26 Mar 2025



これで安心

 眠れなくて困るということは、滅多にない。たとえ就寝前にコーヒーを飲んでも、コトン。瞬く間に眠りに落ちる自信があった。余程の心配事がない限り、ここまでそんな具合に生きてきました。

 ところが先日、夜中の2時半ごろ目が覚めて、そこからまったく眠れなくなってしまった。同年代の友人たちも口をそろえて言うのは、最近夜中に必ず一度目が覚めてしまう、という傾向。でもすぐに二度寝が出来るのよね、と。自分もそうであったのに。

 30分ほど本を読んでみる。睡魔は戻らなかった。翌日は予定が一杯で、車の運転もしなくちゃならないから「寝なくちゃ、寝なくちゃ」。焦れば焦るほど眠れない。昼間遭遇した、小石川植物園の樹齢300年の巨木、大クスノキのパワーにヤラレた・・・のかもしれない。

 かすかに残っていたパチョリというエッセンシャルオイルの小瓶を枕の上で振って振って、微かな香りを吸い込んでやっと眠れました。やはり効くのだと確信する。

 パチョリはインド原産のシソ科ハーブです。他の精油とはかなり違う、土臭い重たい香りで、初めての人は最初抵抗があるかもしれない。でも慣れるとなんとも不思議な魅力で、この香りさえクンクンすれば気持ちが平静になり、少しずつ重力に素直になって、気付けば夢の世界なのです。少なくとも私は。

 精油は濃厚なものなので、誰にでもおすすめはできません。体調にもよるし、妊婦にはとくに注意が必要ですね。原液よりは、薄めてスプレーボトルに入れるべし、とずっと思いながら、ここ最近は必要無かったので後回しになっていたけれど、今回のことがきっかけで、やはり調達してみました。

 Covent Garden の NEAL'S YARD は、30年前、ロンドン時代の懐かしいお店。そこの基礎化粧品なら安心だろうと、一揃い求めて使っていました。エッセンシャルオイルも、入浴剤の代わりにしたり、ポプリに使ったり。空気の乾いたイギリスでは匂いに敏感で、どの家にお邪魔してもいい香りがしたのを憶えている。

 ネットショップでバチョリの精油を取り寄せている間に、薬局で無水エタノールと精製水を準備した。スプレーボトルも用意。作り方を検索し、分量を量って、あっという間にルームスプレーができました。買い置いてあったラヴェンダーでもひと瓶作った。

 ラヴェンダーはスタジオに。エアフレッシュナーとして仕事の気分転換に使おう。パチョリは寝室に。枕にシュッシュとする。重厚な香りがマイルドになって、丁度いい。

 NEAL'S YARD には、程よく調合された就寝用のアロマスプレーもあり愛用しています。寝る前読書の時間が、まるで夜のハーブガーデンにいるよう。平和な香りに包まれ、一日を穏やかに終えることが出来る。'Goodnight Pillow Mist' という小瓶です。

21 Mar 2025



春の訪れ

 盆栽で求めた侘助椿。この花を知ったのは、庄野潤三先生のお仕事を通じてでした。

 地植えにして、もう10年くらい経つかもしれない。ねじ曲がった茎がやっと上を向き始めたのはいいけれど、ちっとも花を着けずに我慢の年月。ようやく今年、いかにも控えめにいくつかの白い花が咲いてくれた。うれしくてハサミを入れ、以前Cさんに頂いた一輪挿しに生ける。なんて品のある花。

 David Hockney は勝手に心のお師匠さまと慕っている画家だけれど、今どきは幸せなことに、動画でたっぷりインタヴューを拝聴できる。その中で、'arrival of spring' という言葉が印象に残った。

 誰かが教えてくれた話として、テレビのひとこまについて語るホックニー。「どうしたらニュースを見て楽観的になれるでしょう」。その質問にある哲学者が「それがテレビというものです。悪いニュースはお金になる。だから嫌なニュースばかりを流すんです」。ではよいニュースって何でしょう? 哲学者は一言、こう答えたというのです。

 'Well, the arrival of Spring.'
 



