今年の干支にちなんで、久しぶりにこの作品を飾っています。20代の頃、当時まだ新宿区河田町のフジテレビ敷地内にあったフジテレビギャラリーで観て以来、大好きになった彫刻家、バリー・フラナガン / Barry Flanagan の作品「三日月と釣り鐘の上を跳ぶ野兎」'Leaping Hare on Crescent and Bell' です。
その後、ロンドンのギャラリーで再会。その後また1991年にフジテレビギャラリーで再会。一度観たら忘れられない彼の彫刻は、日本では箱根彫刻の森美術館や世田谷美術館の庭でご覧になれます。他にもちょっと調べたら、名古屋、福岡、群馬、宇都宮などで観られるらしい。世界中に散らばった、フラナガンの兎や生き物たち。ロンドンのリバプールストリート駅では、まさにこの作品の巨大なものがあって、迫力でした。
私が絵を描く仕事をフルタイムで始めた頃に出合ってずっと、フラナガンの野兎は、時には草むらに何年も隠れ、そうかと思うと突然跳ねて現れる。そのたび小さなショックを与えられる。この野兔はじめフラナガンの遺した生き物の作品群は、自分にとって、不思議の国のトリックスターのような存在です。
ところで、今年の大河ドラマ「どうする家康」の番組宣伝を観ていたら、家康を囲む家臣たちと家康の像が、ちょっとトールキンの「指輪物語」'The Lord of the Rings' の主人公、フロド・バギンズと仲間たちのように感じられ、興味をそそられました。動的であり不安定。緊張感とユーモア。相反するものが同居する、いかにもイギリス的ファンタジーからいくらかでも影響を受けて制作されているとしたら、ちょっと面白そうです。
バリー・フラナガンの彫刻もまさに。手元に3冊ある展覧会のカタログを、久しぶりに読み解きたくなってきました。出合って以来、40年近くも経った自分に響くことが、またいくつも見つかりそうです。