28 Jan 2018




ウィニフレッド・ニコルソン

   My paint brush always gives a tremor of pleasure
   when I let it paint a flower.

   花を描くよう仕向けると、
   私の筆はいつだって歓喜に震えるのです。

                    Winifred Nicholson


 2月の Hiro's Art Class では、一足早いイースターエッグの飾りを作ろうと思います。始めは画家のマチスにスポットを当て、彼の作品のエッセンスを卵の柄に生かそうと思っていましたが、この寒さのせいでしょうか? もっと温かく、もっと和やかなムードの絵にしたくなりました。

 幸い注文していた、ウィニフレッド・ニコルソン(イギリスの女性画家 1893-1981)の画集が届いたので開いたら、もうこれしかない! 前回のブログに書いた中川一政さんの言葉の通りです。

 「一切のことを為すに当意即妙なり。あらかじめ設けてする事あるべからず」

 それで、卵に穴を開け、中身を空けてきてほしいと、たった今生徒さんたちにメールでお知らせをしたところです。

 何年も前、HACがまだ始まったばかりの頃、一度お願いしたことがある。皆さん上手に開けてこられた。ご主人が持っている細いドリルで、見事に美しい穴を開けた方から、上の私の写真のようにナチュラルな(?)穴の方も。そのときはリボンで飾り、造花などと一緒にカゴにアレンジメントをしたのでした。

 Lesson のページに、この穴の開け方について少し書きますから、ご覧ください。検索すると、動画がいくつも公開されています。参考にしていただくとよいと思います。ハーブ研究家の永田ヒロ子さんによれば、カッターで開けると簡単とのこと。今度やってみようかな。丸いきれいな穴でなくても、5mmくらいの直径に収めて頂けるとよいかと思います。

 あ、でも私もドリルを持っているんでした。100円ショップあたりでも、簡単なドリルならありそうですね。

 ウィニフレッド・ニコルソンの絵には、イギリスの光が描かれている。どこかシンと引き締まったイギリスの大気が、温かな花の輪郭とせめぎ合っている。モランディにも通じる、静謐を感じます。

 画家の元夫、ベン・ニコルソンのファンは日本にも多い。さかのぼってベンの父親ウィリアム・ニコルソンを、絵本画家としてご存知の方もいらっしゃるでしょう。この、おそらくは日本であまり知られていない女性画家、ウィニフレッドの素晴らしい画業を皆さんに紹介できるのが嬉しい。もうちょっと私も勉強してから、レッスンに臨みたいです。

27 Jan 2018




中川一政さん

   何事もせんと思ふことをずんと思切てするは本心也。
   かうせうかせまじきかと二途をわたるは血気也。

                沢庵和尚『東海夜話』より


 こんな風に書くと、私がこの本を読んだかのようですが、実際は画家、中川一政さんの本『腹の虫』にあった言葉。あるときここを読んで、それこそ「ずん」と腑に落ちたものでした。心当たりがあったのだ。沢庵和尚が剣法を説く言葉だそうですが、中川さんの言うように、「画家がきいてもどきんとする言葉」。


   一切のことを為すに当意即妙なり。
   あらかじめ設けてする事あるべからず。


 これも同じく。

 「血気」や「勝気」を、自分は好まないのだ。その時に思った。それは物心ついたころからずっとそうだった。

 この本には、ほかにもいくつか傍線を引いている。たとえば、


   目が進めば手が進むのだ。
   手が進むから目が進むのではない。
   学校は技術を教える。
   教えられることには限度がある。
   大切なことは教えられない。


 これは真実です。生徒さんにも折に触れ話してきた。美しいもの、感動する何かを観て、観て、観て、目を進ませましょうと。

 写真は水彩レッスンのあった木曜日、目白駅近くの和菓子屋さん「志むら」で買ってきた花びら餅です。きれいだなあ。

 美しいなあ。美味しそうだなあ。綺麗だなあ。この「なあ」を絵にするのだと言っていたのも、中川さんじゃなかったかなあ。


15 Jan 2018



小鳥たち

 これは昨日の夕方、一日の仕事を終え、散歩に出た時の風景です。Instagramに動画を投稿したので、ご覧くださった方もいらっしゃるかもですが、実に見事な swarming (群飛)に遭遇しました。

