8 Nov 2017




バージニア・ウルフに目覚める

 11月に入りました。2017年ももう日没間近ということに、ドキッとします。

 今年うれしかったことと言えば、バージニア・ウルフの『オーランドー』を読み終えられたことがある。

 ずいぶん前に買ったままになっていて、いや、一度読み始めたんだけど、その時はすくってもすくっても、両手の指の隙間から砂がこぼれるように、ぜんぜん心に入ってこなかった。それは「意味」を求めていたからだと、今になってわかる。

 というのも二度目の試みで、物語というものが持つ要素の中の私が最も愛するものが、少ぉしわかってきたから。それは何かといえば、ひたすらディテイルなのです。この奇妙な小説、『オーランドー』に教えてもらった大事なこと。

 白状すると、いつ頃からか小説に妙なコンプレックスを持っていて、読み始めてはやめ、読み始めてはやめを繰り返すうち、もうほとんど随筆しか読まない、読みたくない人になっていました。でもこの本を読んで、子どもの頃のように、本は好きなように読めばいいのだとわかった。絵は好きなように描けばいいのだし、本も好きなものを、好きなように読めばいいのです。「前のページのことなどすっかり忘れながら読んだっていいのよ。」勝手にちゃっかり都合よく、ウルフからそう教えられたような気持ちになっている。

 とはいえ、ストーリーはあるにはある。以前にここでちょっと書いたので内容は省略しますが、今日の写真は小説の舞台、ウルフの恋人であったヴィタ・サックビル・ウェスト(『オーランドー』は彼女への長い長いラブレターであったとも言われている)の生家、ノール城のものを。ずっとずっと前に訪ねた時に撮りました。(まだフィルムのカメラだった。)
 



  『オーランドー』は、特異な人間の生態(?)が、イギリスの貴族社会を背景にリズミカルに描かれた奇想天外物語。これぞ私が読みたかったもの!と読み終えて興奮気味でしたから、続いて手に取った『ダロウェイ夫人』も当然しっくりきた。これまた不思議な物語で、『オーランドー』と同じく、時間と空間の絡み合いが実にスリリングです。そしてやっぱりディテイルの魔力。

 今読んでいるのは、図書館で借りた『フラッシュ』。これはフラッシュという名のコッカスパニエル犬の目から見た、詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの日々が描かれているとのことで、それを聞いただけですでに両肩をつかまれた気分。まだ冒頭ですが、ディテイルのハーモニー(や不協和音)が、たまりません。(次に読むのも取り寄せてある。『灯台へ』です。)

 すごく若い頃に、『自分だけの部屋』を読んだけれど、全く覚えていない。きっと当時の自分には難しかったのだ。これもまた再読予定。

 心に様々な波風が立つ日の終わりに、ベッドの中での読書時間は、何よりの慰めでありよろこびです。たとえ数ページでバタンキューでも・・・ 。