28 Oct 2016



ジョージア・オキーフの言葉

 今日は冷たい雨でしたね。急用が重なり、目の前の山積みの仕事がなかなかできない。焦ってはいけない。頭を整理して、自分自身に戻るための時間を持とう。・・・と思って、これを書きだしました。

 いつだったか、ボブ・ディランがDJをやっている番組を、インターFMでピーター・バラカンさんが毎週紹介していた頃があった。ディランの声で、ディランのセレクトした曲が聴ける、夢のような番組。なんという贅沢。味わい深く、温かく、ユーモラスで元気の出る番組だった。

 地方在住者は radiko の機嫌のいい時(間違って東京の放送局が入る時)しか聴けなかったし、録音して残してあるのは3本だけですが、その中の一つに、花がテーマの週があった。番組の中で、ディランは人の名言をよく引用する。名言好き(私のこと)には、またたまらなかった。

 画家のジョージア・オキーフの言葉が出てきたときは、うれしかったな。それは、こんな言葉です。


         If you take a flower in your hand
         and really look at it,
         it's your world for a moment.


     ひとつの花を手に取ってよおく見れば
     束の間、世界はあなたのものになる。

                  Georgia O'keeffe (1887-1986)


 


 オキーフへの思いを語りだしたら、止まらなくなりそうです。




 たとえば、ウチの台所にはオキーフがいる。画家のレシピブックです。この白いマスタード瓶はロンドンのチャリティショップで見つけたもの。これが画家の家を撮った写真集の台所の棚にあったのはうれしかったし、このレシピブックにも、私の持っているのと同じお皿が出ている。見つけたときは 大興奮でした。サンタフェのギャラリーで買った、大好きなお皿です。ミーハーです。




 オキーフは少し祖母に顔が似ていて、それもファンになった理由のひとつでした。肝心の絵のことは、また少しずつ書いてゆきますね。ロンドンのテイト・モダンで開催されたような展覧会が、日本にいつの日かやってくることを、切に祈っています。



 ところで、お知らせです。長くご覧いただいてきた「河田ヒロウェブサイト」を、このたび一旦閉じることにいたしました。また新たに別のURLでスタートしたいとは思っていますが、それまで、このブログに作品やレッスンのこと、個展やイベントのことなども載せてまいります。11月初めにはアクセス不可となります。手作りで、せっせと更新してきた愛着のあるサイトでした。13年に渡るご愛顧、本当にありがとうございました。



アイデアソース

 この箱は、何年も前に作ったもの。刺繍や編み物の作家で、テキスタイル・デザイナーとしても活躍する、カッフェ・ファセットさんの本からインスピレーションを得たものです。いろんなサイズで作って小物をそっとしたため、個展でご覧いただいたこともあります。

 日本ではケイフ・ファセットと表記されていますが、どちらが正しい音に近いのでしょう。イギリス人の友人に尋ねたところ、2人中2人が「カッフェ」と言っていたので、私はそう呼んでいます。

 このファセットさんの存在を知ったのは、ちょうどイギリスに長期の取材旅行に出掛ける少し前だったと思う。かれこれ30年も前のこと。古本で買ったクラフトの専門雑誌がきっかけでした。墓石の表面に生えた地衣類が描く自然の模様をヒントに、編み物の図案をデザインをしているアーティストが紹介されていて、それがファセットさんだったのです。

 イギリスに行って、日本と違う英国の、どこか黄昏感漂う色彩に夢中になった私は、帰国後に洋書店で見つけた彼の2冊の作品集を恰好の教科書と定め、それからずっと大事にしています。

 ファセットさん自身も、生まれ育ったカリフォルニアとは違う、あの国の色彩の世界のとりこになって移り住んだのだと知れば、勝手に親近感を感じ、一層ファンになったものでした。 
 


 11月のレッスンではまず、ファセットさんの色彩のセンスや、彼自身のアイデアソース、一体あのカラフルな作品群を、どこからアイデアを得て制作しているのかなど、ファセットさんから私の受けた感動をお話ししました。特にロンドンのV&Aミュージアムの収蔵品からインパイアされた作品が素晴らしい。それに蚤の市の掘り出し物から生まれた作品も。

