27 Feb 2016



昨日はこの青い山々の向こうにある伊豆の国市へ、父とドライブしてきました。昔は韮山と呼ばれていたその町は、私が子ども時代を過ごしたところ。


ギャラリーnoir のオーナー平井さんに、城池の辺りがきれいに整備されたと聞いて、行ってみた。


この図の「沼」がその城池で、友だちとおっきなオタマジャクシを取ったりして遊んだ記憶がある。家で絵を描いてばかりいるような子が、時にはそんなこともした。


世界文化遺産になった反射炉は、観光バスとお客さんでいっぱい。一方、その反射炉を作った江川太郎左衛門の邸宅、江川邸はひっそりとし、ほど近いこの城池も、釣り人二人と野球をやってる人たちと、野良ネコ二匹で、時が止まったようにのどか。


昔を知る者としては、いつまでもこのままであってほしい。


河津桜が満開で、早い春を満喫しました。

22 Feb 2016




明日館クラス

 昨日は大失敗の日。例のプリンターが、故障で作動しなくなってしまったのです。沼津クラスでは全く問題なかったのに・・・。講師自らすごーく愉しみにしていた「実験」だったので、内心ぺしゃんこにへこんでしまい、そのへこみから来る動揺でか、デモンストレーション中、いつにも増して机の上のものがみつからない。

 たとえば、ハサミが、定規が、カッターが、えっと・・・、どこに置いたっけ・・・、これが何度も起こる。こういうとき、黙って探していてはいけないということを、人は知らず知らずのうちに学習するものらしい。「あれ、ハサミがないな」などと、無意識に口にしている。すると机の上の道具や素材の山のなかから、メンバーの誰かが、それはまるでカルタ取りの名人のような驚くべき早さで、「ここです!」と見つけ出してくれる。ドクターが「メス」と言った瞬間、助手の人がパチッと渡す、みたいに。ありがたい。

 結局、ご自宅でプリンターを操れる方は、続きを家で完成。そうでない方は、私が原画を預かり、新しい方のプリンターでコピーして郵送することに落ち着いた。本当に本当に、失礼いたしました。

 故障した機械は、迷ったけれど明日修理に出すことにする。教室用のプリンターがあるのはいいことだと思って。コピー機遊び、実はもうひとつアイデアがあるんです。

 プリンターの件以外は、いつものようにハッピーに時は進んだ。ご参加くださった方々、ありがとうございました。

 

20 Feb 2016




2月のレッスン

 先日の木曜日、沼津クラスに初めてインクジェットプリンターを持ち込みました。2月の課題は封筒。自分の絵で、自分だけの封筒をつくるのです。

 キットには8種類の紙を用意し、まずコラージュ用の紙素材を自分で作るところから。見本に用意した草花を漉き込んだ紙を、そのままモチーフに制作される方、独自の模様に挑戦される方もおいででした。

 さて、ドキドキのコピーの瞬間。仕上がった作品は、コピーすることで原画とは別物になる。皆さん瞬時に感じておられました。作品をコピー機にゆだねたり、印刷物にデザインするとは、はっきり自分の手から離れ独立するということで、子どもを育て上げて旅立たせるようなことではないかと思ったりします。「よくこんなに大きくなったね」とか、「行ってらっしゃーい」とか、「がんばれよー」とか、声を掛けたくなります。額装するときにも同じことを感じます。いえ、描き上げた瞬間にはもう、絵は未来を向いています。

 明日は東京クラスです。プリンターはクロネコさんの手を経て、今頃は明日館の事務室でじっと明日を待っているはずです。

17 Feb 2016



ナッツのケーキ

 紅茶とくれば、ケーキ。人生、第3作目のケーキを作る。バレンタインデーだったんで、申し訳程度ですがココアを振ったりしました。

 記念すべき第1作は、クリスマスに甥や姪が来た時に伯母バカサービスで作った苺のショートケーキで、始めてまだ間もなかったインスタグラムにUPしたら、思いのほか「いいね」を頂き驚いた。(もちろん私のページにしては、です。)

 第2作目は、調子に乗ってその翌週、外国からのお客さまのためにと作った・・・のですが、なんと粉ふるいの器具がシャカシャカの途中で壊れてしまった。焼きあがってひっくり返すと、小さな金具が底に沈んでカチッと焼きこまれているではありませんか。他にも混ざっていたらと心配になる。

