18 Mar 2019




ひびいてゆこう


 おおぞらを
 びんびんと ひびいてゆこう
             
             八木重吉

 
 昨日の明日館のクラスのあと、若い頃に読んだこの詩をふっと思い出した。毎回自分が愛する芸術と芸術家を紹介するレッスンが続いている。3月は、もう40年くらいず-っと好きなフランスの前衛作家、ニキ・ド・サンファルを紹介しました。




 その昔、東京の上野駅前、古いビルの一室に「スペース・ニキ」というギャラリーがあった。そこを美大時代の友人と訪ねた日の記憶は、もう古いことで「鮮明に」というわけにはいかないけれど、この先も忘れることはないだろう。狭いスペースに、ニキのコレクターで、おそらくはパトロンでもあったオーナーの増田静江さんの集めたニキの作品がいくつかあって、ニキの作った映画「ダディ」の上映を観た。

 その後、滞在したロンドンで情報誌にみつけたニキの展覧会は、地図を頼りに訪ねた。冷たい雨の日だった。その時に手に入れたカタログが上の写真の左上の二冊。もう結構ボロボロ。

 増田さんが手がけた那須の美術館にも一度行ったことがある。素晴らしい美術館だったのに、今はもうない。ニキも増田静江さんも、もうこの世界にいない。

 それから年月が経ち、数年前、六本木の新国立美術館で、大規模な展覧会を観ることができたのはうれしかったな。射撃の写真は、そのときのカタログの裏表紙です。

 ニキの作品に接するたびに、圧倒的な迫力にぐいぐい吸引されながら、いくら惹かれても理解し切れないことの矛盾、抵抗。その引っ張り合いの面白さを学ぶような気がする。

 教室にご参加の皆さんには私の好きな芸術の数々を、また私がそれらの芸術作品から日々受け取っているパワーを、お伝えしたい。芸術とは高尚なものではなく、日常に生きる知恵。世界をどう解釈していいのかわからないとき、ヒントを与えてくれる知恵だと考えているからです。これを書いている私の背後には、展覧会で求めたニキの小さなプリント 'Why Don't You Love Me?' があって、静かに「ダイジョウブ、ダイジョウブ」。見守られている感じがする。

 


教室ではご自身の手を動かして、毎回、ある作家から影響を受けたアイデアを、小さな作品に生かしていただく。今回はキラキラ光る、ドイツの紙素材を使ったモザイク。球面に貼り付けることで、反射の具合が変わり、一層キラキラ度が増す。ニキはこの手法を使って、ガラスや鏡で多くの作品を作っている。

 毎回の私の独断レッスンに、これは自分の 'Cup of Tea' ではないわ、と仰る方がいてもおかしくないのですが、皆さん、いつも好奇心いっぱいに受け入れてくださって有難い。時には、こちらが意図した以上のことをなしてくださり、刺激を受ける。それは八木重吉の詩のように、「ひびいて」もらい、こちらも「ひびく」ことなのだ。それが昨日の帰りの車中で、あらためて思ったこと。




 高校時代の恩師、尊敬する飯田敏夫先生の形見分けに頂戴した本。昭和23年の刊です。

 戦後間もない頃の刊行物だけあり、わら半紙のような粗末な紙。先生が掛けたクラフト紙のカバーを外すと崩れそうなくらい傷んでいるからそっと扱う。先生は再読の日付けを、都度、最後のページに記録されている。

 大切にします。





2 Mar 2019



ひとつ ひとつ

 展覧会にこんな素敵なリーフレットを作って頂き、本当に有難く思います。「さんしんギャラリー 善」は、三島市の佐野美術館が企画運営し、三島信用金庫本店のレトロモダンな建物のトップフロアに、まるで美術館の一室のように広々とした空間を構えるギャラリーです。

 お話を頂いた時、広い広いギャラリーが、私の小さな作品で埋まる景色を想像できず、少し迷いました。でもぎっしり並べなくてもよいかもしれない。いや、その方がよい。だんだんそんな風に思えてきて、また初期のものや、原画と印刷物の両方をご覧頂くよい機会かもしれないし、いっそレトロスペクティブな展覧会にしたら、と妄想がふくらんで、気付いたら「よし」という気持ちになっていました。

