7 Aug 2016



泣かぬなら・・・

 久し振りに小学生の甥と姪、トンチフとレナ坊が来た。トンチフは6年生で、夏休みの研究に「織田信長」を選び、先週電話で父に相談していた。父はうれしそうにあれこれ調べて、まるで自分の宿題のように張り切っている。ワープロにぎっしり資料を打ち込んでプリントし、トンチフに「ほれ」と渡す父。「たいへんよくできました」とねぎらう。

 食事中、例の「鳴かぬなら・・・」の句が話題になった。みんなで下の句をめちゃくちゃに言って、トンチフを混乱させる。トンチフはいじられキャラなのです。(「鳴かぬなら、笑わせてやろうホトトギス」by Hiro)。

 ゴハンは真鯛のお刺身でちらし寿司を作った。寿司飯にカリカリ小梅を細かく刻んだり、グリーンピースを彩りに入れたりしたら好評でした。サラダはマカロニサラダに、初めて作ってみた鶏もものハム。パスタは子供ウケを狙いファルファーレを使った。「チョウチョのマカロニだよー」とアピールすると、トンチフから思いもよらない返事が返ってきた。「そういうこと言わないでよ~」。そうでした、彼は昆虫が大の苦手なのだった。「ごめんごめん、リボンだった」と言ってももう遅い。しかしどんだけ昆虫が嫌いなのかと、また家族からひとしきりいじられる6年生なのでした。

 私はトンチフの将来について、春風亭昇太さんに弟子入りするのが一番いいと、勝手にずっと思っている。最近歴史に興味があるそうなので、お城好きの昇太さんの太鼓を持つ力をこれから着々と付けてゆくこともできる。このブログの読者の方で、昇太さんにコネクションのある方がもしおられたら、ぜひお口ききをお願いしたいです。ちょっとせっかちですが、人懐こくて可愛いコです。よろしくお願いします。

 一方、「将来の夢は看護婦さん」の3年生、レナ坊は集中力がぐんと付いてきて頼もしい。昨日は地球の引力について、話に花が咲いた。ブラックホールについてのヒロの持論にも、ちゃんとくらいついてきてくれる。張り合いがある。疑問がどんどん湧いてくるのは、小さな頃からずっとで、もううるさいくらい「なんで…なの?」が口ぐせ。あのエジソンが子供時代にそうだったと人から聞いた。少しは期待できるだろうか。

 昨日は私の部屋で、絵本をじっと読んでいた。今まではすぐに飽きていたのが、2冊、最後まで静かに読み通した。そして秘密のノートを見せてくれた。レナ坊の「なんでも帳」らしく、いつも持ち歩いているという。ほとんどはお絵かき。でも時には字も書く。「バカ!」などと書いてあることもあると妹がこっそり教えてくれた。兄妹喧嘩をした後などに、ひとりノートに向かうのだそうで、気持ちを落ち着け元気になる、自分なりの術をあみだしたのだと思ったら、その成長に伯母バカは胸がじんとしてしまった。

 ところで、「夏が好き」と言う人は、それだけで人助けをしていると、常々私は思っています。というくらい夏が得意でなかったのですが、今年は台風も少なければ、私の風向きもいつもとちょっと違う。いくら暑くても、いまここに溢れている夏の生命力というものに、今までにない感動を覚えているのです。親しい友人が、今年もひとり「じゃあね、先に行ってるからさ」とばかりに、さっさとあっちの世界に旅立ってしまった。命や時間への思いが、数年前からどんどん変化している。

 オバマ大統領が広島で語ったスピーチ。たとえ戦時とはいえ、あの瞬間まで保たれていた人々の団らん、普通の暮らしのことに触れながら、強く平和を訴えていた。立場上言いたいけれど言えないことを抑制という行間に込め、あの時点で可能な限りの深いメッセージではなかったか。


   亡くなった人々は、我々と同じだ。


そこには人類の偉大な発明、「詩」の持つスピリットがあったと思う。(こちらの東京新聞サイトから原文とともに読めますので、ぜひ。)




 夏はめまぐるしく日々が過ぎ、緑は枝葉を太陽に向かってひたすら伸ばす。子どもたちは笑い駆けめぐる。そしてこの国に過去の大きな悲しみが横たわっている季節。自分の感受性に忠実に、少しでもよい仕事をしたいと願う。