 先日小石川植物園で、何十年ぶり? ミノムシに出会いました。子どもの頃、中の虫を引っ張り出して(ゴメンね)、毛糸クズや布切れ、紙切れを一緒に容器に入れ、観察したことがあります。クズを素材に、素晴らしくカラフルで愛らしいお家を、彼はこしらえて見せてくれた。もしかしたらその時の驚きは、今も私の仕事に大きな影響を与え続けてくれている。




  これからしばらく春の訪れに、大きく見開いた目を凝らしましょう。

17 Mar 2025



久しぶりに

 なんとムラのあるブログでしょう。我ながら(またしても)呆れます。

 本当は、20年ちょっと前に始めた旧ブログ(当時はホームページと呼ばれていました)の時のように、instagramには表せない、長々しい文を書きたい気持ちがいつもある。文章を書くことは、絵を描くことと同じに、子どもの頃から大好きでした。書くと心の中が整って、さっぱりするのです。

 まぁとにかく、ボチボチ再開します。ご期待無しに、ご笑覧ください。

 再開に際して、この写真を選びました。毎朝最初にすること。お茶を淹れる事。住まいの辺りの散歩コースには茶畑が広がっています。夜明け前の台所で、その方角に向かって、澄んだ翡翠色を湛える砥部焼のそば猪口を押し戴き、一日が始まります。

 香る緑茶を頂きながら前日の日記を、宮下さんから3年前に頂いた、赤い表紙の3年連用日記に綴る。

 それから、日によってコーヒー、または紅茶をぽってりしたイギリスのマグに淹れて、その日の予定をタブレットのメモアプリに箇条書きにする。それをPCに送信し、あとでプリントアウトする。食事や家事を終えた8時か9時頃から、一行一行、やり終えるごとに横線で消してゆきます。

 何でもない日々の小さな出来事が、益々尊く思えてくる。この色々あった数年の間に、あらためて学び直したことでした。




 うちの小さな地面には、今、Tete-a-tete の黄色い花が満開です。鉢植えのプリムローズも。室内には、ミモザ。春の空気を、深呼吸中。

28 Oct 2024




ありがとうございました!

 昨日、2週に渡る会期を無事終えることが出来ました。初めての企画展で、ドキドキもあったけれど、最終日まで本当に多くのお客さまにお出でいただくことができ、メンバーみんな感謝でいっぱいです。

 昨日は夕方4時少し前から有志が集まり、片付けをスタート。飾りつけされた会場での集合写真をうっかり撮り忘れてショップを後にした・・・のですが、「そうだ!」とすかさずリベンジしましたよ。明日館の正面中央、いつも結婚式の写真が撮られる特等席に並んでみたのです。黄昏時の明日館の琥珀のような輝きとともに、最高のショットを残すことが出来ました。

 その後の打ち上げでは、カンパーイ、そして会期を振り返り反省会もしました。それぞれが今まで以上に主体的に取り組んだことで、お一人お一人から貴重な意見を聴くことが出来た。新しい経験、「次」に生かせます。

 そうです! 「次もぜひお願いします」と、担当のTさんが仰ってくださったのです。やったー!

 いつになるかは未定ですが、またあの開放感あるスペースで、レッスンの成果とみんなの創作を発表する機会を頂けそうです。

 その日を目指してまた毎月のレッスンを、ひたむきに、希望を胸に、ちょこっと冒険もしながら続けてゆきたいです。








 遠くから、近くから、お時間を作ってご来場くださった皆さま。

 この初企画展の提案を、快く受け入れてくださったJMショップギャラリーの皆さま。

 毎日顔を出して応援してくれた、館長はじめ長ーいお付き合いの明日館スタッフの皆さま。

 そして長期に渡り試行錯誤を経て制作に精を出し、美しいものを山盛り生み出した、我らが 'Sweet 16 Ladies!' 。

 心より、ありがとうございました!

