26 May 2025



蔦住

 うちの庭は、庭と呼べるか怪しいような、家の角に引っ掛かったL字金具みたいな、短い廊下的、小さな小さな地面です。日当たり、風通し、環境も決してよくない。でも長く暮らすうちにいろいろ工夫を重ね、宿根草の助けもあり、身の丈に合った自分らしさが出てきたと、最近思う。

 ある年、コンクリートのポーチの高さの部分や、父が余ったブロックで作った一段高い花壇の高さの部分など、味気ない灰色部分、目隠ししたいところにアイビー(蔦)を植えた。はじめは点々と数十センチ間隔に植えたものが、あっという間につながってきれいに覆われ、蔦って凄い。パワーを感じました。力強い、でも愛らしい。葉っぱは常緑で、これも自ら敷いた赤煉瓦と相性が良い。

 ロンドン時代の散歩道に建つ家々には、よく名前が付いていた(拙著、『イギリス暮らしの雑記帖』第3章 House Warming 「名前のある家」参)。うちのことも、できたら「アイビー・コテッジ」とかって呼んでみたい。でも昭和の住宅です。ぜんぜん似合わない。

 大河ドラマ蔦重、昨夜も見入ってしまいました。狂歌のシーン、笑った!特に太田南畝が治郎兵衛さんに付けた「おとものやかまし」がツボに入り、笑いこけました。

 そうだ、控えめに「蔦の住宅」、略して「蔦住」はどうだろう。少し気取りたいときには「『蔦の住処』略して「『蔦住』です」と言えばよい(誰に?)。

 ・・・というくらい、いまや蔦がいっぱいです。

 先日はイヌツゲに続き、椿の剪定をした。風通しよくしておかないと「にっくきチャドクガ」にやられてしまうから、こればっかりはのんびりしていられない。

 やり終えて、夕方、達成感と共に眺めていたら、まだ薄緑の紫陽花が愛らしく、上のスケッチを描きました。真ん中が剪定後の椿の木、右の鉢は紫式部です。このコも、じきにきれいな薄紅の小花が咲くんですよ。

 蔦住感、伝わるでしょうか?