鉛筆
鉛筆は最も身近な筆記具であり画材です。誰もが幼い頃、掌がまだちっちゃなもみじみたいだった頃から手に馴染み、削りながら大事に使うことを心得る。この筆記用具には、木の匂い、芯の匂い、紙への抵抗、デジタルドローイングでは味わえない趣があります。
道具として歩んできたその歴史を調べてみると、誕生の地はイギリスでした。1560年代に鉱山でみつかった高品質の黒鉛をそのまま、または糸で巻いたり板にはめこんで使ったのだそう。
そのうち硫黄の粉と練り固めて、1760年にドイツのカスパー・ファーバーが進化させ、「芯」化。カスパー・ファーバーは、ご存知、ドイツの文房具メーカー、ファーバー・カステルの創業者です。
木の匂いはよいものですが、この全身黒鉛のグラファイト鉛筆は安定感抜群。よく使います。鉛筆にしては少々値が張るけれど、amazonで求めることができます。
お次はフランス。画家であり化学者でもあったニコラス・ジャック・コンテという人が1795年に、黒鉛を粘土と混ぜ焼き固めることにより、芯の硬度をアレンジできるようになったとか。そうやって今使われている鉛筆の「芯」に「進化」(シツコクテスミマセン)していったのだそうです。スケッチや素描に使われるコンテ(黒や茶の角形棒状のチョーク)は、彼の名から来ている。
最近、イラストレーターを目指していた若い頃、盛んに使っていたコンテ型のハードパステルが出てきて、新たな気持ちで使い始めています。硬度があるから、ハッチング(斜線の集合で描く事)が可能。粉にすることも可能です。何十年も経てこその発見もあるかもしれない。
絵には「動き」が必要だと思う。気をつけて観ると、どんなに静謐な世界であったとしても、時代を超えて愛されてきた絵画には大きな、または微かな動きが表現されている。動きがあれば、観る人がその絵に感じるものが立体的になり、時間も感じる。自分が描いているような気持ちになることさえある。描かれた世界に入りこむ事が出来るのですね。だからこそ共感され、愛される絵となる。「動き」について、この画材から学ぶことは大きいです。
色鉛筆は、昔からイギリスのメーカー、Derwent の水彩色鉛筆を使っています。水を使ったり、水彩とのミクストメディアとして使うこともあれば、そのまま普通の色鉛筆のように描くこともあります。色調で分け、立てて使うと、パッと取り出しやすい。いつまでもお行儀よくケースにしまって置かないでねと、生徒さんたちにもお話します。