 自分が、あ、いいな、と思った何もかもから、躊躇せずに影響を受けている。素直な眼差し。子供のような瞳の輝き。

 そしてそんなファセットさんの本こそを、今回私たちはアイデアソースにさせてもらったのでした。ニットを編むように水彩で図案を描いて、それをもとにコラージュ。皆さん、とても愉しんでくださった様子。大いに手ごたえを感じることができました。やってよかった。ファセットさんに感謝です。




 切手の小箱は、私の紙入れ。小さくカットした、小さな絵を描くための水彩紙にちょうどいいサイズなんです。庭に落ちていた雀の卵。それに最近よく描いている、ちっちゃな抽象画とともに。

13 Oct 2016



JHS のワークショップ

 今月と来月は、愉しみな予定がいっぱいです。10月26日の明日館でのワークショップも、おかげさまで満席寸前。もしもまだお迷いの方がいらしたら、ぜひお早めにご連絡ください。

 昨日、今回の企画をしてくださったハーブ研究家の永田ヒロ子さんから、ジャパンハーブソサエティー(JHS)の会報誌が届きました。

ハーブ研究家でもある、永田さんは Hiro's Art Class のメンバーでもあり、グループ展にも毎回作品を出品くださっています。この表紙の作品もそのひとつ。マートルというハーブの葉を使われていて、制作当時にはグリーンの鮮やかな作品でしたが、時を経てキャメル色に変化したマートルの存在感もまた素敵です。ご自身によるスタイリングも大成功ですね。

 ワークショップの詳細は、上のメニューバーから event ページをご覧ください。時間内に完成しお持ち帰りいただきますので、あらかじめこちらで準備抜かりなくしてまいります。初心者の方も安心してご参加いただけます。

 イギリスでのお話なども交えながら、愉しい会にしたいと思っています。お申し込みをお待ちしております♪

12 Oct 2016



10月の輝き

 やっとのこと! お日さまがその黄色いお顔を見せてくれましたね。おまけに涼しい。

 秋の低い光と涼しい空気が、私は大好きです。その光が作る、温度のこもった秋の色彩も。この季節に旅をすることが多かったので、ひんやりした空気を吸い込むと、それがまるでスイッチのように働くのでしょうか。思い出の小箱がするすると蓋を開ける。

 朝、何を着るかを選ぶのも愉しい。私はカーディガンを8枚も持っているから。帽子をかぶって、長靴下とブーツも履ける。赤毛とそばかすのあの子みたいに。

 昼間の時間は短くなってゆくけれど、夜が長くなるのもそう悪くはない。夕飯の片付けを終え、灯りを僅かに減らすとき、灯すよりなぜか心地よい思いがする。

 四季のある国に生まれたこと。また一周したんだなと、ありがたく思う心の余裕を、秋はそっと与えてくれます。 
 



 INSTAGRAM にも書いたのですが、日本では名前のあとに「駆除」なんて言葉が続くほど、悪名高きセイタカアワダチソウ。でもロンドンにいた頃は、花屋で見つけたGolden Rod (黄金の釣り竿)という黄色い花こそが、この花でした。

 昨日の朝も、後継者のいない荒れた畑や空き地に、この花がすごい勢いで咲いています。幾枝か失敬したい気持ちをこらえながら、せめて写真だけでもと思ったら、これが撮れました。

 セイタカアワダチソウの蜜は、あまり美味しくないようです。でもミツバチたちにとっては、冬を越すための大事な収穫。がんばれ、ハッチ! もちろん、マーヤも!