 フルタイムのイラストレーターになってから、33年がたちました。数えきれないほどの絵を描いてきた。どの一点にも思い出がある。その間、自分なりに画風の変化の時を、いく度か超えてきました。

 

 
 そんなことを思いながら、パンフレットのインタビューを迎える前日、「ひとつ ひとつ」というタイトルが浮かんだ。

 これは星野道夫さんの著書『風のような物語』に登場する、ケニス・ヌコンというアサバスカン・インディアンの友人について星野さんが語る想い出から、私が得た、あるキーワードでもあります。

 ケニスは村を離れ、原野の一軒家にたったひとり、昔ながらに暮らす片腕の男です。星野さんたちは、「ケニス、まだ生きてるだろうか」と気にかける。それほど、年齢を重ねている。

 ある時訪ねると、ケニスは4頭のカリブーを仕留めていたそうです。その4頭をどうやって片腕でスモークハウスまで運ぶのか、星野さんは尋ねました。そのときニコニコしながら答えたケニスの言葉は、

  「シチャ(友達よ、というような意味)、
   少しずつ引きずっていくんだ。
   そうするといつの間にか土手の上まで
   動いているんだよ」

 時間というもの、時の尺度というものは、本当は自分だけのものだ。そう教えられました。そしてそれ以上にある種の余韻を感じ、未来への学びを与えてくれる言葉だと直感しました。

 またケニスのこんな様子にも、星野さんは打たれています。


   寝る前に、ケニスはきちんと着替えて床に入る。
   不自由な片腕で脱いだ服を
   きれいにたたんでいるケニスを見ていると
   原野の生活の中で律している、
   ケニスの持つ暮らしの精神のようなものを感じた。


 このケニスという男の話を、私は物事がうまくいかないとき、なかなかいい絵が描けないとき、焦る気持ちに負けそうなとき、思い出してきました。ケニス・ヌコンという会ったこともないアラスカの原野の老人と、その話を私たちに丁寧に伝えてくれた星野道夫さんを思い出しながら、心に唱えるのが「ひとつ ひとつ」というおまじないなのです。

 知らないうちに描きためてきた絵を、どんな風に展示しよう。4月1日の初日を迎えるためには、まだまだやることがいっぱい。ひとつ、ひとつ、と、この手で作業してゆきます。

 3月3日、明日からは、地元沼津の誇る古書店で、素敵な企画展をなさる weekend books さんの「花の降る街」というグループ展に、小さな作品を出品させて頂きます。

 個展、グループ展、ともに、exhibition のページに詳細をUPしました。ご覧の上、ぜひ観にいらしてください。
 





22 Feb 2019




マイちゃんと台所

 相変わらずバタバタしていますが、一つうれしいことは、昭和の台所に「ホワロ」が来たこと。壊れないものだから、古いガステーブルの部品を交換しぃしぃ、相当長い事使っていた。でももうこれだけ使ったんだからいいだろう。とうとう新調した。

 ホワロはリンナイから出ている、通販オンリーの真っ白いガステーブルです。今はシステムキッチンの素敵なビルトインをお持ちの方がほとんどだろうから、もはやあまり知られていないことかもしれない。市販のガステーブルには真っ白と言うのがまずない。近いものがあっても、スイッチのあたりにでかでかと文字の説明があって、すっきりしたものがない。

 これは最近出た新バージョンで、旧バージョンよりスイッチがスタイリッシュ。今まで掃除が面倒で使うことがなかったグリルもすごく有能。「ココットプレート」というのが付いていて、付属のスリットのある蓋を使うとグリル内部のお掃除が(ほぼ)必要ないのです。チキンにハーブミックスを振ってただ焼くだけでも美味しい。余分な油も落ちる。それからお野菜のグリルは今まで電気オーブンでちんたらやってたんだけど、ずっと早く美味しくできる。茄子の焼きびたしなども億劫でなくなった。

 そしてなによりうれしいのが、お鍋をかけた時、背景が白い事。白い画用紙に絵を描く気持ちで、お料理ができるから。素材の色が、目にはっきり映る。それだけで今までよりずっと愉しい気持ちで台所に立てる。
 

