23 Aug 2016



笑いと涙の間に

 毎朝BBCのラジオニュースを聴くのが日課ということは、前にも書きました。今日は訃報。ハーモニカ奏者のトゥーツ・シールマンスが94歳で亡くなったという。

 特に熱心なファンという訳ではない私でも、この人のハーモニカの音色は、耳にするたび胸が震える。耳から入った音が最短距離でハートに届き、瞬きの間に深く沁みる。

 映画「真夜中のカーボーイ」のテーマソング。そしてセサミ・ストリートのエンディングに流れるテーマ。この2曲のためだけにだって、長年に渡ってあらゆる音楽に貢献したベルギー出身のジャズミュージシャンの魂に、祈る理由は充分ある。

 ニュースの最後、シールマンスのある言葉が紹介された。


  I feel best in that little space between a smile and a tear.

 笑いと涙の間にあるささやかな空間にいるのが、私にはいちばん調子いいんだ。


 その「ささやかな空間」とは、手のひらに載る小さなハーモニカそのもののことのようにも思え、70年の絶え間ない音楽家の仕事に胸が熱くなった。

 夏は生命の力に引っ張られて、日々が目まぐるしく過ぎてゆく。たまっていた仕事や家事を片付けながら平和を祈り、オリンピックに感動の涙をする。旧友との終の別れ。いつもとは違う台風の進路。遊びに来た成長力120%のチビらにいっぱい笑わせてもらい、若い姪からは弾むパワーをもらう。

 私のハーモニカは小さな机とささやかな画材。秋に向かって、いよいよ制作に集中してゆきたい。

 ウクレレと歌も、友人に「手持ちにある楽器と今の自分の声や能力で、やれるだけやる」という励ましをもらってから、ヘタなりに再開。練習中の一曲はホーギー・カーマイケルの名曲、'Skylark'。詞と、そのことばの音、メロディの絡み具合が、歌ってとても気持ちのいい曲で気に入っています。

 そうだ、笑いと涙の間の細い一筋を縫い上げるひばり・・・を想像しながら、今夜は練習してみましょう。