10 Oct 2016



私のビートルズ

 一年に何度か、外気にロンドンやイギリスを思うときがあります。今朝はまさに! 長袖のシャツの襟もとや袖口からひんやりした秋の気配が感じられる。足元にはいつの間にか色とりどりの落ち葉が、モザイクのように散っていました。

 ビートルズがこんなに好きなのに、私はリバプールに行ったことがない。アビーロードも、友人夫婦が来た時に案内したきりで、写真も撮らずじまい。

 でも暮らしていた毎日が、ビートルズのいたロンドンでした。街角を見てはペニー・レーンを思う。書店から本を抱えて出てくる人は、もしかしたらペーパーバック・ライターの卵かもしれない。赤いダブルデッカーバスの2階に上がるとア・デイ・イン・ザ・ライフの一節を思い出すし、高い税金に苦しんだときはタックスマンが口をつく。雨が降ればレイン、晴れればグッド・デイ・サンシャイン。ストロベリー・ヒルという駅の名前にドキドキした。ビートルズの音楽に出合わなかったら、私はイギリスへ行っただろうか。

 先日友人と観た映画は、ビートルズの初期のライブ映像をまとめた作品で、私の世代には懐かしの映画「アメリカン・グラフィティ」に出ていたロン・ハワードが監督。ビートルズへの思いが実にきめ細かく、しかもすっきりと表現されていて、予期した以上にいい映画でした。

 古い映像と音源を今の技術で磨き上げ、貴重なライブを「体験」できるようにしてくれたのには、興奮した。下積みからデビュー、世界中にあらゆる変化をもたらし、人気の怒涛の中にあってもなお優しさと強さを失わなかった彼らの「力」を再確認する。桐島かれんさんが「ウルウルした」とINSTAGRAMに書かれていたけれど、私も同じく熱いものがこみあげました。自分のビートルズへの愛は MAX と思っていたのに、今までよりもっもっと好きになった。

 ビートルズを知って半世紀近くが経つ。こんな贈り物をまだもらえるなんて! ありがとう、ビートルズ♪

P.S. 昨日、10月9日はジョンの76回目の誕生日。Happy Birthday, John !
 

1 Oct 2016



ナイトメアを超えて

 まだムシムシはするものの、ようやく暑さも一段落。台風のせいで空模様はなかなかカラッとゆきませんが、観るもの、聴くもの、食べるもの、五感を刺激しながらバランスを取ってゆきたい秋ですね。

 11月3日から始まる沼津クラスのグループ展。今回は初めて、お隣の三島市での開催です。案内状が出来上がり、メンバーがすでにあちこちに配布してくださっています。

 三島は街歩きが愉しい街。こじんまりしたエリアに、有名なうなぎの桜家、丸の内 KITTE にも入っている Floyd など、古いお店、新しいお店、それに富士山の雪が長い年月、地下を通って湧き出している泉の公園やせせらぎ、歩いていてちっとも飽きない。私が子どもだった頃よりもずっと、ある意味、古の宿場町の面影がよみがえっているのではないかと思います。源頼朝ゆかりの神社、三島大社が、街を静かに見守っている感じもいい。

 そんな三島のほぼ中心にある、みしまプラザホテル内、Gallery PLAZA が、今回の会場です。会期は11月3日(木・祝)-8日(水)、10:00-18:00(最終日は17:00まで)。追ってこのブログのページや、HPの Exhibition のページに詳細をUPいたしますので、もう少々お待ちください。

 以前お世話になっていた麻布十番のギャラリーのように、通りに面した大きなガラスから中の様子がわかる明るいギャラリーに、多くのお客さまをお迎えできますように。個性豊かな愉しい作品を一杯準備しながら、みんなでせっせと追い込み中です。




 こちらは先週の写真。雨の中、新幹線で東京へ。表参道ヒルズ同潤館 Galerie 412 で、今年も個展をお世話になります。会期は11月24日(木)-29日(火)。今回は庄野潤三先生の連載やご著書に描かせていただいた絵、中島京子さんの「小さいおうち」連載時の挿絵、イギリスでの仕事など、今まで制作してきた装画や挿絵を、新たにプリント作品として額装し、ご覧いただきたいと思っています。ギャラリーのCさんも、「いいわね!」と賛成してくださった。

 目の前の展覧会2つの壁が、やっと少しずつ乗り越えられそうな高さになりつつある。しかしこの間までは連夜の悪夢。この小心者は、大事な仕事がある前に、必ずそんな日が少し続くんです。今回は初めて「ベッドから落ちる」というアクシデントまで! でもその後不思議に、文字通り「落ち」着いたから、一種の厄払い(?)だったのかな。

 ジタバタしながら、でもとにかくよい会が開けますように。ふんばってがんばってまいります。