青梗菜と豚肉の炒め煮
チキンと長葱のクタクタ煮スープ
タラと野菜のアクアパッツァ風
ニック・ジャガーこと、肉じゃが


 マクラが長すぎました。タイトルの「マイちゃん」の話。

 マイちゃんは、麻衣ちゃんでも、舞ちゃんでも、真衣ちゃんでもなく、マイケル・ジャクソンのことです。彼はわたしやマドンナや百恵ちゃんと同い年で、生きていればちょうど節目の年だ。今まで実は、ほとんど気にして聴いたことがなかった。あんなに人気だったのに、若い頃仕事でいくらか関りもあったのに、まったく興味が持てなかった。

 それが、よく聴いているBBCの 'Words & Music' という好みのラジオ番組があるのですが、そこで一曲聴いてボッ。着火しました。

 その記念すべき曲とは、「スリラー」の一曲目 'Start Something' 。ちょうど年が変わる頃だったし、新しい仕事やプロジェクトも始まって、気持ちにしっくりきた。マイケルは(昔の同僚はみな、まるで友人でも呼ぶようにそう言っていた)こんなにすごかったのか!と、何十年もの時を経てようやくわかった。

 その後、また同じ番組でこんどは「Bad」から、'Man in the Mirror' がかかった。これもよかった。

 というわけで突然変異的に、毎日のようにマイちゃんを聴く日々となりました。

 ではなぜマイケルでなく「マイちゃん」なのか。これは料理家の平野レミさんがそう呼んでいたからです。平野さんはマイケル・ジャクソンが大・大・大好き。もう何年も前に、どこかでレミさんがそう言っているのを観た。

 夫の和田誠さんはそんなレミさんに、マイケル特製時計をプレゼントするなど、理解があったように思えた。でもある日「マイちゃんは天使だ」と言うレミさんに、「天使は整形しないだろ」。それを聞いたレミさんは怒った。しばらくご飯を作らないくらい怒った。そのことを話すレミさんの表情が、何とも言えなかったのです。遠くを見るような、悲しさと怒りと諦めと決心とが入り混じったような、言葉で簡単に表現できない表情でした。

 レミさんのお父さん、仏文学者の平野威馬雄さんは、戦後日本で生まれた多くの恵まれない混血の子どもたちを保護し、ご飯を食べさせてあげた人。そんな平野家でレミさんは一生懸命お手伝いをして、幼い頃から料理の腕を上げたのだと、それは以前から知っていた。

 イギリスにいた頃、TVのトークショーにダイアナ・ロスが出て、マイケルのことでネガティブな質問をされたのを観たことがある。その時彼を擁護するダイアナ・ロスの表情も、レミさんと似ていた。

 マイケル・ジャクソンの歌をイギリスのラジオ番組で聴きながら、これらの話全部が思い出された。

 マイちゃんの歌を聴きながらだと、どんなに忙しくても元気が出る。よし、やろう!という気持ちになれる。そんなパワーがみなぎっている。

 夕飯を作るのがしんどいときも、私にはマイちゃんがいて、ホワロがある。よかった。




そしてこの食器洗いのタワシもある。料理家の有元葉子さんプロデュース、ラバーゼのタワシです。ちょっと贅沢タワシですが、その価値はあります。黒い色に惹かれて手に入れたら、他のが使えなくなりました。 

4 Feb 2019



〇月×日

 1月はとうとう1回しかブログを書けなかった。今まで自分が3人くらいいたらなあ、が口癖だったけれど、いっそ5人に増やしたい。すべきことが増えているのもそうだけど、益々ノロマになっているジブン。覚え書きも兼ね、1月のことをざっくり書き留めておこうと思う。

1月〇日
 父の通院。担当のドクターは大変いい方で、どんなにいい方かというと、いつも笑顔で接してくださる。その笑顔がとにかくあたたかい。そして例えば父が不安げで元気のない表情の時など、父の膝をポンポンと叩き、「大丈夫ですよ、あの戦争を生き抜いてこられたんだから」と言ってくださるような方です。安心してお任せできる、ありがたいドクター。

