28 Oct 2016



アイデアソース

 この箱は、何年も前に作ったもの。刺繍や編み物の作家で、テキスタイル・デザイナーとしても活躍する、カッフェ・ファセットさんの本からインスピレーションを得たものです。いろんなサイズで作って小物をそっとしたため、個展でご覧いただいたこともあります。

 日本ではケイフ・ファセットと表記されていますが、どちらが正しい音に近いのでしょう。イギリス人の友人に尋ねたところ、2人中2人が「カッフェ」と言っていたので、私はそう呼んでいます。

 このファセットさんの存在を知ったのは、ちょうどイギリスに長期の取材旅行に出掛ける少し前だったと思う。かれこれ30年も前のこと。古本で買ったクラフトの専門雑誌がきっかけでした。墓石の表面に生えた地衣類が描く自然の模様をヒントに、編み物の図案をデザインをしているアーティストが紹介されていて、それがファセットさんだったのです。

 イギリスに行って、日本と違う英国の、どこか黄昏感漂う色彩に夢中になった私は、帰国後に洋書店で見つけた彼の2冊の作品集を恰好の教科書と定め、それからずっと大事にしています。

 ファセットさん自身も、生まれ育ったカリフォルニアとは違う、あの国の色彩の世界のとりこになって移り住んだのだと知れば、勝手に親近感を感じ、一層ファンになったものでした。 
 


 11月のレッスンではまず、ファセットさんの色彩のセンスや、彼自身のアイデアソース、一体あのカラフルな作品群を、どこからアイデアを得て制作しているのかなど、ファセットさんから私の受けた感動をお話ししました。特にロンドンのV&Aミュージアムの収蔵品からインパイアされた作品が素晴らしい。それに蚤の市の掘り出し物から生まれた作品も。

 自分が、あ、いいな、と思った何もかもから、躊躇せずに影響を受けている。素直な眼差し。子供のような瞳の輝き。

 そしてそんなファセットさんの本こそを、今回私たちはアイデアソースにさせてもらったのでした。ニットを編むように水彩で図案を描いて、それをもとにコラージュ。皆さん、とても愉しんでくださった様子。大いに手ごたえを感じることができました。やってよかった。ファセットさんに感謝です。




 切手の小箱は、私の紙入れ。小さくカットした、小さな絵を描くための水彩紙にちょうどいいサイズなんです。庭に落ちていた雀の卵。それに最近よく描いている、ちっちゃな抽象画とともに。