3 May 2018




「きつねうどん」と心の余裕

 連休中の過ごし方。定番は庭仕事です。先日も書いたように、周囲の様子が違うので、どうも落ち着かない。そういう時は、確実に成果のあらわれる手仕事や庭仕事が、精神衛生上とてもよろしい。アレ、今日も何もしないで終わっちゃった、という間に連休も終わっちゃった、とならないために。

 と言うわけで、すでに緑のごみ袋、6つも仕上げました。この超・狭い庭でこの数。どんなに草ボーボーだったことか、想像されると恥ずかしいのですが、黄色やピンクの草の花も可愛いもので、つい先延ばしにしていた・・・というのは言い訳です。

 廊下のような狭いスペース、「蔦の細道」に敷いたレンガも、ホースの水とたわしでゴシゴシ磨いたおかげで、水彩レッスンでよく使う色、バーントシェンナみたいな赤茶色にやっと戻った。温かくなったころから急に勢いを増したアイビーも、余分な枝をカットする。

 蔦の細道(と言っても3mちょっと)の両側には、たった5本ほどの苗から増やした、この緑の葉が繁っているのです。日当たりも水はけもよくない地面には、アイビーくらい頑丈な植物でないとなかなか繁殖しないだろうと植えたものですが、季節を問わず愉しめる。花が全くない時にも、枝を切って挿すと、そこから根っこが伸びて、またどこかに植えたくなります。「我がアイビーよ永遠に」です。

 今年はバラをどうしようか、迷っています。いつだったか、青木和子さんがTVで? 雑誌で? お会いした時? ・・・忘れましたが、バラをやめたと仰っていた。バラのために薬剤を使わなくなって、体調もすっきりしたような気がすると。私も毎年、虫の退治に気が進まなくなっている。

 殺虫剤が一切いらない植物と言うのもある。紫陽花や鉄線、お隣のSさんに頂いてだいぶ増えた紫蘭などは、放っておいても美しい花が咲く。そういう手間のかからない植物、おそらくは日本古来の花々に、少しずつ切り替えてゆけたらと思う。 

 虫と言えば、昨日は椿の剪定をしました。あの「にっくき」チャドクガが卵を産む前に、急いでやった。きらきら光る新芽は美しいが、込み入った枝をチョキチョキ切り、風通しを良くしてあげた。

 チャドクガに掛かる「にっくき」という形容詞を初めて聞いたのは、庄野潤三先生のご長女、夏子さんからのお手紙でした。チャドクガの幼虫が持つ、あの無数の針のスティルス攻撃に遭った悲惨な経験が、私にもある。夏子さんが言葉で彼らに復讐してくれた。スカッとして、いまやチャドクガの「名字」と言ってもいい。

 夏子さんからは、「チャドクガにはキンチョールがいいわよ」ともアドバイス頂きました。剪定後も念のため、定期的に「ハエハエカカカ(チャドクガも)」を吹き付けなくてはいけません。

 庄野先生の物語の中には、夏子さんがたびたび登場され、読者には weekend books の美和子さんのように、夏子さんファンがとても多い。大掃除や木の剪定に、先生と奥さまの暮らす山の上のお家へ夏子さんは行かれる。一仕事終えてお昼時になると、奥さまが夏子さんの好物、きつねうどんを作られる。


    お昼は、妻は長女の好きなさぬきうどんの
    きつねうどんを作って食べさせてやる。
    長女よろこぶ。

           『けい子ちゃんのゆかた』より

 
 このシーンが大好きで、何度も読み返してしまう。読むたび、私もきつねうどんが食べたくなる。で、庄野先生ご一家のひそみに倣い、昨日のお昼、作りましたヨ。きつねうどん!


 


 食べる事と言えば、大好きなお二人の、新しい料理のご本が出版されています。

 左は『旬の野菜でシンプル・イタリアン』。 今まで忘年会やオープニングのケータリングで何度もお世話になっている、東京小石川にある「シンプル・リトル・クチーナ」オーナーシェフ、佐藤夢之介さんの初めてのご本! 先日の個展でお祝いにと、新刊情報をキャッチされた永田ヒロ子さん、京子さんから頂きました。

 夢之介さんは、お肉や卵を使いません。チーズ以外の乳製品も使いません。「なのに物足りなくない、お肉好きも大満足の美味しいイタリアン」。この帯の言葉の通りです。本の中で夢之介さんが語る、お料理や素材への真摯な言葉も素晴らしい。世に出るべくして出た一冊。ファンとして、本当にうれしく思います。

 右はNHK「あさイチ」にレギュラー出演でもお馴染みの、料理家であり、スタイリストであり、キッチンツールのスペシャリスト、野口英世さんのご本、『フライパンクックブック』です。光栄にも、親友の京子さんと一緒に銀座の個展にいらしてくださった、野口さんご自身から頂戴しました。

 さっそく大好物の焼きそば、「上海風の海鮮焼きそば」から作りました! おーいーしーー! また作りたい。すぐにでも。

 ドイツ製、鉄のフライパン 'turk' を使われてのご本ではありますが、うちの Vita Craft のフライパンでももちろんオッケー。

 野口さんは、TVで拝見するときと、直にお目にかかったときのギャップが何もない。いつも自然体。飾らないお人柄が、よいお仕事を次々生むのだと思います。

 昨秋から、介護と仕事と家事で、脇目もふらず前のめりに突っ走らざるを得なかった私ですが、やっとお料理にも少しずつ心が向かうようになってきた。この素敵なお二人とのご縁に感謝して、久々に新しいお料理にも挑戦したくなってきました。