26 Jun 2016



私のバラ

 梅雨の晴れ間の陽ざしを浴びながら、鉢植えのバラがやっと咲き始めた。風雨の強い日は、軒下に避難。この家の庭は星の王子さまの小さな星ほどのサイズだし、風通しがよくないので、華やかに咲き誇るという風にはなかなかゆかないけれど、大事なこの花は頂いた苗から挿し木で増やした6鉢の Just Joey。生長に貪欲なのもいれば、のんびり静かなのもいるのは、人間と同じです。

  


 イギリスの国民投票のことで気が揉めていたら、昨夜ロンドンの友人からネットの署名を促す拡散メールが、私にも届いた。投票率75%以上、賛成60%以上というハードルをクリアしていないなら、再度国民投票をすべきであると政府に請願しようという内容のようで(興味のある方はこちらから)、昨夜の時点で150万人を超え、今見たら、300万人を超えている。人口が6,318万人なので、赤ちゃんや高齢者も含めた100人中の約5人が署名していることになる。'Leave' に投票した人の中で、すでに後悔している人もいるであろうことを見越しての試み。どこまで増えるだろう。キャメロン首相は2度目の国民投票はしないと明言しているし、私の友人も難しい訴えであることは承知している。それでも大きなメッセージにはなるだろうと、必死な気持ちが伝わってくる。

(この署名運動について訂正あり。文末の追記をご覧ください。)

 私にはイギリスと言う国が、日本に比べ移民に寛大だというイメージがあります。大英帝国の名残もあろうし、その時々の事情で在留資格の審査が厳しかったりゆるかったりはする・・・にしても。ロンドンの地下鉄に乗ると、いったいこの車両に元々のイギリス人は何人いるんだろう。もしかしたら一人もいないかも、とよく思ったのを思い出す。仕事先でも、アートクラスの教室でも、また友人のパーティーに呼ばれても、あらゆる文化と歴史を背負った人々に出会ってきた。世界の地理の教科書を見るような、バラエティ豊かなコスモポリス、ロンドン。こんなに異文化が集まっても、なんとかバランスを保って見事に成り立っているばかりか、その混沌から常に新しい何かを生み出す力があることに、驚きと敬意を感じている。でも一方で、中央と地方では移民についての意識の差が大きいという話も、耳にはしていた。

 私はイギリスとイギリスの古今の文化、それを生んだあの国の人たちが大好きで、第二の故郷とまで思っているから、イギリスが自ら持つ絶妙なバランス能力と知恵で、この難関を乗り切ってくれるよう祈ります。と同時に、この地球上のあらゆる地域、大国でさえも例外なく似たようなことが起こっていて、そのことの本質はいったい何なのかを先陣を切って見極め、政治家が無理なら、芸術家がメッセージを発信して行くことを願う。私自身も様々に考えながら、毎日のニュースを注意深く聴いてゆきたいです。




 イギリスの花はバラ。メールを送ってくれた友人、Miriam の絵の傍らに。

 
 追記: 上記の署名運動ですが、ガーディアン紙のウェブニュースによると、イギリス国外の人からの署名がだいぶ紛れ込んでいるようで、しかも国民投票前、Remain派が優勢との報道に危機感を持った Leave派の支持者が始めた試みなのだとか。なんとも皮肉な現象とあります。混乱はまだ続きそうです。