東京国立博物館
昨夜も笑わされ、唸らせてもらいやした。大河ドラマ「べらぼう」。その蔦重に会いに、先日上野へ行ってきました。
↑の建物ではなく、この奥の平成館という建物で開催されている、「特別展 蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」。予想通りの結構な混み具合で、前半はじっくり観るというわけにはゆかず。が、盛況展覧会アルアルで、中盤からは少し空いてくる。ドラマでもいよいよ登場の喜多川歌麿作品を、ゆっくり観ることが出来ました。
この大河ドラマが無ければ、これほど気合を入れて浮世絵を観ることはなかったと思う。ものすごい数の傑作が展示され、歌麿、写楽以外にも多くの才気あふれる絵師の絵が並んでいました。それでも歌麿という才能が特別な存在だということ、浮世絵に明るくない私にもよく伝わった。
信じられないような細かな描写、美しい線、テレビも映画も、写真さえなかった時代とは言え、浮世絵師、彫師、摺師の三つ巴の力量。圧倒されます。ドラマの展開が益々愉しみですし、機会があったらもっと浮世絵の世界を知りたいとも思った。
イギリスにいた頃親しくしてもらった画家一家、エスコフェット家のお父さん、ホセが私の絵を観て「とても日本的だ」と言った。自分なりに西洋の影響を受けて描いていると思っていたので、びっくりした。無口なホセに「それはなぜか」と、英語の下手な私は深く尋ねることをしなかったけれど、日本に帰って来てからその意味が少しずつわかるような気がしています。これについては、またの機会に。
展示の最後はアミューズメントパークのようでした。ここだけ写真撮影が可能とあり、バチバチ撮りました。おそらく日本中から集まった、大河のファン、蔦重のファン、横浜流星さんのファン・・・、老若男女とはこういうことですね。展覧会としてはとても珍しい、まさに江戸市中のような賑わいの光景。(画像は人が入らないようトリミングしました。)
アミューズメントコーナーの展示の中に、衣装デザイナーの伊藤佐智子さんによるスケッチもあり感激! このドラマの美しさや人物描写における、とても重要な要素のひとつだと思う。伊藤佐智子さんは、私がティーンエイジャーの頃スタイリストとして活躍されていて、購読していた雑誌、「装苑」だったか「服装」だったか、「an an」だったか・・・、忘れたけれど、カッコいいロックなアイデアに魅せられ、影響を受けたものでした。
ドラマでは治郎兵衛さんの衣装に、いつも「カッケー!」。心で叫んでおります。
さて、国立博物館に行ったら必ず訪ねるのは、正面向かって右側に建つ東洋館です。ガンダーラの仏像を拝むためです。ギリシャ彫刻の影響を受けた彫像群。これまた「カッケー!」です。ディスプレイが以前とだいぶ変わって展示が減っていた。それでもこの三体には会えました。
中国の古い器にも惚れ惚れ。
戦車や爆弾の代わりになる、「ホメホメ大作戦」というのを若い頃に考えたことがあります。相手にカチンと来たら、そんな時こそお互いの文化を褒め讃え合ってはどうかと思ったのです。どんな国にも地方にも、人が苦労して遺した、素晴らしい文化、文学、芸術作品があるでしょう? お互いにそれを讃え合ううちに、殺し合いがどんなに馬鹿らしいことかハッと気づく。「いや、悪かった」と握手する。そんなストーリーを考えたのです。若気の甘過ぎる妄想? 幻想? でも文化や芸術にはその力があると信じたい。
上野駅に久しぶりに降り立ったら、「ここって外国?」でした。海外からの観光客が、日本人より多いほどに感じます。世界中、どの観光地もきっと同じでしょう。世界はこれだけグローバルに変化している。共通の悩みもいっぱい抱えている。そろそろ地球は「違い」を尊重しながらの、「共感」の星にならないでしょうか。蔦重と鱗の旦那のように。