10 Nov 2023




〇月✕日

 来年のミニカレンダーのデザインが決まりました。小さな水彩画を12枚。現在の興味の的である風景画、landscape を4点入れました。それに花と、小鳥と、美味しいもの。「花鳥風食」です。

 月末前には、Shopのページにて販売をスタートいたします。いつものようにアナログな方式ですが、どうぞよろしくお願いします。今年もデイリーワインのごとく「3 for 2」、2冊お買い上げの方には1冊プレゼントさせて頂きます。長3サイズの封筒にぴったり収まるサイズです。年末年始の小さなプレゼントにいかがでしょう?


〇月✕日

 朝歩きの小径に八重の桜が咲いていました。11月だと言うのに。植物も生き物も、みんな勘が狂ってしまいますね。

 かく言う私も、まるでホットフラッシュにも似たこの季節外れの暑さに、だるくてだるくて何もやる気が起こらない日がありました。そういうときは、許される時間を見計らい、迷わずゴロンとします。10分でも眠ることが出来たら、スキッとします。



 しかし今朝ご近所のTさんから、こんな明るい話題を聞いたのには気分が上がりました。お庭のフジバカマの花に、渡りの蝶、アサギマダラがやってきたというのです。しかも二年続けて!




 アサギマダラは東南アジアや台湾から、2500キロもの旅をしてやってくるのだとか。Tさんはスマホの画像を見せてくださった。

 彼はきっと去年の長旅の途中で、このTさんの庭のフジバカマをピンポイントで見つけて、あの小さな体で、そしてたった一人で、長い長い距離を飛んで、またちゃんとやってきたのです。

 久しぶりでお目にかかったTさんに近況を尋ねたら「最近あったことって言ったらこれくらいかな」と、この出来事を笑顔で教えてくださった。その控えめなお優しさとアサギマダラのお話に、気持ちがほんのり明るくなって、一日の心の栄養を頂きました。


〇月✕日

 美味しい頂き物。


 こんな美味しい焼き菓子があるのでしょうか?ちょっと塩気があるのがいい。噛み応え、食べ応えがあって、一切れ=小さなケーキと言ってもいいくらいの余韻を残してくれます。

 お若い友人や知人の活躍を目にすることが多くなりました。自営業ですし、ある時期までは先輩や同世代とのお付き合いがほとんどだったのです。最近、自分の子どもと言っていい世代の方々とお話していると、何事も容易くはないこの時代に、おそらくは悩みながらも方向をしっかり見定め、皆さんご自分のオールを大きく動かしながら進んでいる。様々な海原に、勇気をもって漕いでいかれている。その姿に、こちらも力をもらいます。

 この焼き菓子をくださったご夫婦も、そんなお友だちの中のお二人です。きっとこのクッキーを、研鑽を重ねて焼かれている方々も、友人たちと同世代ではないでしょうか。

 ご馳走さまでした。

 ※SHIZUKA Patisserie という、東京の人気のお店のお菓子だそうです。


〇月✕日

 小さな庭のテーブルに、カバーを縫いました。

 懸案でした。このIKEAの定番、リーズナブルなテーブルと椅子は、英国の雑誌 Country Living に取材されるようなお庭にもよく置かれていて、「あ、いっしょ!」と喜びます。ペイントされている場合もある。うちのはだいぶ年季が入ってきていい色になってきましたが、テーブルの板の隙間がお茶を飲むときなどに不安定なのが気になっていました。しっかりしたテーブルクロスが欲しかったのです。



 以前TVで観たターシャ・テューダーさんのポーチに置かれたテーブル。クロスが花柄でした。ターシャさんは毎日夕方の4時になると必ず、そこでお茶の時間を愉しまれていたそうです。そんなゆったりした時間の使い方、憧れです。それで花柄の布を、ずっと探していたのです。

 大谷翔平さんはWBCの決勝戦の前に、「今日だけは、憧れるのをやめましょう」と言いました。すごく印象的な場面でした。と言うことは、みんなずっと憧れを糧にプレイしてきたのだということ。野球の代表選手じゃなくても、私も幼い頃からずっと、その大きさは様々なれど、「憧れ」に導かれてきたような気がします。

 「人は、好きな物がいっぱいある方がいい」

 これは作家の色川武大さんの本で読んで印象に残った部分から、勝手に自分流に胸に刻んだ言葉。ひとつの対象だけに憧れを集中するのではなく、いくつもの好きを持つ。それが自分を育ててくれる。

 英国の美術大学に留学された妹さんを持つ方から、似た話を聞きました。大学の最初の授業で妹さんが何を教わったか。

 「外に出なさい」だったそうです。そして「好きな物をみつけなさい」「いくつでもみつけなさい」「それを自分がなぜ好きなのか、どこに魅かれたのか、すべて書き出しなさい」。これがその日から始まる芸術教育のプロローグ。

 みんなに同じ方向を向かせるのでもなく、重箱の隅をつつくような教え方でもなくて、個人を重視した教育。作品を作ることは、ひとりひとりが自分自身に、何度も何度も出会う旅ですね。




 こんなに小さな、路地裏のような庭なのに、数えたら小さな木が10本以上ありました。これはそのうちの3本。気に入ったスケッチが描けた!・・・ワリに、instagramでの「いいね」は少ない。そんなものですね。

 これから冬になってゆきますが、寒くても庭に出て、絵を描けたらいいな。願いも込めての、テーブルカバーです。