18 Oct 2024

 



Group Exhibition 'HOMEWORK'

 東京豊島区西池袋にある国の重要文化財、自由学園明日館。その敷地内のJMショップギャラリーにて、一昨日より私たち Hiro's Art Class のグループ展を開催しています。

 初日在廊しました。朝いちばん、開店を待って下さっているお客さまは、なんと盛岡の方。有難かったです。ゆっくりじっくりご覧くださり、いくつもお買い物をしてくださいました。

 その後も多くのお客さまをお迎えし、感謝の初日を送ることが出来ました。

 今回は初の企画展で、水彩画作品、プリント作品、ハンドメイド作品がいーっぱい並びました。みんな頑張りました。Zoomのレッスンを通じての指導。コロナ禍のなか、ありとあらゆるハンドメイド作りや水彩の試みで、みんなして気持ちをキープしてきました。Stay Home の HOMEWORK。大変な数年でしたけれど、結果、メンバーの表現力がぐっと上がったと、講師は思います。
 


 
 そしてちょっとハードルを上げたこの企画に、惜しみなく持てる力を注いでくれたメンバー有志。愉しい空間を一緒に作り上げることができて、おひとりおひとりの努力に心底感動です。




 'output' の睡眠不足が続いていましたが、やっと熟睡して疲れが取れたので、今日は 'input' の日。映画を観てきました。Gustavo Dudamel のドキュメンタリー、「ビバ・マエストロ!」です。クラシック音楽にはまるで詳しくないのですが、この方の存在をある方に教わってから、時々聴くようになり、そのたびこの指揮者の肯定的で圧倒的な説得力、共感力にインスパイアされます。

 どうやって大勢の若者や個性的な演奏家を束ねるんだろう。どうやって強い影響力で彼らのパワーを最大限に高め、引き出すのだろう。気になりながら観ました。

 「愛」だと思いました。受け継がれる「愛」の力です。「真心」と言ってもいい。時には厳しく、しかし温かく、言葉と身振りと眼差しで、演奏家たちのハートに飛び込んでいく。何かを低く見積もるという事をしない。最高の表現に近づく努力を惜しまない。ドゥダメル自身、恩師や先輩から引き継いだバトンを、次の世代に渡してゆく。広めてゆく。あの笑顔で。

 ロビーで偶然にも知人のMさんとばったり会って、感想を確認し合うこともでき、よき充電日となりました。どんなに荒れ果てた大地にも、春は必ずやってくる。明日もがんばれます。

4 Oct 2024

 



2025 FLOWER CALENDAR

 今年もこの季節になりました。16日から始まる東京のグループ展に、何とか間に合いそうです!よかった。

 今年のテーマは「花」一本に絞りました。とりとめなくスケッチしてきたものを、12か月に配分する、その作業に苦心しつつも愉しくて、また来年も花にしよう!と気だけは早い自分です。

 以前、友人と3人で好きな花について話したとき、ふたりは迷わず大輪の花を挙げていた。私はと言えば守護花にヘザー(エリカ)を選ぶくらいですから、小さな花ばかり。今回もそんなチョイスになりました。

 唯一大輪的カラーリリー(8月)も開花前を描いたもので、楚々として凛として美しかった。8月は暑さに参る季節なので、この花に任せることに。

 精細なプリントに定評のある印刷会社にお願いしました。この花もきれいに色が出るといいな。庭で咲いている、カタバミ科カタバミ属の 'Oxalis Triangularis' です。日本では「紫の舞」と呼ばれる花。とても丈夫で、暑さにも寒さにも負けません。紫の三角の葉が個性的な南米産。ブローチみたいに、小さな庭のアクセントになってくれる。おそらく来年も残暑厳しい、9月を担当してもらいます。




