台所
ついつい台所の写真ばかり撮ってしまいます。それより自分の仕事や制作に関することを、もっと撮ったらいいのに。そのつもりでインスタグラムを始めたのに、なかなかそうならない。
質素な台所で、ありきたりの材料で、きまぐれに料理する。無器用で、一度に一つのものをマイペースでしか作れない。たぶん料理家にはなれません。
実は3年前に軽く体調を崩しかけ、以来揚げ物などの脂っぽいもの、乳製品、卵などを、ゼッタイではないけれど、なるべく摂らないようになりました。ケーキや焼き菓子もモノによっては負担なので控える。お酒は関係ないとドクターに言われたものの、食べるものが簡素になるにつれ、自然と嗜好が縮小。加えてプチ介護もありますから、それまでに比べ、何が面白くて生きているのかと問われそうな食生活です。でもどんなときにも、日々の炊事にはそれなりの発見があるものです。
お酒と言えばこの間、みうらじゅんさんが、「最近お酒が好きじゃないことが判明して」と朝日の記事で語られていて、お、いいコト言いますね、と思った。でも甘いものは飲みたい。だから燗酒でと仰っていて、なんだ結局好きなんじゃないかと思いましたが、実はそこも共感で、甘いリキュールを炭酸でうーーんと薄めたジュース的食前酒がマイブームです(たしか「マイブーム」もみうらさんの造語)。そんなこんなのお年頃、ってことなのでしょうね。今日も、ラブリーな瓶の「蜜柑酒」というのを初購入。
脱線しました。とにかく身体のことを考えることは、台所仕事の地平を狭めない。深くする。今までため込んできた知恵(?)を結集。にわかにオリジナル度がアップしてゆく。
たとえば、上の写真のハム。茅乃舎レシピで作り始めたものですが、とっても簡単なのに、買ったものとは違うマイルドな美味しさで気に入っています。以下、受け売り。
鶏むね肉300gに、茅乃舎のだし一袋(袋を破って)とお砂糖大さじ1、お塩大さじ1、粉山椒適量を混ぜたものを、まんべんなくまぶしつけます。水が出るので深さのあるお皿に入れラップをして冷蔵庫に一晩。翌日さっと洗い、沸騰まであとちょっとの鍋のお湯に入れて、沸騰したら中火。1分半ほど茹でます。(私は倍の分量で作るので、もうちょっと茹でる。)蓋をして、冷めるまで放っておく。で、出来上がりです。なるべく冷めにくい、分厚いお鍋で作るのがいいみたいです。
昨夜漬け込んだのは、山椒を使うところを花椒にしてみた。ハーブミックスも加えた。あとで茹で上げます。愉しみです。
台所は愉しいのに、作るのは面倒。そんな日も正直結構あります。どうするか・・・。解決のおまじないは「ゆっくり、ゆっくり~」。作らなくちゃ、って気分で急ぐから、やる前からプレッシャーがかかりつまらなくなるのだと、これまた「判明」したのです。
まずは腰を下ろす。誰も見ていなくても、「作ろう」という気配さえなしに腰掛けるのがコツ。冷蔵庫にあるもの、戸棚の中の乾物、缶詰、冷凍食品、レトルト、手持ちのものをそこはかとなく思い浮かべる。
「いそがない、いそがない。ひとやすみ、ひとやすみ。」
賞味期限の来そうなもの、あれとこれなら相性いいかも、とか、案外すぐにイメージが固まってくる。たしか料理ファイルになにかあったな・・・とパラパラする。
で、おもむろにエプロンを掛け、冷蔵庫を開け、とうとう何か素敵なお料理を作り出すのか・・・と思えば、土井善晴さん提唱の一汁一菜、具だくさんのお味噌汁だったりするので我ながらズッコケるのですが、その頃には小皿にお漬物や作り置きおかず類を並べるのさえ、ウキウキしているという寸法。
思えば絵を描いたり作品を作る時も、こんな感じです。自分の力をあんまり信じていない。なんとはなしに自分を通して出来上がるものが見たい。そこにワクワクしたい。だから心して、無理な力が働かないように気を付けています。