 善良な市民ならそこでやめるでしょう。キウイと苺とナッツでデコレーションして、冷蔵庫にしまったりはしないでしょう。

 2日後のお正月に、身内だけでおそるおそる食しました。幸い2月現在、健康被害の報告はない。

 そしてこのNo. 3は、バレンタインから3日で完食。自家製だと消費期限のしばりなし。むしろ翌日の方が美味しく感じられたりするものなのですね。スポンジ台はクックパッドで「簡単なの、簡単なの・・・」と調べたレシピを、コレステロールフリーのオイルと牛乳代わりの豆乳にアレンジして作ってます。

 恰好や切り口はどうであれ、すごく美味しい自分ケーキ。パティシエが人気職業の理由、今頃?ですけど、少し解ってきました。

12 Feb 2016




ホックニーの Tea Painting

 注文していた 'Ty-phoo Tea' が届いた。いつも買っている PG Tips と同じく、イギリスの庶民の紅茶です。PG派を返上して、今回はなぜかこっちを欲しくなった。

 ご存知と思いますが、庶民の紅茶ではなくても、たとえば「イングリッシュ・ブレックファスト」と名のついた紅茶は、たとえ高級銘柄のものであっても結構濃く出る。ミルクをたっぷり入れて飲むと美味しいようにできているのがイギリスの紅茶で、お世話になった絵本作家のキャロリン・ダイナンはそのような濃いミルクティーのことを、「ハツカネズミが表面を駆け足できるくらい濃い、というのよ」と教えてくれた。

 Ty-phoo Tea のパッケージを見て、これはやはり「あのホックニーの絵」をいま一度観なくてはいけない、と、画集を久し振りに開いてみました。

 私の年代でアートに興味のある人なら、ホックニーの洗礼を受けていない人はいないだろう。イラストレーションと言ってもいいくらい洗練されチャーミングな作品の数々。カリフォルニアの乾いた空気の中で描かれた鮮やかな色彩に、配色と構図の絶妙なバランス。色鉛筆で描かれた繊細な肖像画。かと思えば晩年のピカソみたいに対象を単純化した絵や、舞台美術、ポラロイド写真をモザイクのように配置した作品、コピー機を使った版画に、最近は故郷イギリスのブラッドフォードの風景画まで、デビューからずっと変化をし続け、しかも淡々と我が道を歩む画家。誰もやっていない新しいアイデアやカラフルな挑戦を、こともなげにやり続けているように見える。こちらもずっと打たれ続けています。

 このパッケージの絵は1961年、ホックニーの初期の頃の作品。スタジオに紅茶のパッケージが、絵の具の缶やチューブと一緒に山になっていた。それはいつもそこにあって、ある意味、静物画のモチーフであることに気付いたホックニー。しかしパッケージのデザインそのものに興味があったので、静物として扱うよりはこのようなアプローチになったのだ、と画集にある。この絵は、誰もが解るイメージを絵の中に取り込む最初の試みだった、とも。

 絵の中に言葉を書きこむことについても、葛藤の末始まったことが、手元にある古い本、『ホックニーが語るホックニー』(パルコ出版)に書かれていて、若い私はそこに感銘を受けた。今なら誰にとっても抵抗のないことが、ホックニーが悩んだ当時は違ったのだと思う。

 さっき、「こともなげに」とうっかり書いたけれど、そんなことはきっとない。昨夜NHK木曜時代劇「ちかえもん」の中で、松尾スズキ演じる近松門左衛門のせりふを思わず冷蔵庫に貼ったメモ用紙に走り書きしたのですが、それはこんな言葉です。

  ・・・などという陳腐な言い回しは、わしのプライドが許さんのである。

 いかにもあたりまえな表現や常套句を使ってしまった直後、その行を 'delete' ボタンで慌てて削除するかのようにこの言葉を放つちかえもん。Ty-phoo Tea から、なぜか「ちかえもん」バナシになってしまったけれど、変化を続けた「チ、チ、チ、チ、チェインジーズ♪」のボウイもそうだった。枕の冷たいところを探すように変化しながら作品を生み出す、勇気ある芸術家の仕事を私は尊敬します。

 P.S. 「ちかえもん」観てる方いらっしゃいますか? めちゃくちゃ面白くて、あと3回しか観られないのがすでにさびしい私です。

9 Feb 2016




私の植物画

 これはある会社の会議室。関東の某所にある、個人のクライアントさまの経営するスパイスの会社です。インドや日本のスパイス類を、私のゆるい水彩のスタイルで植物画に仕立て、英文の説明なども入れながらシリーズ作品として制作させて頂いています。

