラストレーションを掲載してもらった Country Living は人気雑誌で、発行部数もかなりあり、イギリスはもとより世界に多くの読者がいる。同じ言葉を、有難いことに他にも何人かから聞いている。私の小さな絵に心を寄せてくれた人との出会い。どんなに有難くうれしいことか。よい仕事に恵まれたことにただ感謝です。

 当時のイラストレーションから、特に気に入っているもの、季節感のあるガーデニングに因んだもの12枚を選んで、2019年のカレンダーにしました。A4サイズを3等分した短冊形のシートのみというシンプルなものですが、先日のグループ展でも好評でした。お好みのクリップやプッシュピンで留めて使ってください。

 グループ展のあと、沼津が誇る人気古書店でありセレクトショップでもある 'weekend books' さんに、扱ってもらっています。一部1,080円。





 買いに行けないわ、という方には郵送でも受け付けています。ご希望の方は、河田まで「件名:カレンダー」とし、メールでご連絡ください。メールアドレスは、メニューバーの lesson ページにあるお問い合わせ先と同じです。お待ちしています♪




 そして、ベレーにこんなに素敵な刺繍をされる Viv Hen'steeth さんに、来年もしかしたら会えるかもしれない。実現しますように。Fingers Crossed!


9 Oct 2018




完璧な空

 「きれいな空だ、ドン」
 
 「完璧な空だと思うか?」
 
 「完璧って何だ」
 
 「完璧な人格っていうだろ?そういう意味でさ」
 
 「空はいつだって完璧さ」
 
 「一秒ごとに変化してるのに完璧だって、そう思うか?」
 
 「ああ、海もそうだ。完璧だ」
 
 「完璧であるためには、一秒ごとに変化しなくてはならない。
  どうだ、勉強になるだろう」

         リチャード・バック『イリュージョン』より


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 若い日に読んだこの言葉、今まで数えきれないほど、様々な場所、様々な状況のもとで思い出し、心のバランスを取る助けにしたと思う。

 写真はイマソラじゃなくてキノソラ。近くにこんな大きな空が見える場所があることが、有難い。




 一方こちらは、イギリスを代表する風景画家、コンスタブルが「空」を描いた習作。イギリスのインテリア誌 'The World of Interiors' がだいぶ前に特集したもの。

 この絵は 'Cirrus Clouds' 「巻雲」というタイトルで、1822年にロンドン北部のハムステッドで描かれた。

 この頃、コンスタブルは100枚もの空の習作を、比較的小さな画用紙やカードに描いていた。特に好んだ空は、正午の頃と夕暮れ時だったらしいが、夜明けから日没まで、晴れても雨でも嵐でも、その目を天に向けて描いていた。記事には、一枚にかけた時間は約一時間とある。

 後で時間をかけて、ちゃんと読んでみようと思う。

 この巻雲の絵がプリントされたカードを、長らく机の前に貼っている。17、8年は貼っている。今、久しぶりにひっくり返してみたら、Victoria & Albert Museum で買ったものだった。


8 May 2018




サラ・ムーン展に魅せられて


 先日観た、サラ・ムーンの写真展の残像がまだ消えません。銀座のシャネル4階にある 'Nexus Hall' で開催されていました。


    サラ・ムーンの写真のメイクは、
    いわゆる品のいい優しい女ができ上がるようですが、
    セルジュ・ルタンスのメイクにおいては、
    電光の冷たい情熱と、スピードに狂う
    知性を秘めた女性が出現するかのようです。


 1979年に刊行された、パステル画家のまりの・るうにいさんによる、もはや伝説と言ってもいい一冊、『月街星物園(つきまちせいぶつえん)』より。どこかにサラ・ムーンの名があったような気がして、特別大切な本をしまう古い戸棚から、久しぶりに取り出してみた。

 松岡正剛さんの奥さまだということは、だいぶ後になって知ったこと。稲垣足穂の本の装画で人気だった画家は当時、写真家セルジュ・ルタンスに多くの行を割いている。70年代の記憶の糸をたどると、確かにルタンスの女性から得た印象は強烈でした。資生堂の広告にも登場したのをよく覚えている。

 でもファッション雑誌やスウィンギング・ロンドンのブティック、 'BIBA' の広告のサラ・ムーン・ワールドに、少女の自分は、雲のカーテン越しに遠い天を仰ぐような、トキメキと憧れを抱いたものでした。自分をロンドンへと導いた、魔法の杖の一本だった。

 長い時を経て再び接する、現代に生きるサラ・ムーンの写真は、スリリング。スローモーションめいて神秘。細かい振動やひっかきをまとったモノトーンの世界を、ほかになんと形容しましょう。昔の作品が天上的誘惑だとしたら、アンダーグラウンドの誘惑。または時の止まった深海の誘惑。

 人物、ドレス、工場、動物・・・。人物、ドレス、工場、動物・・・。そしてまた人物、ドレス・・・。キューブリックの映画みたいに白く静かな会場の罠に捉えられ、抜け出られなくなってしまった。