1月△日
 上京。撮影に日本ヴォーグ社へ。今年から扉絵を担当させて頂く季刊誌「私の花生活」は、押し花の雑誌です。花をテーマにしたアッサンブラージュ的コラージュで箱を使うと、昨年のうちに話がまとまっていました。糊付けせずに置いた状態の方が自然と思い、編集長のAさんにお願いして、スタジオで毎回立ち会わせて頂くことにした。撮影はカメラマンのWさん。予期した以上にすごく美しく撮って頂きよろこぶ。日本ヴォーグ社の社食のおしゃれなこと、社内のそこら中にハンドメイドの美術品が飾られていることに感動しました。3か月に一度、お訪ねできるのがとても愉しみ。

1月◇日と〇日
 1月のHACはルーシー・リーへのオマージュで、パピエマシェ。紙の器を作る。そのサンプルを制作。気に入ったものが仕上がる。ルーシーの色彩を、華やかな中にしっとり感のあるぼかし染め和紙で表すのは、ルーシーへの敬意につながると勝手に納得しながら調達したら、上手く行った様な気がする。

1月△日
 1月HACのキット作り。4色の和紙をずらしてセットすると、虹のようできれい。きれいだなあ、きれいだなあと思いながら人数分まとめる。

1月◇日
 以前からずっとずっと抽象に興味があり、そのモデルを作ろうと、布のモザイクを作る。布は大好きな素材だし、端切れが沢山ある。ミシンでめちゃくちゃ縫いをして、蓑虫が作ったようなものが一つ生まれて、安心して寝る。




1月〇日
 伊豆の国市のギャラリーnoirさんで開催の「箱市」に初参加させてもらうんで、不要なものを出し、見せ方にも工夫をする。お店屋さんごっこみたいで、愉しい。でも値札を付けるのは苦手。値段を決めるのに時間がかかりすぎる。

1月△日
 父のケアマネージャーのAさんがみえる。Aさんにお世話になって、早3年目。この日も愉快な会話が弾む。午後、父をデイサービスに送り出した後、伊豆の国市へ搬入。

1月△日
 沼津市プラサヴェルデにて沼津クラス。この日は水彩クラスの午前から、アートクラスもスタートさせていただくことに。パピエマシェを乾かすのに、時間がかかりそうだったのでやむなく。水彩の方には悪かったのですが許していただく。乾きを早くするため、ドライヤーを使用してたら、お教室のブレーカーが落ちるハプニング。にもかかわらず、皆さん美しく仕上げてくれた。ありがとうございました。




1月◇日
 車の点検。待ち時間にニトリ。パピエマシェの器にうってつけのLEDキャンドルを見つける。4個で300円。(追加でまた買って、うちには今8個これがある。夜になるとうれしくなる。)




1月〇日
 東京HAC。沼津クラスのようにブレーカーが落ちないよう、まずスタッフのTさんに確認する。3台まで同時に使えるとのこと。暖房地獄。なかなかに過酷なレッスンでした。でも、みんなに喜んでいただけてよかった。

1月△日
 4月の個展リーフレットのためのインタビューを受ける。三島の「さんしんギャラリー善」へ。書いてくださるのは、ベテラン編集者の寺坂厚子さん。出版関係に共通の話題がいくつかあり、時間を忘れて話し込んでしまいました。よい出会いに感謝。

1月◇日と〇日
 東京の水彩レッスン。4月の個展のために駆け出しの頃の作品を引っ張り出しているので、いくつかほんの一部ですがお見せした。今とはかなり違うスタイル。興味深そうにご覧頂けた。◇日の放課後は、5月に予定しているHAC UK ART TRIP の打ち合わせをベッキーさんと。Egg というカフェを開拓。そのビルの7階にある、豊島区立郷土資料館が面白そうだったので、翌日ひとりで行って見た。池袋モンパルナスと言われ、戦前画家が多く暮らした地区。芸術家のための賃貸住宅群などもあったそうで、そのジオラマに見入る。戦後の池袋駅前に広がる闇市もジオラマになっていた。




1月△日
 伊豆の国市ギャラリーnoirさんへ、父とミニドライブ。箱市と、オーナーの平井さんの奥さま、直子さんの洋裁のお弟子さんたちによる展覧会を拝見する。お洋服展には、沼津クラスの生徒さんや同級生が出品している。どの方のお洋服も素敵で、お顔が浮かぶ。箱市で、混ざり糸のニットキャップ購入。父も平井さんとおしゃべり出来て嬉しそう。帰りに遅い初詣。三島大社で久々、大吉のおみくじを引きました。タッチウッド!




