13 Nov 2016



挿し絵と表紙画

 この間出演させてもらった、三島のFMラジオの番組で、パーソナリティーの太田景子さんから、「なぜイラストレーターになったのか」という質問を受けました。

 うんと小さなころから、覚えている限りでは3歳くらいからずっと、紙と鉛筆さえあれば絵を描いていました。どうしたらなれるかなんて全くわからないまま、漠然と「絵を描く人になりたい」と思っていたのは確かです。

 ティーンエイジャーの頃、大橋歩さんの本に出合ったのは大きかった。『トマトジュース』という本。当時すでにイラストレーターとして大活躍の大橋さんによる、自伝のような本でした。ものすごく率直な内容で、それを読んだのが、初めてこの仕事を意識するきっかけになりました。

 大橋さんの真似をして、クレヨンで絵を描いたりしてみたけれど、私にはどうもしっくりこない。透明水彩に出合うまで、油絵、パステル、色鉛筆、リキテックス、カラーインクと、日本画以外はなんでもやってみた。日本画も実は画材までは用意したんだけど、結局手を付けずじまいでした。

 11月24日から、表参道ヒルズ同潤館にある Galerie 412 で開催する個展では、雑誌や書籍での仕事を少しご覧いただきたいと思っています。大作はありません。体格と同じに、小さな絵ばかり。ああ、イラストレーターになってよかったな、と思えた作品を集めるつもりです。

 「イラストレーター」という言葉を何度も使っておきながら、いまさら言うのもナンですが、私はかなり不器用なタイプのイラストレーターでした。依頼主に冒険心があり、かつフトコロが深い場合にのみ、かろうじてうまくいくタイプじゃないかと、けっしてえらそーに言えることじゃないですが、自覚しています。

 この35年くらいの間にいろいろやらせていただきましたが、今回DMに使わせてもらった、庄野潤三先生のお作品への挿絵。このシリーズはこんな私にとって、まるで奇跡のように有難いお仕事でした。まず、毎回お原稿が届くのが愉しみ。ラフの提出も無用。編集者さんからもデザイナーさんからも、好きなようにのびのびと描かせてもらえた。そして先生と奥さまの感想を伺うのは、この上ない幸せでした。

 この葉書きは入稿前に、庄野夫人にご覧いただきました。大変喜んでくださり、温かいお心いっぱいのお返事をお電話とお手紙で頂戴し、また当時の感激がよみがえる思いがしています。

 同じことが、英 COUNTRY LIVING の仕事にも言えます。こちらはかろうじてラフは必要でしたが、原稿を読んだら、やはり描きたいテーマは自分で自由に選べた。11年もの間、飽きずに(飽きられずに?)愉しく続けられたのは、ひとえに編集部とデザイナーたちのおおらかさあってのこと。

 今回の展覧会では、この2つの仕事を中心に、中島京子さんの文芸誌連載挿絵や、英国航空機内誌に描いた作品、『お砂糖とスパイス』からも。それに最近額装に力を入れているプリント画も展示します。去年ご覧にならなかった方にも観てほしいので、昨年の水彩コラージュも再び。

 先日の三島展で大好評だった、「プチ画室」も愉しんで頂けたらうれしいです。

  
   会場: Galerie 412

        渋谷区神宮前 4-12-10
        表参道ヒルズ同潤館 302 
                 TEL/FAX: 03-5410-0388

   会期: 2016年11月24日(木)― 29日(火)

   時間: 13:00 - 19:00 (最終日は 17:00 まで)

   河田在廊日: 24日、25日、26日、27日、29日


 28日以外は出勤する予定でおります。クリスマス前の表参道に、ぜひ足をお運びください。