 会場では自由に撮影ができた。たくさん撮ってきたけれど、上はその中の一枚。キャプションには、'Yohji Yamamoto'。




 短編フィルムの上映も面白かった。日本のどこか、工場のある風景がざわざわと、それでいて静かに、映し出されていた。

 帰りの新幹線の中から、すでに「誘惑」に勝てません。タブレットの画面にサラ・ムーンへのオマージュをいくつも作る。見慣れたオブジェや景色が、フィルターの魔法で永遠の時を得る。お試しください。面白いから。 









28 Jan 2018




ウィニフレッド・ニコルソン

   My paint brush always gives a tremor of pleasure
   when I let it paint a flower.

   花を描くよう仕向けると、
   私の筆はいつだって歓喜に震えるのです。

                    Winifred Nicholson


 2月の Hiro's Art Class では、一足早いイースターエッグの飾りを作ろうと思います。始めは画家のマチスにスポットを当て、彼の作品のエッセンスを卵の柄に生かそうと思っていましたが、この寒さのせいでしょうか? もっと温かく、もっと和やかなムードの絵にしたくなりました。

 幸い注文していた、ウィニフレッド・ニコルソン(イギリスの女性画家 1893-1981)の画集が届いたので開いたら、もうこれしかない! 前回のブログに書いた中川一政さんの言葉の通りです。

 「一切のことを為すに当意即妙なり。あらかじめ設けてする事あるべからず」

 それで、卵に穴を開け、中身を空けてきてほしいと、たった今生徒さんたちにメールでお知らせをしたところです。

 何年も前、HACがまだ始まったばかりの頃、一度お願いしたことがある。皆さん上手に開けてこられた。ご主人が持っている細いドリルで、見事に美しい穴を開けた方から、上の私の写真のようにナチュラルな(?)穴の方も。そのときはリボンで飾り、造花などと一緒にカゴにアレンジメントをしたのでした。

 Lesson のページに、この穴の開け方について少し書きますから、ご覧ください。検索すると、動画がいくつも公開されています。参考にしていただくとよいと思います。ハーブ研究家の永田ヒロ子さんによれば、カッターで開けると簡単とのこと。今度やってみようかな。丸いきれいな穴でなくても、5mmくらいの直径に収めて頂けるとよいかと思います。

 あ、でも私もドリルを持っているんでした。100円ショップあたりでも、簡単なドリルならありそうですね。

 ウィニフレッド・ニコルソンの絵には、イギリスの光が描かれている。どこかシンと引き締まったイギリスの大気が、温かな花の輪郭とせめぎ合っている。モランディにも通じる、静謐を感じます。

 画家の元夫、ベン・ニコルソンのファンは日本にも多い。さかのぼってベンの父親ウィリアム・ニコルソンを、絵本画家としてご存知の方もいらっしゃるでしょう。この、おそらくは日本であまり知られていない女性画家、ウィニフレッドの素晴らしい画業を皆さんに紹介できるのが嬉しい。もうちょっと私も勉強してから、レッスンに臨みたいです。

8 Nov 2017




バージニア・ウルフに目覚める

 11月に入りました。2017年ももう日没間近ということに、ドキッとします。

 今年うれしかったことと言えば、バージニア・ウルフの『オーランドー』を読み終えられたことがある。

 ずいぶん前に買ったままになっていて、いや、一度読み始めたんだけど、その時はすくってもすくっても、両手の指の隙間から砂がこぼれるように、ぜんぜん心に入ってこなかった。それは「意味」を求めていたからだと、今になってわかる。

 というのも二度目の試みで、物語というものが持つ要素の中の私が最も愛するものが、少ぉしわかってきたから。それは何かといえば、ひたすらディテイルなのです。この奇妙な小説、『オーランドー』に教えてもらった大事なこと。

 白状すると、いつ頃からか小説に妙なコンプレックスを持っていて、読み始めてはやめ、読み始めてはやめを繰り返すうち、もうほとんど随筆しか読まない、読みたくない人になっていました。でもこの本を読んで、子どもの頃のように、本は好きなように読めばいいのだとわかった。絵は好きなように描けばいいのだし、本も好きなものを、好きなように読めばいいのです。「前のページのことなどすっかり忘れながら読んだっていいのよ。」勝手にちゃっかり都合よく、ウルフからそう教えられたような気持ちになっている。

 とはいえ、ストーリーはあるにはある。以前にここでちょっと書いたので内容は省略しますが、今日の写真は小説の舞台、ウルフの恋人であったヴィタ・サックビル・ウェスト(『オーランドー』は彼女への長い長いラブレターであったとも言われている)の生家、ノール城のものを。ずっとずっと前に訪ねた時に撮りました。(まだフィルムのカメラだった。)
 



