29 Jun 2025

 


Haste makes waste

 しばらく見て見ぬふりをしていたので、小さな庭の草が元気いっぱいに茂ってしまった。例年通り「草取り」を朝活の項目に加えている。

 可愛いシロちゃんとシジちゃん(先日から居ついてくれているモンシロチョウとシジミチョウ)に励まされながらの労働。応援団よありがとう!ではあるけれど、どうしても時間の経過とともに作業が雑になっていく。雑になればストレスが心中に澱んでいく。

 絵を描くときも同じだ。フレッシュな気持ちを長時間持続するのは難しく、疲れたまま続けると手と心の距離がどんどん離れて行ってしまう。新鮮な気持ち無しに、手は良い仕事をしてくれない。筆や鉛筆はこの身体の、この手の先の延長のようなものだから、疲れや嫌々やることがストレートに紙の上に表れる。だからいかに心を新鮮に保つか。その工夫をしながら、長年この仕事をしてきたように思う。

 一方、疲れた時こそ良い絵が描けることもあるのだと、篠田桃紅さんが昔、雑誌「銀花」に「手」というタイトルで書かれていた。描いて描いて疲れた頃には、雑念や妙な欲が消えてゆく。透明人間のようになった自分を媒介にし、何ものかが思わぬよい仕事をしてくれる。そのように、芸術家の存在迫る文章を理解した。

 これも昔読んだことだが、タモリさんが、「『等身大』ってのが自分にはわからない」と仰っていた。よくわからない言葉、というものが、こんなに明晰な頭脳を持つ方にもあるのだ。どういうことだろう? それはこの言葉がタモリさんの辞書の中に無い、と言うことかもしれない。等身大でないご自身はいないのかもしれない。自分にも、我が辞書にない言葉ってあるだろうか。

 実は最近流行りの「タイムパフォーマンス」、これがよくわからない。そもそも時間の感覚はその時々、また状況によって伸びたり縮んだりするものだと感じる。集中できない、やる気が起こらない、そのような時間が意味のないことにも思えない。ぼんやり眺める窓の外に、突然幸せの青い小鳥がやってくるかもしれないし。



 幼い頃から急ぐこと、競争する事が苦手だったからだろう。だから自然、ひとり絵を描くことを選んできた。なのに、自分が描いている動画を観ると、小鳥の食事みたいに、または早送りの動画みたいに、チョコマカものすごいスピードで筆を動かしている。これはもちろん「タイパ」とはまるで違う仕組みで起こる現象。

 「勝つ話ばっかりしているから、今は。結果を出すことばかり考えてる。人間が使っている言葉って、植物から来ている。『成熟』とか・・・。『結果』ということは実がつくということ。」

 You Tube で視聴した田中泯さんの言葉。「結果」とは、今すぐそこで点数が出る事ではない。そう泯さんは仰る。(ああ、「国宝」観に行かなくては!)

 地味な草取り作業にミニスツールを動員し、雑になるまでの時間がいくらか長くなったのは幸いです。しかし今度は熱中症に注意。急がば回れ=Haste makes waste な、夏の朝です。