6 May 2017



時を超えるカフェ

 5月のはじめの澄んだ空気。皆さま、いかがお過ごしでしょう。

 小鳥の声や鯉のぼりはためく青い空・・・とはかけ離れた写真で失礼します。4月に、なぜか2度も神保町散策をしたときのことを書きたくて。1回目はあまり時間が無かったので、2回目は詳しい友人に面白いお店などを訊いて、すこしゆっくり歩きました。

 その中のひとつ、これは「ラドリオ」という歴史あるカフェ。夜はバーになるらしい。地図を片手にたどり着いた時の衝撃と言ったら! 実はこのほかにもいくつか聞いたお店が同じくこの迫力で、外国の街へ来たような、いえ、不思議の国に迷い込んだような。

 外から薄暗い店内に恐る恐る目を凝らすと、なんと満席の様子。ランチを目当てにか、お勤めの人たちが、次々ブラックホールに吸い込まれるように入っていきます。

 気になって仕方なく、午後1時を回って再び行ってみる。空席が少しあった。意を決して入店。古いソファ椅子に腰を下ろす。・・・あれ、居心地がいい。なんだか「守られてる感」がいっぱいです。さっきまでの不安がウソのよう。ダニエル・ヴィダル的フレンチポップスが、囀るように流れている。鳥の巣にいるような(いたことないですけど)温かさを感じる。




 ナポリタンを頼みました。タバスコにクラフトのパルメザン、懐かしいですね。写真のトリミングで切れちゃったけど、ぽってりしたマグにスープも付いた、見た目を裏切らない、まさに昭和の喫茶店のお味。

 しかし食後に出てきたウィンナコーヒーは美味しかった。あとで調べるとこのお店、ウィンナコーヒー発祥の地!なのだそうです。パンなのかパックなのか、はたまたミノタウロス? シンボルマークの描かれたカップのデザインにも、歴史と誇りを感じます。





 開店は戦後まもなくだそうで、高齢の父があの近くの大学に通っていた時期には、もうあったことになる。父は貧乏学生だったので、カフェやバーに行くことはあまりなかったらしい。タブレットの写真を見て遠い記憶をたどるような表情をする父に、当時の、おそらくはもっと空が大きかったあの界隈の景色を想像しました。




 神保町には他にも画材店、額縁屋さんなど、興味深いお店があった。巡った本屋さんにもまた行きたい。そしてラドリオも再訪したい。こんどは好きな本を携えて。あの店で「読む時間」を味わってみたいです。