 胡椒を皮切りに、クミン、カルダモン、山葵、柚子、山椒、辛子、フェネグリーク、ターメリック、フェンネル、大蒜、生姜、そして最新作は先日 INSTAGRAM に描き始めをUPした唐辛子。スパイスやハーブは興味があるので勉強にもなり、資料に頂く産地の写真も興味深い。ご依頼主の寛大なお心により、一点、一点と、マイペースで制作を続けているところです。

 昨秋ピカピカの新社屋をお訪ねし、ずらり並んだ自分の絵に対面。感激でした。社員の方々にも評判上々とのことで、このような機会を頂いたことに、あらためて感謝いたしました。いつか何かの形で、皆さまにもご覧いただける機会があればと願っています。

 ところでイギリスから帰国後の2002年、初めて個展の機会をくださったのは東京映像社社長、故・大滝勝氏でした。当時、映像社に友人が勤めていて、麻布十番にギャラリーを持つ大滝さんに紹介してくれたのです。大滝さんもスパイスの取材に、世界中で撮影を重ねておられました。お世話になっているこのスパイスの会社とも、間接的にご縁がつながっていたことを大滝さんが故人になってから知ることになり、不思議な思いがしたものでした。

 昨日、現・社長、大滝夫人から、映像社が関わるテレビ番組のお知らせが届きました。2月14日(日)、21:00~21:50、NHK BS1スペシャル「精霊流しの夜に~ネパール大震災を超えて~」。

    ネパールの人びとの様々な思いを込めた神秘的な祭りと
    震災から立ち上がり歩みはじめた人々を取材した、
    心震えるドキュメント

とあります。よろしければ、ぜひご覧ください。

4 Feb 2016




デュカ、フムス&チバタ

 インスタグラムを始めて、料理の写真のすごいことに、毎日腰を抜かしそうになっています。特にヨーロッパの南の方の国、イタリアやスペインの料理家の人たち。自分がそっち方面の料理が好きなせいかとも思うけれど、テーブルセッティングのちょっと崩れた色っぽさ、撮影の光の明暗のバランス、細部までの神経の配り方などがすごい。東洋の果ての隅っこの天井の低いちっちゃな小屋に暮らす日本人である自分は、なんと整然として淡泊なことかと思う。

 この間、そんな中のおひとりの画像がフムスだった。また素敵に器に盛られて、タラーとオリーブオイルがかけられ、そしてパラパラと何かが振りかけられている。説明を読んだらデュカでした。フムスとデュカの組み合わせは完璧だとあります。

 デュカは、庄野先生のお仕事でお世話になっていた頃、元・編集者のSさんから教わった。中近東のふりかけのようなもので、あらゆる種類のナッツで試されているSさんは、オリーブオイルと一緒にパンにつけて食べたり、サラダに掛けたりするといいですよと、気前よく何種類も分けてくださった。

 さっきのインスタグラムを見ていたら、久々無性にデュカを食べたくなり、昨日は家にあるナッツがクルミだけだったので、すぐにクルミで。「都民じゃなくて区民ね!」のクミンシードと、「コリャなんだー?」のコリアンダー。それに昨日は白ごまも混ぜて、すり鉢でゴリゴリして四者を渾然一体とさせ、あっという間に完成。

(ダジャレは前者が平野レミさんがどっかで仰っていたもの。後者は私が今思いついたもので、読み直して修行の足りなさを痛感です。失礼しました。)

 クミンはものすごく新鮮なのを、スパイスの会社をなさっているYさんに去年分けて頂いた。それを瓶に詰め替えたばかり。そのおかげか、香りのピンとした美味しいデュカが仕上りました。

 確かにスペイン人の言う通りで、フムスとの相性抜群です。フムスはたいていいつも、冷蔵庫に作り置いてある。チバタブレッドも待ってました!で、野菜たっぷりの日替わりスープと、三島野菜の赤い軸のやわらかホウレンソウに紫のからし菜、ルッコラ&生ハムのグリーンサラダ、ワインの代わりの葡萄ジュースをお供に、たいへんヘルシーな夕ご飯がマイブームとなりそうな立春の頃です。

追記: デュカもフムスもチバタ(チャバタ)も、検索すると作り方がすぐ出てきます。お試しください。