愉しみな朝ドラ
「風薫る」。いい最終回でした。ボロボロに泣きました。「優しいんだよ」。ラジオできたろうさんが、可笑しな話の合間にしみじみと繰り返し語っていた通り、命をみつめ励ます人の優しさを、そっと描いた朝ドラ。毎日欠かさず観ていました。
そして明日からは「ブラッサム」。作家の宇野千代がモデルです。
宇野千代のエッセイに、私は今までどんなに励まされてきたことでしょう。30代半ばでイギリスに渡ろうと決心した頃、この『行動することが生きることである』と『思いのままに生きて』を熱読していました。
もちろんイギリスにも持って行った。壁にぶち当たる度、開いては読み返していたと思う。赤いラインがいっぱい引いてあります。
私の文章をよく読んでくれていた友人から、「河田さんは『楽しい』と書かないのですね。なぜ『愉しい』なのですか?」と尋ねられたことがある。それは、宇野千代さんのエッセイから学んだこと。千代さんは必ず「愉しい」と書く。理由はわからない。でもその活字を見たとき、自分にもピンと来るものがあった。
「楽」という字をあまり好きじゃない自分に気づいたのです。
本当の「たのしさ」は「楽ちん」とは違う。イラストレーターとして独立し、山あり谷ありの7年ほどが経って、苦も楽も乗り越えた丘の向こうにこそ、ほんとうの「愉しさ」があるのではないか。なんとなくそんな景色が浮かんできた頃だった。
伝統を重んじながらも自由な表現を尊ぶロンドンに暮らし、仕事をし、それが一層実感を持って迫ってきた。感受性の扉をひとつ、またひとつと開くとき、千代さんの言葉が背中を押して・・・、いや、手招きしてくれた。
これは先日、貴重な青空のもと、サイクリングした桜並木。すっかり葉を落として、タイヤが踏むと乾いた音がする。明日から、この木に 'blossom' が満開になる季節までドラマは続く。千代さんの波乱万丈の一生を、朝ドラはどんなふうに描くのでしょう。すごく愉しみです。