  『オーランドー』は、特異な人間の生態(?)が、イギリスの貴族社会を背景にリズミカルに描かれた奇想天外物語。これぞ私が読みたかったもの!と読み終えて興奮気味でしたから、続いて手に取った『ダロウェイ夫人』も当然しっくりきた。これまた不思議な物語で、『オーランドー』と同じく、時間と空間の絡み合いが実にスリリングです。そしてやっぱりディテイルの魔力。

 今読んでいるのは、図書館で借りた『フラッシュ』。これはフラッシュという名のコッカスパニエル犬の目から見た、詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの日々が描かれているとのことで、それを聞いただけですでに両肩をつかまれた気分。まだ冒頭ですが、ディテイルのハーモニー(や不協和音)が、たまりません。(次に読むのも取り寄せてある。『灯台へ』です。)

 すごく若い頃に、『自分だけの部屋』を読んだけれど、全く覚えていない。きっと当時の自分には難しかったのだ。これもまた再読予定。

 心に様々な波風が立つ日の終わりに、ベッドの中での読書時間は、何よりの慰めでありよろこびです。たとえ数ページでバタンキューでも・・・ 。




5 Feb 2017



花と団子の話

 今年も去年と同じように、時間をキチッと守って、けなげに咲いてくれました。金木犀の根元のスノウドロップたち。

 私はとにかく、いい歳になってからイギリスに行くまで、植物について全くの無知。自生地はイギリスというこの可憐な花のことも、あちらで初めて知りました。今朝フォローし合っているイギリス人画家の Deborah さんのインスタグラムに、あるステンドグラスの写真がテニソンの詩の一部とともにポストされていた。清らかに優しく、でもきっぱりと凛々しく、教会の窓に描かれていたのが、この地味なスノウドロップでした。

   The Snowdrop

   Many, many welcomes,
   February fair-maid,
   Ever as of old time,
   Solitary firstling,
   Coming in the cold time,
   Prophet of the gay time,
   Prophet of the May time,
   prophet of the roses,
   Many, many welcomes
   February fair-maid!

          Lord Alphred Tennyson (1809-1892)


 イギリスの冬は厳しいですから、スノウドロップが咲くのを発見した時の喜びは、この「Prophet=預言者」の言葉にぎっしり詰まって表れている通り。

 天気予報では、雨は降りますが温か・・・じゃなかったでしょうか。今日は駿河の国も寒い一日でした。でもテニソンの言う通り、よし、冬ももう一息。頑張ろう!って思う。 




  これは私の好物、中近東料理のフムスです。これを手製のパンに塗って食べるのは、一番好きな朝ごはんのひとつで、今回はレモンとお塩の代わりに、そーだ、アレがあった、と、塩レモンを使ってみた。いつにも増して、コクのあるいい味に仕上がった(と自画自賛)。タヒニと呼ばれるゴマのペーストは、アマゾンで買うことができる。それを知るまで、日本の胡麻ペーストで作っていた。出来栄えはほとんど変わらないけれど、胡麻ペーストより輸入品のタヒニのほうが経済的。ひよこ豆も徳用サイズがやはりアマゾンで買えるので、利用しています。

 塩レモンもまた、中近東がルーツの発酵調味料ですね。これまた私に無くてはならない「レモン胡椒」を作る際、皮をすりおろすと皮なしレモンが頼りなく残りますけど、それが役立ちます。本式には皮ごと漬け込むんだけど、ま、いっか。写真左に写る瓶がそれです。細長い空きビンが重宝します。

 (余談ですが、塩レモンのトロッとした液体の方をほんのちょっとグラスに入れて、ガス入りのミネラルウォーターで割るノンアルコールの一杯は、なかなかイケます。)




 最近始まった新しい習慣。それはお弁当作りです。今までも、外出の時は家族に作って置いたりしていたけれど、この間からはどこへ行くわけじゃないのに、自分用にも作るようになった。中井貴一さんの弾んだ声が聞こえてきそう。「サラメシ!」です。お昼の時間に仕事や考え事が中断せずに済んで、わずかなりとも能率がよくなったような気がします。

 年々集中力や仕事の効率が悪くなっているので、工夫で何とか乗り越えようと、こう見えて必死です。

 スーパーで冷凍食品の進化に目を見張りながら、前日のおかずの残りも生かします。お弁当のことを考えながら、夕飯のメニューを組み立てようかと思うほど。この日のふりかけは、茅乃舎のお出しの出しがらで作る、自家製・錦松梅。自家製だから、好きな松の実を多めに。

 買ったはいいけどあまり出番の無いスペインの耐熱容器、カスエラ(cazuela)に、おままごとみたいに盛り付けるのも愉しいです。これはレンジのみならず直火もOK。シチューやカレーもいいな~と夢が膨らむ・・・くらいだから、三日坊主で終わることは無いと思うのですが。どうだろ。

 「exhibit」というページを新たに作り、メニューバーから飛べるようにいたしました。東京のグループ展のこと、そして昨年の展のことなども遅ればせながら記しましたので、よかったらご覧ください。