16 Jul 2025

 



朝めし前の朝めし

 早朝に適した仕事はものを書く事と庭仕事、午前から午後はレッスンと自分の絵の仕事をし、夕方はイギリスから届いた雑誌を観てインスピレーションを高める。就寝前はたっぷり読書。こんな時間割が理想なのだけれど、天気によって左右されたり、たまった仕事を片付けたり、くたびれて昼寝したり、今は家の中の整理も始めていて、思うようにはなかなかゆかない。

 それでも朝一番にこのブログを書くことは大きなよろこびのひとつで、日々の励ましにもなる。書くことや読むことは、少々過剰な感受性を持つ自分にとって、「ごちゃごちゃ荘」的頭の中の掃除になる。散らばった思考のコレクションを、それぞれ適当な場所、後々呼び出しやすい棚に収めてくれる。

この早朝の作業にはそれなりにエネルギーが必要で、パンを数切れ胃袋に入れて、脳に糖分を供給します。一仕事終えたら正規の朝食を「いただきます」と頂く。だからいつの間にか一日4食になってしまった。来客のある時以外はお菓子というものをほぼ食べないから、早朝の一食はおやつと思えばよい。都合よく後づけ解釈した。



 先日 I 家から贈って頂いたボローニャのデニッシュ食パン3斤。有り難く、赤ちゃんを抱くように台所に運んだ。そのままでもイケますが、ちょっと焼いてジャムやマーマレードを塗る。美味しい。ごちそうさまです。



 キラキラ黄金色に輝く柚子のマーマレード。美しくてしばし見とれてしまう。以前、クラスのスケッチ会を2度ほどさせてもらった、埼玉のグリーンローズ・ガーデン。あの素晴らしいオープンガーデンのオーナー、斉藤よし江さんから頂戴したホームメイドです。もったいなくてなかなか開けられずにいましたが、開けてびっくり、こんなの食べたことない!ってほどの絶品でした。

 ここ数日、穏やかならぬ雨と湿度が続いていますね。ガラス窓の向こうの灰色の空。こんな天気でもシジュウカラの夫婦がお隣のアンテナにやってきてキョロキョロしている。きっと、朝ごはんを探しているんだ。

 その向こうに広がる空の景色も、静止画ではない。マーマレードパンを食べながら5分も観ていると、ゆっくり、ドラマチックに変化しているのがわかる。

 この星に生まれた私たちが命を保てるのは「対流圏」と言って、高度たったの10㎞まで。卵の薄皮みたいなこの薄い薄い空間に、命を持つ様々な仲間たちとともに肩寄せ合って生きている。

 この間、ピーター・バラカンさんがラジオで紹介していた Lead Belly の'We're in the Same Boat, Brother' という曲があり、とてもよかった。繰り返し聴いている。女優の高峰秀子さんの料理エッセイ『台所のオーケストラ』にあった言葉、「四海の内 皆兄弟(けいてい)なり/ 顔淵」はいつも胸にある。

 雲の切れ目に朝日が顔を出した。しかし相変わらず雨がザーザー降っている。不思議な光景。薄皮の中の、黄金色のドラマ。

 さて、今朝も対流圏スペクタクルを拝むことができました。私も今日ならではのドラマを、ささやかに始めるとしましょう。