種をまく人の速度
先日インスタグラムに、近所のお茶畑がいつの間にかオリーブ畑になっていたことを書いたら、刺繍作家の永谷愛子さんが、うれしいコメントをくださった。岸田衿子さんの詩「南の絵本」にオリーブ畑が登場する。オリーブ畑と聞くと、いつもその詩が思い出され、心に沁みると。
岸田衿子さんの詩集を、一冊だけ持っている。その冒頭が「南の絵本」だった。『いそがなくてもいいんだよ』という詩集です。
あらたな心で声を出して読んでみた。
南の絵本 岸田衿子
いそがなくたっていいんだよ
オリイブ畑の 一ぽん一ぽんの
オリイブの木が そう云っている
汽車に乗りおくれたら
ジプシイの横穴に 眠ってもいい
兎にも 馬にもなれなかったので
ろばは村に残って 荷物をはこんでいる
ゆっくり歩いて行けば
明日には間に合わなくても
来世の村に辿りつくだろう
葉書を出し忘れたら 歩いて届けてもいい
走っても 走っても オリイブ畑は
つきないのだから
いそがなくてもいいんだよ
種をまく人のあるく速度で
あるいてゆけばいい
詩は、出来れば一度は、声に出して読むべきだと思う。自分の声で、ことばを、リズムを、耳から感じるのです。永谷さんのメッセージと近所の若い農地が重なって、オリイブ畑の心象風景が、一層深まった。
カレンダーを作りました。今回はいつもの短冊形ミニタイプと、書き込みができるものをA4サイズで作りました。どちらにも私なりの「つきない時間」を封じ込めたつもり。
詳しくはメニューバーから、event のページをご覧ください。使って頂けたら、うれしいです。