15 Nov 2019




種をまく人の速度

 先日インスタグラムに、近所のお茶畑がいつの間にかオリーブ畑になっていたことを書いたら、刺繍作家の永谷愛子さんが、うれしいコメントをくださった。岸田衿子さんの詩「南の絵本」にオリーブ畑が登場する。オリーブ畑と聞くと、いつもその詩が思い出され、心に沁みると。

 岸田衿子さんの詩集を、一冊だけ持っている。その冒頭が「南の絵本」だった。『いそがなくてもいいんだよ』という詩集です。

 あらたな心で声を出して読んでみた。


   南の絵本     岸田衿子

   いそがなくたっていいんだよ
   オリイブ畑の 一ぽん一ぽんの
   オリイブの木が そう云っている
   汽車に乗りおくれたら
   ジプシイの横穴に 眠ってもいい
   兎にも 馬にもなれなかったので
   ろばは村に残って 荷物をはこんでいる
   ゆっくり歩いて行けば
   明日には間に合わなくても
   来世の村に辿りつくだろう
   葉書を出し忘れたら 歩いて届けてもいい
   走っても 走っても オリイブ畑は
   つきないのだから
   いそがなくてもいいんだよ
   種をまく人のあるく速度で
   あるいてゆけばいい


 詩は、出来れば一度は、声に出して読むべきだと思う。自分の声で、ことばを、リズムを、耳から感じるのです。永谷さんのメッセージと近所の若い農地が重なって、オリイブ畑の心象風景が、一層深まった。

 カレンダーを作りました。今回はいつもの短冊形ミニタイプと、書き込みができるものをA4サイズで作りました。どちらにも私なりの「つきない時間」を封じ込めたつもり。

 詳しくはメニューバーから、event のページをご覧ください。使って頂けたら、うれしいです。