1月◇日
 2月のアートクラス、水彩クラスのノーティスをする。アートクラスは素材集めと仕上がり予想を並行して頭の中で進め、よしと思ったらまず皆さんにノーティスする。人数が月末までに確定し次第、素材を発注したり探しに出かける。予算も立てないといけない。毎回アクロバットみたいなことをしている。不思議と着地点があり、スリリングながら、なんとか上手くいく。これも、面白そうに参加してくださる皆さんのおかげです。感謝。




1月〇日
 掃除。4月の個展の撮影用作品をそろえる。

1月△日
 さんしんギャラリー善のFさんと、カメラマンのMさんを迎える。リーフレット用の撮影。お二人とも、さすがプロ。狭いスペースをものともせずに、サクサクと決断し、どんどん撮影してくださる。その合間に、Fさんがいろいろ励ましの言葉を下さる。褒めていただくと木に上るタイプなので、Fさんにぜひまた遊びに来てくださいとお願いする。Mさんは世界を旅して撮影している写真家。会話の中で心に響く言葉があると、すぐにA4のホルダーに留められた紙に大きな字でメモされる。気持ちのいい方。年末に、二度目のさんしんギャラリー展があるそうです。旅の話、紙の話、制作への思い・・・。撮影終了後のお茶も愉しく。

1月◇日
 父のボランティアのハーモニカ演奏(介護施設で月に一度やっている)の、歌詞カードを作る。今回から当分私が多忙を極めそうなので、ウクレレ演奏はやめることに。歌詞カード作りと、当日のMCサポートのみにする。今月もギリギリになってしまったが、前日の夜、やっと仕上げてPDFで施設に送信。これをスタッフの方が人数分コピーし、きれいな表紙を付けて当日利用者の皆様に配られる。ありがたいです。

1月〇日
 ボランティア当日は、午前中に父と音合わせをする。女性が歌いやすいキーのハーモニカにしてもらうため。利用者さんのほとんどは女性だから。この日は男性が5~6人おられた。そして父が「雪山讃歌」などを選曲したせいか、よく歌ってくださった。ヤッター、という感じ。父が演奏する姿と皆さんの歌声を動画に撮って、インスタグラムに投稿したら、とても多くの方が観てくださっている。コメントも沢山いただいた。父に伝えるとうれしそう。ありがとうございます。



 
 というような一か月でした。書き出したら、ンー、ナンカ、スッキリシタミタイナキガスルゥ。←大坂なおみさん風に。
 

11 Jan 2019



2019

 またまたすっかり間が空いてしまいましたが、おかげさまで元気にやっています。ちっちゃな文字でみっちり書き込んだ「やることリスト」に、矢印が飛んだり、ペケを付けたり、「ぜったい!」などと書き込んだりの日々。残された項目を見ると、スーパーでの買い物や父の病院・・・どころではないボリュームを抱えてはいるものの、ここへ来て行が減ってきたのにはほっとします。

 皆さまの新しい年、健やかで朗らかでありますようにとお祈りします。

 Instagram の方には、いくつか投稿していました。その中の一つ、ジャン・コクトーの言葉を紹介します。若かった一時期、図書館で借りては読書ノートに書き写していたコクトーの本。好きな言葉が沢山ある。




君の作品に最初に与えられた批判を、
注意深く聞き給え。
批評家が好まないのはどこなのか。
そこを耕すのだ。
それこそが君の作品の際立った部分であり
保持する価値があるところ。
批判されたなら、そこを耕せ。
それこそが君自身なのだから。

