I ❤ 野菜
子どもの頃、夏のおやつはアイスかかき氷、またはトウモロコシかトマトだった。いや、スイカだってあったし、時には、いえ、ごくまれには、メロンやパイナップルだって食べたことはあるけれど、果物の魅力はその姿にあって、幼い私はなぜか野菜の味の方が好きだった。キュウリにお塩を振ってかじるのも好きだった。
ご近所のEさんは、ご夫婦でお庭をきれいに作られていて、通りに面した家庭菜園も見事。毎朝早くから手を入れて、もちろん無農薬で丹精込めて育てたお野菜を、ご主人が収穫している。
先日来、続けて二回も立派な茄子を一抱えずつ頂いた。茄子は大好き。その eggplant と呼ばれる形も、茄子紺と云う底知れない深いおもての色も好き。淡白な味わいながら中年以降に突然味を出す名脇役の役者さんみたいに、一旦鍋やボウルに入れたらいろんな役柄を丁寧にこなす。尊敬しています。本当に。
instagramに今朝アップしたのはまず、向田邦子さんレシピの「茄子の田舎煮」。Eさんのお茄子で作るのは、もうこの夏3回目です。何回だって作りますよん。だって美味しいんだもん。山のように煮ても、すぐなくなっちゃう。だって美味しいんだもん!
まず茄子のヘタを取って、縦二つに切り、皮目に斜め格子の包丁を入れます。それから大きめに乱切り。小さいと溶けちゃうから。薄い塩水に浸けてアクを出しザルで水切りします。
鷹の爪を2~3ミリ幅で切る。種は取っておく。この種コレクションがある程度の量になった時役立つ、イギリスでKさんに教わった混ぜご飯があるのだ。またいつか紹介します。
少し前、深めのフライパンを買った。ステンレス派になるぞと意気込んだけれど、使いこなせずあっさり降参しました。やっぱりコーティングのフライパンはすごく便利。チャーハンも焼きそばもパスタも煮物も何でも来い! そんなフライパン、または厚手の鍋でもいいので、サラダ油を熱し茄子と鷹の爪を炒める。よく炒めます。
そこに水をひたひたまで入れ、私は茅乃舎のだしを1パックとお砂糖を結構たっぷり入れる。向田さんレシピだとお出しは入れず、茄子6個に大さじ2杯のお砂糖とある。落し蓋をして中火でコトコト煮る。
お茄子がやわらかくなってきたら、向田さんはシンプルにお醤油ですが、私はめんつゆで味付け。屋上屋を架すようだけど、よりこっくり仕上がるように思う。
再び落し蓋で、お茄子がしっかり味を含むまで煮て出来上がりです。あら熱が取れたら、保存容器に移し、冷めたら冷蔵庫へ。翌日が最高に美味しいです。
一方こちらは洋風の一品。平野レミさんのだいぶ以前のお料理本『お料理しましょ』より、その名も「ナソワーズサラダ」。
ネーミングの天才レミさん。サラダ・ニソワーズのニソワーズから取った・・・とはわかっても、それは何? フランス、ニース風っていうことで、様々な野菜をツナやアンチョビや黒オリーブ、ヴィネグレットソースで頂くとニース風サラダになるということが、Googleのおかげで瞬時にわかった。ひとつ利口になった。
レミさんレシピでは、茄子を茶せん切りにして直火で焼いて皮をむくとある。パプリカなどでも直火で焼いて皮をむくとよくあるけれど、これは手間がかかるし火傷しそうになって、覚悟の無い私は作る前からつらくなってしまう。なので、電子レンジで蒸すことにします。
先にピーラーで皮をむいて、ラップで包み、レンジでふっくらやわらかくなるまで加熱しましょう。取り出したら注意深くラップを剥がし(熱いから)、しばらく放置(熱いから)。あら熱が取れたらおもむろに縦に裂き、冷まします。
ドレッシングを作ります。私はキューピーのイタリアンドレッシングをベースにします。和風でも中華でも、このイタリアンドレッシングからアレンジして作ります。ニース風も例外ではない。アンチョビー、にんにく、玉ねぎのみじん切りを混ぜて、レモン風味のオリーブオイルをタラーッと回して香りを加えた。
このソースに冷めた蒸し茄子と黒オリーブ、色合いのきれいなトマトやパプリカをカットして、マリネのように冷蔵庫で漬け込んで完成です。パセリを散らしたら、もう立派な前菜ですね。
もう一丁、オマケ。この混ぜご飯も大好きで、以前はよく作りましたが、久しぶりに作ったところ、この組み合わせの普遍性にあらためて納得。やっぱり美味しい。
これもレミさんレシピより、です。私の身体は、実は半部以上がレミさんレシピでできています。素材と素材のハーモニーやリズムはレミさんが歌手であることと無縁じゃないと思う。心優しく、でもピリッとシャキッと潔いところ、さりげなく国際性に富んでいてお洒落なところ、それでいて庶民のお財布感覚だし、ちょっとワイルドで乱暴なところも魅力。レミさんのおかげで、様々な食材を知ったし、アレンジの仕方も知らない間に覚えたような気がする。本当に大ファンです。
搾菜は他にも高峰秀子さんレシピ(『台所のオーケストラ』)で、冷ややっこのたれの絶品があり、冷蔵庫に桃屋の瓶詰めを常備しています。
その搾菜をまずみじん切り。それから油揚げ。油抜きしてから一枚ずつラップに包み冷凍してあるので、凍ったままお醤油とお酒を混ぜたタレに浸して、両面を弱火のグリルかオーブントースターで炙り焼きにします。途中お醤油たれをつけ直すと一層香ばしい。焼き上がったら、細切りにします。
温かいご飯に、搾菜とお揚げの香ばしいのを混ぜて、白胡麻を振って、あっという間に出来上がり。レミさんは、三つ葉を散らしてる。お代わりしたくなる美味しさです。
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美味しいものをこしらえて食べることは、自分を守るし人を守る。よかったら、ぜひ作ってみてください。