6 Aug 2021

 


続・類は友を呼ぶの法則 その1

 英国の刺繍作家でデザイナー、スタイリストでイベントプロデューサーでもある Caroline Zoob さんのことを知ったのは、今から20年ほど前の雑誌、Country Living の誌面でした。当時私はこの雑誌の仕事を始めて3年目。ロンドンから日本に帰国することになり、アートディレクターのヘレン・ブラツビーが、これから私の絵をどうやって使ってゆこうかと考えあぐねていた頃だと思う。なのでこの号に私の絵は掲載されていない。

 その後、当時はまだFAXだったけれど、やり取りを続け、フェデックスで作品を送ることになり、11年も仕事を続けることができた。ヘレンには今も感謝している。

 とにかくこのCaroline の、明快で澄んだ、どこか音楽的なセンスを感じる作品群には一発で参りました。特に、ミシンのボタンホールステッチでアップリケをするテクニックがスタイリッシュでありながら温かく、完全にノックアウトされた。

 その数年後、長期滞在した際には、彼女のグッズを扱うショップがロンドンのクラッパム・ジャンクション駅付近にあるとどこかで読み(当時はスマホはおろか、PCを持つ人もまだ少ない時代)、当てずっぽうに訪ねてみた。でも内装工事中で、お店はお休み。Carolineデザインの愛らしいマグカップを、内装職人の肩越しにうらめしく眺めたのを覚えている。

 滞在中スコットランドに旅した時に、たまたま入った書店で新刊 'Childhood Treasures' が目に飛び込んだ。迷わず手に入れた。





 そんな風に憧れのデザイナーであったCarolineさんと現実にご縁を得る機会を作ってくれたのは、東京で偶然私の個展を見てくれて以来の親しい友、Helenさんだ。

 帰国後ほどなくして、私が毎年個展を開かせてもらっていた麻布十番のギャラリーは、通りに面したガラス張りの広々とした明るいギャラリー。ここでは本当に多くのよき出会いに恵まれた。

 Helenさんはその日、ギャラリーの前でアメリカ人の友人とタクシーを降りたそうだ。「あら、あなたの好きそうな展覧会をやっているわよ」。友人に促され、ふたりで会場に入った途端、Helenさんはビックリした。母国で見慣れた小さなイラストレーションが、会場いっぱいに飾られていたから。Helenさんは、私のCountry Living での仕事を、切り抜いて取っておくほど気に入ってくれていたそうで、まさか遠い日本で、このイラストレーターの絵を観るなんて、想像もしていなかった。

 眼をまん丸にしたHelenさんと会場で話をし出したら、他にも「えっ!?」な偶然が重なっているのがわかり、けっして大げさでなく、これは何か運命的な出会いかもしれないと、お互い感じざるを得なくなった。

 それからもう十数年は経ちますが、遠く離れても途切れることなく親しい関係が続くのは、寛大で優しく、知識豊かでありながら、日本人以上に慎み深いHelenさんのお人柄に、私が多くを学んでいるからだと思う。それからもうひとつ大事なこと。共通のユーモアのセンス。これって友情に不可欠なエッセンスだと私は常々思うのですが、どう思いますか?

 脱線しました。急いでひとつふたつみっつ、駅を飛ばしますと、Helenさんは、なんとCarolineさんと友人であったのです! Carolineさんに会えるかもしれない!!

 このご縁には、もともとHelenさんの紹介で仲良しになった、日本在住のBeckyさんの助けもとてつもなく大きかった。Helen さん、Becky さん、二人のおかげで、私たちHACの有志で敢行した二年前の英国アートツアー(代理店に頼らず、ベッキーさんとゼロから計画を立てた、滅多にない手作りの旅)の際、なんと、Carolineさんのワークルームで、ワークショップの交換をすると言う、みんなして一生の思い出に残る素晴らしい交流を刻むことが出来たんです。ミラクル!!

つづく



 短く枝を切り戻した株から、この暑さにもめげず、フォックスグローブが短くけなげに咲いています。刻々暑くなってゆく朝の草取りも、この子たちのおかげで心穏やかに。