ジャン・コクトー



 自分の作品に対し、最初に受けた批判のようなものがあったとしたら、あれだな、と思い当たることがある。イラストレーターになろうと模索していた若い日、同僚の男子から「(絵は)色でごまかせるからな」と言われた。その頃はパステルで人物を描いていた。ファッションイラストレーションのようなものを、大きな画面いっぱいにカラフルな色彩で描いていた。投げつけられたその一言に、たぶん私はきょとんとしたと思う。意味がよくわからなかった。

 でもしばらくして、彼はやんわりと批判したのだなとわかった。グラフィックデザイナーとして、センスも才能もある同僚だった。

 そういえば、もっと遡って、小学生の頃、担任の先生に、「河田の絵はいいんだけど、色を塗るとだめになる」と言われたこともあった。そのときも私の反応は「きょとん」だったような気がする。自分では、全くそう思っていなかったからだと思う。

 そんなわけでか、「色」は私の中でもっとも大切にすべき何かだと、ずっと思ってきたフシがある。コクトーの言葉を読んだ時、ストンと腑に落ちるものがあったのも、このような経験からかもしれない。

 一部の生徒さんから時々、「もっと注意してください」とリクエストがあるけれど、私はあまりよい批評家ではない。生徒さんには、私の感じるよい所だけを伝えて、そこをご自身で伸ばしてほしい。私のうかつな注意で、その方の大事な可能性を摘むことになってはいけない。自分が「よいところ」として伝える何かが、願わくばコクトーの言う「批評家の好まぬ部分」であり、その生徒さんが「耕すべき土地」であれ。そこは自分の講師としての技量。今年も力を試されながら、佳き一年としたいです。 


15 Dec 2018



類は友を呼ぶ

 年の瀬は、人との縁を思う季節。慌ただしい中に、様々なゆかりの方々のお顔が浮かぶ。

 先日のこと。打ち合わせに表参道、スパイラルで待ち合わせをする。早めに着いたら、何か面白そうな展覧会。ピンクの変わったドレスを纏った女性が、静かなダンスパフォーマンスをして、人だかりがしている。私も引き寄せられるように足を踏み入れたところ、

「ヒロさん!」

 見ると友人のSatomiさんではないですか。なんという偶然! なんというピンポイント! しかも、先日、英国の知人でジュエリー作家、齋藤佳世さんの日本初個展をインスタグラムで紹介したところ、たまたま近くに用事のあったSatomiさん。初日に訪ねて、ピアスを求めてくださった。その小さな葉が二枚寄り添う、シルバーの素敵なピアスも耳に輝いていた。「今度見せてね」と言ったものの、それはいつかの先のことと思っていたから、よほどの強い引き寄せパワーが働いたに違いない。

 Satomiさん、佳世さん、彼女の義理の妹に当たるイギリスの親友ミリアム・エスコフェット、それからその日のミーティングの相手、ベッキーさん、それからそれから、打ち合わせはCall で、だったので、Callスタッフの西原さん。強い will power を持っている人ばかり。起こるべくして起こったことのようでもある。いや、でもでもやっぱりすごいシンクロニシティ。

 Satomiさんにベッキーさん、西原さんをご紹介すると、愛らしい笑顔の目が、一層三日月のようになって喜んでくださった。Satomiさんの笑顔は本当に素敵で、こんな方をお嫁さんにもらったご主人、お母さんに持った息子さんは、とても幸運だといつも思う。彼女とのご縁も不思議なもので、もう10年以上前、星野道夫さんの映画「ガイア・シンフォニー」を観に行ったときに、ロビーでなんとはなしに話したのが始まりでした。

 大人になってから、そんな風に、なんとなく親しくなった方々が、他に何人もいる。友情には力やストレスがかかってはダメで、お互いに自分の空気、日常を纏いながら距離を保ち、たとえ滅多に会えなくても、そこはかとなく大切に想い想われるというのが嬉しく有難いと、歳を重ねるごとに思う。