 近くに小ぶりの竹藪があり、そこがこの小鳥たち(雀だと思う)の巣であることは知っていました。そこに砂鉄のように吸い込まれるのを観たことがあったから。でもこんなに凄い群飛は初めてでした。

 ヒッチコックの映画を思わせるものでしたが、ちっとも怖くない。それどころか、小鳥たちの興奮がこちらにも伝わってきて、まるで一緒になって飛んでいるように胸が躍りました。美しい夕日、富士山も頭をのぞかせ、駿河湾も見える私の大好きな場所。こんな体験をさせてくれる、宇宙の意思に思いを馳せます。

 日が落ち、台所に立ちながら、あの雀たちは今頃あの竹藪で、寒気に身を寄せ合いながら明日の夜明けを待っているのかと思うと、どこへ行かずとも、また世界がひとつ広がった気がします。


   森羅万象を黒一色にぬりつぶす闇の夜でも、
   線に移しかえることのできる体験を、
   私は記すのだ。

           パウル・クレー(『クレーの日記』より)




 1月のHACのために、サンプル画を作っています。今年は毎月さまざまなアーティストを取り上げ、彼らへのオマージュ作品を制作してゆこうと思っています。

 その第一回に、パウル・クレーを選びました。クレーの絵は小品が多く、水彩で描く色彩には特に惹かれ、影響を受けてきました。絵の中に奇妙な形や文字を入れることも、クレーから学びました。上の言葉は、若い頃何度も読み返した『クレーの日記』の抜き書きから。

 実は新年とともに始めたことがあります。「超」の付く早起きです。バカじゃないの?と言われても構わない。3時に目覚ましをセットしています。でも寒いから、実際に起き上がるのは3:30頃です。もちろん早寝。早朝に仕事をし、その後家事や用事、外出を済ませ、午後にまた仕事をする、というスケジュール。今のところ、これが功を奏しており、自分ひとりの時間を作る工夫を、なぜ今まで怠っていたのだろうと反省。

 それで気付いたのですが、夜明けとともに、小鳥たちの声が聞こえるのです。きっかりその刻に、さえずりが聞こえてくる。寒くても窓を開けて、そのさえずりを招き入れたくなる。クレーの日記にもこうあります。


   朝まだき、山の彼方に友あり


4 Jan 2018



2018

 新年 あけましておめでとうございます

 皆さまにとって、健やかで実り多い一年となりますよう、お祈り申し上げます。 

 年末から年始は、瞬く間。それでもよく食べ、よく笑い、初夢もまあまあでしたし、よい思い出が作れました。

 


 お正月の9シーン。左上から時計回りに、

1.元旦のウィーンフィル、ニューイヤーコンサートのバレエにうっとり。衣装や背景のセンスも、すごく勉強になる。再放送(6日土曜日2:00-5:00 Eテレ)はビデオに撮らなくちゃ。

2.今年は初めて、おなますを作らずに買いました。自分で作るのより、ぜんぜん美味しかった。紅白を、混ぜないで並べてみた。

3.これは2日目の朝食。朝から久保田を頂き、箱根駅伝を観ながら、肉のクロヤナギさんのハムやソーセージを食べる贅沢。

4.神棚を整えると、気持ちが凛とします。

5.素朴系でまとめた、玄関の花。初春の訪れとともに、菜花も啓翁桜も花開いた。

6.煮物はストウブで作ると、早いし美味しい。家族が食べやすいやわらか野菜中心。

7.数の子とブリーと黒オリーブでピンチョス。3つをいっぺんに食す事に意味がある。

8.ここ数年、生タラバガニの本チャンという、すごーく立派なカニを頂戴し、贅沢なお正月を過ごしています。大きな足を3肩、妹の主人が器用にさばく。大きなフライパンで焼きガニにすると、プリップリの身が形容できないくらい美味。

9.伊万里焼きを模したと思われる扇皿は、イギリス製。形がちょっと妙で使いずらいのですが、East meets West な感覚が気に入っています。



 昨年は個展をお休みしましたが、今年から来年にかけて、有難いことにいろいろ計画があります。集中してやってゆこうと思っています。

 今年もどうぞよろしくお願いします。