 来週印刷が仕上がってきたら、あらためて写真を撮ってみます。グループ展の準備にパンパンの毎日ですが、到着がとても愉しみ。

 ご予約について、shopページを更新しました。どうぞよろしくお願いします。(グループ展でも、もちろん販売します♪)

2 Oct 2024

 


私の部屋のポプリ

 作家の熊井明子先生がお亡くなりになりました。一昨日の早朝、桐原春子さんのインスタグラム投稿で知り、寂しく、また励まして頂いたことなど思い返し、お弟子さんであるIさんとメッセージを交わしました。

 拙著『イギリス暮らしの雑記帖』に、熊井先生のことを書かせて頂いたことがきっかけで、お便りを頂いたのは、もう22年も前のことです。

 6章目、Natural Finds 「散歩で見つけた宝物」の第一話、「香りのオブジェ、ポプリ」という一文の冒頭。久しぶりに引用させて頂きます。


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「ポプリ」という言葉を知ったのは中学生の頃。当時創刊になったばかりの雑誌『私の部屋』に連載されていた、熊井明子さんのエッセイによってでした。熊井さんの綴られる知的で細やかな言葉自体が、すでにポプリのように香しく、また高柳佐知子さんの挿絵は上質のレースのように繊細で、「あぁ、私も早くエレガントな大人になりたい」と憧れたものでした。


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 先生はお弟子さんのお一人に私の本のことを伝えられ、すぐに読んでお便りをくださったのです。その内容は感激以上。気に入った本の気に入ったページを、犬の耳なんてもんじゃなく、先生は大きく折り返すのが習慣だそうですが、「あなたの本がアコーディオンのようになりました」とのお手紙。タイムマシンに乗って、中学生の自分に「あのね!熊井さんがね!!」と耳打ちしたい衝動にかられたのを覚えています。イギリスへ行ってよかった、本を書かせてもらえてよかった。熊井先生の欧米人のようなストレートなご感想を、年下の世代への温かな励ましを、心底有難く思いました。

 熊井先生のエッセイに出合えたことが、今もなんとか執筆の仕事をたった一つですが、続けてゆける原動力の一つだと信じています。

 先生にあんなに励まして頂いたのに、力足らずで、あれ以降は遅々として進まず不甲斐ないです。しかし今年の春号のエッセイで、再び熊井先生のことに触れさせていただいたばかり。その見本誌をお贈りできたのが、あまりにささやかではありますが恩返し・・・いや、まったく足りない。もっと学び、もっと感じ、もっともっと書いて伝えることに、絵を描くことと同じく励みたいです。

 これも偶然なのですが、この冬号で24編となる「私の花生活」に掲載されたエッセイを、もっと多くの方に読んでいただけたら・・・。少しずつブログで公開してもよいでしょうかと、編集長に許可を取ったのは、この訃報を知る前日でした。

 



 直接お目にかかったのはたった2回でした。抽斗から貴重なお写真を出してみると、熊井先生、桐原春子さん、永田ヒロ子さんと私が写っています。お三人は揃って紫をベースにしたシックな装い。私だけ白いブラウスジャケット。先生は「三りんの紫の花と白い蝶、という感じ?」とお優しい言葉を添えてくださいました。日付を見てびっくり。2009年の10月2日。15年前の今日でした。胸が熱くなりました。

 桐原さんとは別の方角から、イギリスでお世話になったある方のご紹介でお近付きになれたのですが、それもまた偶然が重なっての幸運でした。思えばお二人とのご縁は、不思議なことだらけです。

 最近また「私の部屋のポプリ」を読み返しています。時代の象徴のような話題も多いのに、古さを全く感じません。それはことばのひとつひとつに、人類普遍の「真心」がこもっているからだと思うのです。そのことを、十代の若葉の頃に滋養たっぷりのエッセイから、恵みの雨を浴びるように学ばせて頂いたこと、あらためて有難い思いでいっぱいになります。

 心よりご冥福を祈ります。

 合掌