 私が長年主宰するコラージュと水彩のお教室も、そのような仲間の集まりでありたいし、実際そうであることが自慢です。

 「類は友を呼ぶ」という言葉の意味を、作家のリチャード・バックは著作、『イリュージョン』の中で、こう述べている。


    やりたいことだけをだな、やり続けていくと、
    類は友を呼ぶの法則に従って、
    俺たちから何かを学ぼうと思う人達を引きつける。
    そして俺たちもまた、その人達から
    何かを学ばなくてはいけない。





 12月は忙しい月で、そんな類友クラスも参加者が少なめ。だからこそいつにも増して、面白いレッスンにしたくなる。

 水彩クラスは東京はお休みで、沼津だけになります。年賀状のための絵にしようか、初春に咲く花?などと色々考えてみましたが、どれもピンとこない。そこで思いついたのが、手彩色。題材に、1543年のフランスの書物の扉絵を選びました。クリスマスに飾って頂けるよう、額装にも工夫します。

 中世の宗教画や本の扉絵、挿絵は、銅版画や木版画に、手彩色で仕上げられていた。イラストレーションの起源です。当時の絵師や修道士の気持ちになって、と言ったら大げさだけれど、筆先の使い方や色の濃度の調整など、よい練習になると思います。lessonページに、持ち物を更新しました。

 丁寧に作業すると心落ち着く。師走はやることてんこ盛り・・・ではあるのですが、その気持ちを忘れたくない。最近自分は、ますます急ぐことが苦手になってきた。ゆっくり仕事をなすと、仕事が悦びに変わるから。悦びから生まれる仕事は、心からの仕事。これからも、人に心が伝わる仕事ができたらと願います。
 



P.S. ちょっと早めの還暦祝い、いただきました。ホワイトキルト。還暦とは、一周巡っての新たなスタート。白い色が気持ちに沿います。Yさん、素晴らしい作品を、本当にありがとうございました。


3 Dec 2018




Viv さんのベレーと小さな絵

 思いがけないプレゼント。今一緒に新しいプロジェクトをプランしている、イギリス人の友人、Becky さんから頂きました。私が Viv Hen'steeth さんのファンであることを知っていた・・・にしても、サプライズ作戦は大成功! その日はうれしくてうれしくて、家の中でもずっと被っていました。自分で言うのもナンですけど、似合うんです。

 Viv さんを知ったのは、同じくイギリスの友人 Helen さんから。いつだったか彼女が気になっている女性アーティストの名をいくつか、メモに書いて教えてくれた。「Hen'steeth?」。不思議な名前だと思い尋ねると、英語の独特の言い回しだという。「めったにないもの、まるで『雌鶏の歯』みたいにね」と教わった。もちろん、雄鶏にだって歯はない。

 そのうちインスタグラムを始めた。Viv さんのアカウントを発見してフォローしたところ、びっくりするようなコメントが返って来た。私が雑誌 'Country Living' に描いたイラストレーションを、今も大事に取ってあるというのです。ここで出会えたことに、とても感激しているとも。

 11年もの長きにわたり、毎月イラストレーションを掲載してもらった Country Living は人気雑誌で、発行部数もかなりあり、イギリスはもとより世界に多くの読者がいる。同じ言葉を、有難いことに他にも何人かから聞いている。私の小さな絵に心を寄せてくれた人との出会い。どんなに有難くうれしいことか。よい仕事に恵まれたことにただ感謝です。

 当時のイラストレーションから、特に気に入っているもの、季節感のあるガーデニングに因んだもの12枚を選んで、2019年のカレンダーにしました。A4サイズを3等分した短冊形のシートのみというシンプルなものですが、先日のグループ展でも好評でした。お好みのクリップやプッシュピンで留めて使ってください。

 グループ展のあと、沼津が誇る人気古書店でありセレクトショップでもある 'weekend books' さんに、扱ってもらっています。一部1,080円。





 買いに行けないわ、という方には郵送でも受け付けています。ご希望の方は、河田まで「件名:カレンダー」とし、メールでご連絡ください。メールアドレスは、メニューバーの lesson ページにあるお問い合わせ先と同じです。お待ちしています♪




 そして、ベレーにこんなに素敵な刺繍をされる Viv Hen'steeth さんに、来年もしかしたら会えるかもしれない。実現しますように。Fingers Crossed!